「アオイホノオ」1980年代の漫画&カルチャーが楽しめる島本和彦氏の「まんが道」3つの魅力

2025年11月11日火曜日

マンガを楽しむ

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創作は熱いハートでやるもんだぜ!

ライバルで盟友・庵野秀明さんとの秀逸エピソードも楽しめる


昭和の終わりの1980年代って、いわゆる〝オタク文化〟が生まれた時代です。

漫画やアニメ、ゲームにアイドル…。大好きなモノに熱中して声高に応援したり楽しんだり。


今思うと、好きなモノに対してメチャ熱くなれる時代でもありました。


オッサンのワタシはど真ん中世代。当時の漫画&アニメ、カルチャーが登場する漫画などを見ると「懐かしすぎる…」とエモくなる


そう感じているのはワタシだけじゃなくて、


1980年代の漫画やアニメ、カルチャーが分かって楽しめる漫画はあるの?


なんて声がたくさんあるんです。


そんな人たちにオススメなのが、島本和彦さんの傑作漫画「アオイホノオ」。島本さんがモデルの主人公が漫画家を志し奮闘する島本版「まんが道」。


若き島本さんが影響を受けた70〜80年代の漫画やアニメ作家たちがこれでもかってくらい紹介されています。


島本さんがしのぎを削る仲間やライバルたちも登場。そして島本さんが嫉妬心むき出しで対抗する姿がメチャ面白い。だから、


この作品って、どこまで島本さんの実話なの?


作品でエヴァの庵野秀明さんらが出てくるみたいだけど、島本さんと知り合いなの?


そんな声も多いんです。この記事では「アオイホノオ」が持つ特徴と魅力について、


  1. ストーリーのエピソードは島本さんの「ほぼノンフィクションである。」
  2. 80年代〝ど真ん中〟の島本さんが描く漫画&カルチャーがエモすぎる
  3. ライバルで盟友・庵野秀明さんらとのバトルがバチバチで面白すぎる

