「百億の昼と千億の夜」難解なSFマンガが読みたい人にオススメする名作の解釈方法

2021年10月31日日曜日

マンガを楽しむ

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神には人間の祈りが届かないのか。
 

壮大なスケールのSF超大作


日本のSFマンガで、名作はなんですか?

独特の世界観で、難解なマンガはありますか?

難解なSFマンガを一度読んでみたいけど、オススメはありますか?

SFマンガのファンから、必ずといっていいほど上がる質問です。

そして、多くの答えから、必ず名前が上がるのが「百億の昼と千億の夜」です。

古代史、宗教、哲学、さらには宇宙物理学、数学、量子論 etc。

さまざまな知識が駆使され、練り上げられた超時空なストーリー。

その世界で古代史上の偉人、聖人、悪人、そして神が、人類の存亡をかけて争う。

自分たちが祈りを送り続けても、「神」は全く救いの手を差し伸べてくれない。

それどころか、見捨てようとしているように思える。

「神」とはいったい、何者なのか? 彼らはどこからやってきたのか? 

この難題を追究するのが、作品のテーマです。 いやあ、難解。ホント、むずかしい。でも、メチャおもしろい。

連載中に理解できなくて単行本を買って読み返したら、すごくおもしろかった」という人がいるほど。

だから、前述の答えには「必ず読むべき名作」という言葉がついてきます。

この記事では、壮大なスケールで描かれるSF超大作を分かりやすく解説します。

難解なSFマンガが読みたい」という方にはストーリーの理解への参考になり、いっそう作品が楽しめますよ。

「百億の昼と千億の夜」とは




原作はSF作家の光瀬龍さん。1965年から翌年まで「SーFマガジン」で連載。上の写真は小説版の表紙です。

そしてマンガ版は、女流マンガ家の萩尾望都さんが作画。

「少年チャンピオン」で1977年から翌年まで掲載されました。

小説、マンガともに単行本と文庫本が長く発刊されており、2022年7月16日には大判サイズの「完全版」も発売。

物語の誕生から、実に56年が経過しています。でも、コンセプトは古さを全く感じない。

昭和のころに、こんな話が作られたのか」と驚いてしまう。

新しささえ感じるほどです。

1.阿修羅王、シッタータ…偉人、聖人が神を追いかける

まずは、作品について説明します。

主な登場人物は、プラトン、阿修羅王、シッタータ(釈迦)、イエス、ポセイドン etc。

古代のビッグネームが、これでもか!というくらい登場します。

★あらすじ

古代の聖人や人々はm神の恵みに感謝し、敬い、怖れ、幸せと導きを求めてきた。

だが、一心に祈っても、人の世から病、戦い、死の恐怖がなくならない。

「神よ、わが叫び、祈りは届いていますか?」。

そんな悲痛な祈りの声が流れる中、「悪鬼」のヒロイン・阿修羅王が「神」に疑問を抱く。

「神」とは何者なのか?確かめるため戦いを起こした彼女に、シッタータ、プラトンらが行動を共にする。

阿修羅王たちは「神」からの刺客と死闘を繰り広げ、時空の果てまで「神」を追いかける。

まさに壮大なストーリー。

その光瀬さんの原作を、萩尾さんがマンガで色付けして、読者にイメージさせる。

小説版とマンガ版は、そんな相関関係にあります。

2.ショッキングな物語のスタート

神は慈悲深く、苦しむ人を必ず救ってくれる絶対者

人々は「神」をそう信じ、敬い、恐れてきました。

物語の最初のエピソードとなる伝説の島・アトランティスの悲劇。

これが、阿修羅王たちが「神」に疑問を持つきっかけとなります。

この第1章は、実にショッキングです。

海神ポセイドンの導きで、盛大に栄えるアトランティス。

突然、海神は島を神の国「アトランタ」へ移動させると宣告。指導者たちは反対する。

海神は「惑星開発委員会の決めたことで変更はできない」と主張。巨大な闇が現れ、島を包み込む。

怒った民衆が島中に放火すると闇の進行が止まる。島は大地震や炎に襲われ、崩壊する。

司政官・オリオナエは「神ならば、なぜわれわれをこんな目にあわせるのだー!」と悲痛な声を上げる。

オリオナエは、古代ギリシャに転送され?哲学者プラトンになる。

プラトンは神への疑問を抱き、戦士と巡り合うため何千年もの時間の旅に出る。

「アトランティス」の名前を、後世に残したのはプラトンでした。

伝説では神の怒りに触れ、一夜にして海中に没したとされます。

しかし、この悲劇の島の実在は証明されていません。

誰もが知りたい古代のナゾ。この答えをストーリーの冒頭で展開して解釈。

さらに「神」への疑問というテーマを、読者へ明らかにしているんです。

ホント、心にくい、うますぎる世界観とストーリー展開です。

3.阿修羅王とシッタータの出会い

マンガ版の表紙です

古代インドの王家から出家したシッタータ(釈迦)。

「仏陀」として後世に名を残す、仏教の開祖で聖人です。

なぜ人の世には苦しみばかりあるのか

シッタータはつねに疑問に思い、やがて出家を決意します。シッタータの物語は、ここからスタートします。