上記の3つの魅力について紹介&解説します。


この記事を読めば作品の特徴や80年代の漫画&カルチャー庵野さんら仲間たちとのエピソードもよく分かります


さらに実際に作品を手にしてページを開きたくなりますよ。


※この記事ではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

島本和彦さんと「アオイホノオ」について



★熱血タッチでギャグが成立


「アオイホノオ」の著者、島本和彦さんは1961(昭和36)年生まれで北海道出身。


小学生時代からギャグ漫画を描いていたそう。高校卒業後には大阪に親戚がいたため、大阪芸大芸術学部映像計画学科に進学。


在学中の1982(昭和57)に「週刊少年サンデー」2月増刊号に掲載された「必殺の転校生」でプロデビュー


その後、大学を中退して上京し、プロの作家として作品を発表し続けています。


代表作はアニメ化された「炎の転校生」、実写映画化された「逆境ナイン」。


さらに自身をモチーフにした「吼えろペン」「新・吼えろペン」、そして「アオイホノオ」といったところ。


島本さんの作風は、登場人物を熱すぎるタッチで描くギャグ。熱血主人公が戦うシーンはもちろん、漫画を描く姿までもバトルシーンになっちゃう。


登場人物の心理や葛藤の描写も熱血タッチで展開。どんなことにも大マジメにブチ当たって熱く戦う姿が面白すぎるギャグを成立させているんです。


★島本版「まんが道」


そして、この記事で紹介する「アオイホノオ」。2007(平成19)から「週刊ヤングサンデー」で連載がスタート。


その後「スピリッツ増刊」をへて、現在は「ゲッサン」で連載中。コミックスは全32巻(2025年11月時点)が発売中です。


2014(平成26) にはテレビ東京系実写ドラマ化され、主演の柳楽優弥さん、山本美月さん、黒島結菜さんが熱演。


さらに安田顕さん、ムロツヨシさん、濱田岳さんら名優たちがズラリ。原作の世界観そのままでメチャ面白かったです。


舞台は1980年代、大阪の郊外にある大作家芸術大学。島本さんが在籍した大阪芸大がモデルですね。


主人公は焔燃ホノオ・モユル)。名前からして熱血(笑)。大作家大の映像計画学科に在籍する大学生。もちろん島本さんがモデル。


ホノオは在学中に漫画家を目指しながらアニメ作家も志望し、さまざまな挫折を繰り返しながら漫画家を目指して奮闘する。


さらにホノオはヒロインの年上トンコ、同級生の津田洋美や、ライバルの庵野秀明らとの熱い人間模様も展開。


熱血にブレまくり苦しみもだえる姿や、熱く道を開いていく姿が描かれる自伝的な作品です。


1.ストーリーのエピソードは島本さんの「ほぼノンフィクションである。」



★漫画か⁉︎ アニメか⁉︎


1980年代はあらゆるモノが新しく変わっていく時代だったと思います。その時代のど真ん中で、漫画家もしくはアニメーターを目指すホノオ。


まずは漫画家として、いろんな漫画雑誌を読み漁ってデビューのための分析を行うんです。その分析ぶりが熱血で、あざとくて面白すぎる。


分析の結果、弾き出した答えは「漫画業界全体が甘くなっている!」。


ホノオによると、当時の各雑誌に掲載されている作品のストーリーは「なんとなく面白いだけ」。


絵も「俺も下手だがもっと下手」、だから「俺は勝った!」(笑)。めちゃアグレッシブな若者なんです。


ホノオ(島本さん)によると、各雑誌のページは70年代まで大作家に抑えられていた。


ところが80年代には、絵が下手でパロディー風の新人作品でも人気連載に。これまでと違う、新しいモノが求められていたんですね。


そんな作品を掲載する雑誌にも変化がありました。当時の漫画雑誌は週刊月刊も含め、小学生からオトナまであらゆる年齢層が対象でした。


でも「ヤングジャンプ」や「ビッグコミック」など、中高生からオトナを対象にした雑誌が登場し始めていたんです。


そのため各誌では作家が多く必要だった。だからホノオは「ゆるい」と判断し、「いつでもプロになれる!」という根拠のない自信があった(笑)。


そして「いつでもイケるから」と、ホノオはなかなか漫画家デビューへのアクションを起こさない。それどころかアニメーターにも色気がある。


今は漫画界よりアニメ界の方が面白そう。アニメーターになって責任ある立場に立てば、人気声優に会える!


そんなことから、アニメーターの方に針がふれるんだけど…。


★宿命のライバルに完敗


そんなワケ(笑)でアニメーターに針がブレたホノオですが、大学の課題でそのモクロミがぶっ壊されるんです。


コミックスの第2章。ホノオは大学のアニメ技術実習で「パラパラ漫画」を描くことになりました。


ノートなどのはじっこに登場人物(物)を1ページごとに描いて、パラパラめくると人物が動いて見えるヤツ。


高校時代に教科書などに描いていたホノオは、「遠くから激走してくる男」を描きました。


単純な線ながら男が激走してくるスピード感があり、ホノオは自信満々。そして周りを見渡すと、机にかじりついて描いている男がいる。


「今、描いてんのか。アニメをなめるなよ」とホノオは男の背後に近寄って作品をのぞく。


「えっ、なんだコレは⁉︎ 絵…、絵が、動いてるじゃないかーっ⁉︎」


男の作品のアニメのようなクオリティーの高さに衝撃を受けて、「今までアニメだと思って描いてたのは、パラパラ漫画にすぎなかった」。


ホノオは完膚なきまで自信をたたきつぶされる。そして、その男が宿命のライバルになっていくんですね(後述)。


アニメへの気持ちが揺らいだホノオは、漫画でもショックを受けるんです。


あだち充さんの名作「みゆき」。掲載誌「少年ビッグコミック」を開いて、ホノオは「なんだコレ⁉︎」とガク然。


少年誌なのに、めちゃかわいい女の子が主人公という新しさに「やられたーっ!」と驚いたワケです。


漫画にもアニメにも自信をなくしたホノオだけど、救ってくれたのは、やはり漫画でした。


高橋留美子さんの「うる星やつら」。美少女宇宙人ラムと地球一の浮気男・諸星あたるが繰り広げるドタバタコメディー。


ラムちゃんが大好きなあたるが、他の女の子を追いかける姿に嫉妬して電撃を食らわすシーンが印象的。昭和〜平成〜令和と愛され続けています。


うどん屋にあった「週刊少年サンデー」を開いたホノオは、この作品にも衝撃を受けるんです。


でも、この高橋さんの傑作が、ホノオの闘志に火をつける。


世の中を甘く見ているうちに世の中の方が進んでいっていることに気づいて「動かなきゃ!」とケツをたたかれるんですね。


「アオイホノオ」の各巻の冒頭には、「この物語はフィクションである。」と記されています。


要するに、島本さんがストーリーを面白くするため、あくまでもエピソードはフィクションだよと強調しているんです。


でも、ここまで紹介してきたホノオの漫画やアニメへの根拠なき自信やその反動として直面する挫折は、読んでいてめちゃリアリティーがある。


若き島本さんが直面した、現実への焦りや葛藤がリアルに反映されている。


島本さんの表現が熱血すぎてギャグやフィクションに感じてしまうけど、実のところ〝誇張しすぎたノンフィクション〟だと思うんです。


ホノオが描いたパラパラ漫画は見事に砕け散った

★誇張しすぎたノンフィクション


「うる星やつら」のラムちゃんにケツをたたかれたホノオは、再び漫画家への道へ。


第6章で、ホノオは大学の漫画研究会の門をたたきます。そして部室で、この漫研の会長で4回生の矢野健太郎に出会います。


ホノオは矢野の作品を見せられて、そのクオリティーの高さにビックリ。


さらに矢野が漫画ばかり描きすぎて3回留年し、いまだに1年生だと明かされ、

もしも漫画家になれなかった時のことなどを考えてるヤツは漫画家になれない。

俺はな、漫画家になれなかったらすべてが終わりなんだよ。

そう漫画にかける覚悟のほどを問われ、ホノオはその場から逃げ出してしまうんです。

この漫研の会長は、代表作「ネコじゃないモン!」でブレークした矢野健太郎さん(実名)です。


ただ、実際には島本さんは矢野さんとの面識がなかったんだそう。だからこのシーンはフィクションになります。


でも、漫画家を目指す島本さんの考えや覚悟の甘さ漫画家への壁として、当時から学生の間で有名だったという矢野さんを登場させた。


これも〝誇張しすぎたノンフィクション〟だと思うんですよね。


なんだかんだショックを受けながらも、ホノオは漫画家を目指してリスタート。


苦闘しながら読み切り作品を完成させて、東京の出版社へ持ち込みを始めるんです。


でも「手塚賞」とか「赤塚賞」(いずれも集英社主催)といったメジャーな賞だと、入選もおぼつかない。


だから、まずは賞金が10万円ほどもらえてハードルが低そうな小さな賞に引っかかる。そこを足場にデビューしようと狙いを定める。


その狙い目の選択の仕方がはっきりいって姑息(笑)。でも燃え上がるように真剣に狙いの意図を明かすホノオの熱血ぶりが笑えるんです。


でも、世の中はそんなに甘くなくて…。ホノオの苦闘ぶりはぜひ作品でお読みください。


2.80年代〝ど真ん中〟の島本さんが描く漫画&カルチャーがエモすぎる


★漫画&アニメの成熟期から新時代へ


前述しましたが1980年代って、60年代後半から盛んになってきた漫画やアニメが充実、というか成熟した時期だと思うんです。


これはワタシの勝手な考え(偏見)ですが、漫画&アニメなどの最初の〝成熟期〟じゃないのか、と。


60年代後半から70年代にかけて、アニメなら大人気だった永井豪さんの「マジンガーZ」シリーズ。


さらに松本零士さんの「宇宙戦艦ヤマト」シリーズや「銀河鉄道999」。


制作会社サンライズ作品の「勇者ライディーン」「超電磁マシーン ボルテスV」など。


漫画なら、横山光輝さんの「バビル2世」、水島新司さんの「ドカベン」。ちばあおきさんの「キャプテン」など。


特撮ヒーローなら「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などのウルトラシリーズ。さらに「仮面ライダー」シリーズなど。