シッタータは、天上界の神々に疑問を問うために出家、神々が住むとされる天界を訪ねる。

天界でも戦いや気候変動で荒廃が進んでいることを知る。

「兜率天」で、神を守る梵天、帝釈天と面会。だが、守護神たちとの会談を終えても、疑問は晴れず深まるばかり。

シッタータは、軍を率いて神々と闘う鬼神・阿修羅王と出会う。

阿修羅王は、仏教では帝釈天ら神々にあらがう悪鬼、とされています。

奈良の興福寺にある、3つの顔と6本の腕を持つ像は有名。穏やかなお顔が美しいんです。

もともとは正義をつかさどる神さま、だったんですね。

ところが、帝釈天に嫁がせるはずだった娘を強奪されたことで、阿修羅王は戦いを始める。

この〝神格〟をベースに、光瀬さんは阿修羅王を物語の主役に。萩尾さんは女性らしいボディラインでキャラを設定。

メチャ美しくてカッコいい主役になっています。

神の正体を見極める

シッタータに戦いの理由を問われて、阿修羅王は兜率天に住むとされる弥勒に会わせます。

56億7000万年後に地上にあらわれ、人々を救うとされる菩薩さま。こちらも京都の広隆寺の像が有名ですね。

シッタータがみた弥勒はつくりものだった。

阿修羅王は、弥勒は兜率天に突然あらわれ、遠い未来に人類を救うと宣言したと教える。

そして、自分が軍を起こす前から宇宙の荒廃が進んでいたと主張。

それなのに、神々は荒廃を止めようとせず、人々を救ってくれない。

弥勒はこの宇宙の外からやってきた者。本当に救ってくれるのか。

この疑問と荒廃が止まらない限り、阿修羅王は戦うのだ、と。

この2人の出会いのシーンで、「神さまって、どこから来たの?」「何者なの?」と物語のテーマを再び強調。

何をするつもりなの?」「信用していいの?」と、さらに疑問を投げかけているんです。

4.「神」は正なのか、邪なのか

阿修羅王たちは時空の果てまで神々を追いかける

ポセイドン、梵天、帝釈天、さらにはナザレのイエス(キリスト)。

ストーリーでは、これまで神、救世主とされてきた者たちの正体が明かされていきます。

彼らは、「惑星開発委員会」が派遣していた地球の監視者たちだった。

そして「開発委員会」の計画通りに、地球は荒廃していく。

阿修羅王、シッタータ、オリオナエたちは「何者」かの使命を受け、監視者たちを時空の果てまで追跡する。

自分たちが信仰していた神が、実は征服者。邪神とされた異形のモノは、実は我々を古くから守っていた守護神だった。

阿修羅王たちは、荒廃していく地球をじっと見守るイエスら監視者たちと死闘を展開します。

正邪の神をめぐる設定は、今では多くの作品で取られています。

「百億の昼と千億の夜」は、その先駆けといえます。

そして、米国のホラー作家、ラブクラフトのクトゥルー神話に通じるモノがあります。

戦士たちの闘いは続く


激しい戦いの末、最後に残った阿修羅王は、宇宙の絶対者・転輪王に遭遇します。

転輪王は古代インドの神さま。宇宙を統治するとされています。

転輪王と阿修羅の会話は、意思の共有、テレパシーのようなものを介して展開されます。

転輪王は阿修羅王たちに宇宙を守るという使命を与えたと告げる。

長い時をかけた使命をまっとうさせるために彼らの体を改造した。

「惑星開発委員会」と彼らを指揮する「シ」が別の宇宙からやってきた者で、正体も分からないと告白。

「シ」たちが実験のように生命を生み出し、絶滅させてきたことを明かす。

そして、結末はー。ここから先は、ぜひ作品をお読みください。

まとめ・バブル宇宙論の先駆け⁉

壮大な物語は、宗教的、哲学的かつ科学的な結末で終わります。

この世の果て、宇宙の果てには、その先にも果てがあり、さらに果てが続く。

そして「シ」は、別の宇宙からやってきた、と。

「シ」は人類を導く「」を連想させ、一方で「」のイメージも匂わせます。

彼らはいったい、何者なんでしょう?

読めば読むほど、難解なハナシ。でも、読後感はすごいものがあります。

はやりの「宇宙は泡から泡が生み出されるように、無限にあって発生し続ける」。バブル宇宙論多元宇宙論が連想されます。

50年前以上に、このストーリーを創った光瀬さんの視点、イマジネーション力のすごさを感じますね。

百億の昼と千億の夜」は、「神」の解釈論や科学的な見地からみても、まさに先駆け。

いま読んでも新しい、偉大な作品です。

難解なSF作品が読みたい!」という方は、ページを開けば絶対に願いがかないます

当ブログでは、ほかにもSFマンガについて紹介しています。よろしければ、ごらんください。





「百億の昼と千億の夜」は、原作の小説が電子書籍化もされています。

「BOOK☆WALKER」「コミックシーモア」などの書籍ストアで購入できます。

無料で試し読みもできますので、ぜひお試しください。




コミックスの方は、残念ながら電子書籍化はこれから。「amazon」などで買うことができますよ。


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