そんな名作・ヒット作に熱狂して影響を受けた若者たちが、実際に制作を手がけるクリエーターになり始めるのが80年代。


そして成熟期の中で若きクリエーターたちが、新しいモノを生み出していく。それが80年代だったと思うんですよね。


主人公のホノオも、70年代の漫画・アニメカルチャーで育ち、成熟期の80年代でクリエーターを目指す若者。


ホノオは大作家大に在籍しつつ、漫画家を目指している。一方でアニメにも影響を受けていて、アニメーターにも興味がある。


そして当時からのメジャー雑誌「少年サンデー」や最新雑誌「少年ビッグコミック」に掲載される漫画を熟読。その斬新さに衝撃を受け続けるんです。


例えば細野不二彦さんの忍者漫画「さすがの猿飛」。ヒーローが活躍しつつギャグが展開する作品です。


ホノオは「やられたーっ!」。カッコいいキャラが描ける細野さんが、あえてギャグ調の主人公で勝負していた。その作品が斬新すぎて驚いたんですね。


一方で生放送されるアニメを見るため、夜6時半からテレビにかぶりつき。横山光輝さん原作でリメイク版「鉄人28号」の動きに熱狂する。


漫画とアニメ、どちらの道に進もうか熱血に悩みまくるんです。


そんな描写の中で紹介される漫画&アニメ作品が、やはり80年代世代のワタシらオジサンに刺さりまくる。


これ面白かったなあ」「こんな作品があったよなあ」なんて、あまりのエモさに顔がゆるんでしまうんですね。


★テレビの前で姿勢を正して


それでは80年代前半の漫画&アニメ好き(オタク)たちは、どんな感じで作品を楽しんでいたのか?


その姿も「アオイホノオ」では、主人公のホノオが見せてくれています。


当時、テレビは各家庭に普及してたけど、テレビ番組や音楽を録画&録音するのは結構メンドくさかった(苦笑)。


当時の最もポピュラーな録音ガジェットラジカセ。そう、ラジオ放送とカセットテープの音楽が聴けるヤツですね。


これを番組が始まる前に用意して、テレビの前にスタンバイ。放送が始まる直前にカセットテープを入れて録音ボタンをオン


CM中は録音を止めて、放送が再開したら再びオン。テレビの前でそんなことしてました。


ただ映像は録画機器を持っていない人は、ひたすらテレビの前で視聴するしかなかったんですね。


ホノオも見たい番組がある日は早めに帰宅。なぜか所属するバドミントン部の先輩美女・トンコさんがついてきて、2人で姿勢を正してチェックする。


トンコさんは自分に気があるのか⁉︎ ドキドキしながらも放送中の作品に熱中してトンコさんに解説したり。


今ならテレビでカンタンに予約録画できるけど、当時はテレビの前で姿勢を正して拝聴するのが基本姿勢でした。


そんなホノオの姿がおかしくて懐かしくて。「俺も1人でやってたなあ」とめっちゃエモいんですよ(笑)。


ラジカセについても同じ。コミックス第1巻の最後に、島本さんと庵野さんの対談が掲載されているんです。


そこで、小学生だった庵野さんは大好きな「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌やストーリーの音源をラジカセで毎回録音していたと明かしています。


あの庵野さんでさえ、自分と同じようなことしてたんだなあ、と。


でも、そんな庵野少年の努力が「新世紀エヴァンゲリオン」や「トップをねらえ!」といった大傑作アニメにつながっていったと思うと…。


オタクって、マジでスゴいんですよ!


当時のラジカセは若者の〝3種の神器〟って感じでした

★ビデオデッキとウォークマンはセレブの証⁉︎


80年代前半の若者たちの主力ガジェットはラジカセだったけど、一方でビデオデッキを所有するセレブな人が増えていました。


当時のビデオデッキはソニーが開発した「ベータβ)」と、ビクターなどが開発した「VHS」の2種類(形式)がありました。


「ベータ」はカセットテープが小型で画質がバツグン、それだけに値段が超お高い。「VHS」はテープが大きいけどリーズナブル


だから「ベータ」を持っている人はお金持ち=セレブみたいな感じでした。


芸大の学生であるホノオもビデオデッキを買うお金は持ってないけど、同級生が頑張って買った「ベータ」を貸してくれるんです。


文明の力に驚いたホノオは、それこそテープがキレるんじゃないかってくらい、何度も何度も再生して、映像を目に焼き付けるんです。


ちなみに「ベータ」と「VHS」の争い。当時は「ビデオ戦争」と呼ばれてたけど、テープが安価で作品をソフト化しやすい「VHS」が勝利します。


ワタシも「VHS」が手に入ったときはうれしくて、「マジで文明の力だなあ」って何度も再生したもんです。


そしてもう1つ。ホノオをはじめ当時の若者&オタクたちを驚かせたのが、「ウォークマン」です。


こちらもソニーが開発したポータブルオーディオプレーヤー。カセットテープに録音した音楽を聴くためのガジェットですね。


本体はカセットテープよりひと回り大きい感じ。ラジカセよりはるかにコンパクトでバッグやジャケットのポッケに入れられる。


そして付属のイヤホンもコンパクトで軽量。ワタシが購入したのはオレンジ色のイヤーパッドがオシャレで価格は3万3000円


音楽はステレオやラジカセで聴くのが主流だったのが、音楽を持ち歩けるようになった。マジで画期的なアイテムだったんです。


ホノオはキャンパスでヘッドホンをつけて歩いている学生の姿に「あいつは何を耳につけてるんだ⁉︎」と大仰天して、大感動。


あらゆるモノが新しく変わっていく。80年代はそんな時代だったんです。


3.ライバルで盟友・庵野秀明さんらとのバトルがバチバチで面白すぎる


★ライバル・庵野さんの異常な天才ぶり


平成から令和にかけて大ブームを巻き起こした超人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」。


この傑作を生み出したのが映画監督の庵野秀明さん。実は大阪芸大芸術学部での島本さんの同級生ライバルであり盟友なんです。


「アオイホノオ」では実名の「庵野秀明」で登場し、異常なまでの天才性で自信家のホノオを打ちのめす。


またホノオが登場せず、庵野さんが主人公のエピソードがあるなど、作品のもう1人の主人公なんです。


庵野は映像学科に所属。同級生のホノオが教室を見回すと、長髪メガネで細身の庵野が異様な空気を漂わしている。

「エヴァ」の碇ゲンドウのように、机に両ひじをついて両手を組んでいる。

いきなり横の男の首に腕を回して締め上げると、「言え! ショッカーの秘密基地はどこだ⁉︎」

あまりにも異常で異様。島本さんの〝誇張しすぎたノンフィクション〟なんでしょうが、庵野さんの異能ぶりを見事に表現しています。

庵野さんも70年代のカルチャーで育ってきた男。前述した通り「宇宙戦艦ヤマト」の放送中の音源を生録音していたほど。


そして体のすみずみまで「仮面ライダー」や「ウルトラマン」などの特撮やアニメが染み渡っているんですね。


でも庵野さんが他のオタクたちと違っていたのは、体中に染み渡っているカルチャーのエキスをアウトプットできること。


作品を制作するための、天賦の才能とさえいえる描写力と技術力です。

前述したパラパラ漫画の課題で、庵野は停車中のパトカーの上から軽自動車が落下してきて、パトカーを粉砕する作品を提出。

庵野の作品の異常なまでの精密さと斬新さに、ホノオは「俺のはパラパラ漫画、あいつのはアニメだ…」。

庵野の精密すぎる作品に完敗を認めたホノオ。でも、この先も庵野の圧倒的な天才性にボコボコにされていくんです。

★圧倒的な「庵野ウルトラ」


アニメ映画監督として有名な庵野さんですが、体内には70年代のアニメや「ウルトラマン」「仮面ライダー」などのエキスが染み込んでいます。


第3章では、アニメ技術実習でグループに分かれて映像作品をつくることになりました。


庵野は、後のアニメ監督で「エヴァ」を世に送り出した制作会社「GAINAX」社長の山賀博之さんらとグループを結成します。


出来上がった作品は、庵野が脚本・総監督・主演も務めた「ウルトラマン」。


60〜70年代に子どもたちをトリコにした「ウルトラマン」「ウルトラセブン」を題材にした〝特撮〟でした。


キャンパス内の大ホールで行われた発表会で、この作品が大喝采を浴びたんです。


ホノオによると、彼らの年代はみんな「ウルトラマン」の映像を撮ってみたい。でも、ハードルがめちゃ高い


  • 金がないから着ぐるみがつくれない。
  • 金がないからビルなどの舞台や道具がつくれない。
  • ビームとか特殊合成のやり直しに金がかかる。
  • アクションなどができる人間を集めるのに金がかかる。

こういった理由から二の足を踏むんだとか。でも庵野らは踏み込んだ。


庵野が変身した「ウルトラマン」は、かぶりものはせず素顔のままでウインドブレーカー&ジャージ姿。だけど胸にカラータイマーがある。


このカラータイマーだけで「ウルトラマンだ!」と分かるわけです。


舞台は空き地でちゃちいけど、フィルムを遅く回したり音響で巨大感を演出している。


その音響は放送された「ウルトラマン」から録音したモノ。怪獣が地面を踏みしめる「ドド〜ン」とかウルトラマンの「へアッ!」という声。


これを自分たちの映像に合わせている実際の「ウルトラマン」の音で戦いごっこをしているんだけど、「ウルトラマン」の巨大感がバツグン。


そして金もかからない。ホノオは「コロンブスの卵だ…」とアブラ汗を流すんです。


後に特撮ファンやオタクに「庵野ウルトラ」と呼ばれる、記念すべき第1作。さらに庵野は続編を制作していきます。


庵野さんや山賀さんらのチームは、自主制作映画集団「DAICON FILM」を結成し、「帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令」を制作。


ウルトラシリーズを制作する円谷プロから公認を得た作品だけど、やはりウルトラマンは庵野さんの姿のままで胸にカラータイマー。


でも第1作の雰囲気を進化させて、庵野ウルトラの巨大感と迫力が素晴らしい


庵野さんが総監督を務め、2022(令和4)年に公開された映画「シン・ウルトラマン」の、まさに源流として楽しめるんです。


ちなみに「帰ってきた〜」の映像は、YouTubeなどで公開されていますよ。


公開中の動画のサムネ(YouTubeから引用)

★ライバル・庵野さんは島本さんを認めている


天才的でクオリティーが高すぎる庵野の作品に自信を打ち砕かれたホノオだけど、アグレッシブで熱血男なので漫画家の卵として奮闘。


出版社に原稿の持ち込みを続けます。そして第72章で小学館の新人賞に応募した「必殺の転校生」が佳作に入選。


入選作が雑誌に掲載され、ついにプロ漫画家としてデビューを果たすんですね。


でもホノオはデビューしたのに、大学では誰からもサインを求められない(笑)。


教室で自信を失いかけてションボリしていたホノオに歩み寄って、掲載誌にサインを求めたのが庵野だったんです。


めっちゃ感動的なシーンですが、ストーリー中では庵野がサインを求めた理由は明かされていません


ただ大学時代の島本さんは、ホノオのように熱血でオーバーアクション気味。ちょっとした有名人で、庵野さんも注目していたそう。


体育の授業でバスケットボールをした際、島本さんがボールを奪われチームメートに「すまん!もう一度チャンスをくれー!」。


熱すぎる姿を見ていた庵野さんは、島本さんの作品を読んだとき「(島本さんが)まんま出てる」と思ったそうです。


庵野さんは、ジャンルは違えど同じクリエーターとして作品を生み出し続ける島本さんを認めている。リスペクトしてるんですね。


そして今でも、島本さんと庵野さんのライバル関係は続いているようです。


2016(平成26)年に庵野さんが総監督を務めた映画「シン・ゴジラ」が公開された際、島本さんはSNSなどに投稿。


庵野、やめろ! 俺より面白いのつくるんじゃねえ!」「庵野、俺たちの負けだ…」などと庵野さんに完敗モード。


庵野さんは「負けてないよ(苦笑)」と島本さんに返して、話題になりました。


「シン・ウルトラマン」の公開時も、同様なやりとりを展開してファンを楽しませてくれました。


ライバルが素晴らしい作品を作り上げ、これを声を大にして讃える。マジで素敵なライバル関係ですよね。


これからもずっと、そんな素晴らしい関係を続けてほしい。お互いに傑作を生み出し続けてほしいと思います。


まとめ・80年代世代&令和の漫画ファンも楽しめる作品


ホノオの熱すぎるストーリーを楽しめ!

ここまで島本和彦さんの「アオイホノオ」について紹介してきました。


そして、この作品の特徴や舞台である1980年代の漫画&カルチャーなどについて、


  1. ストーリーのエピソードは島本さんの「ほぼノンフィクションである。」
  2. 80年代〝ど真ん中〟の島本さんが描く漫画&カルチャーがエモすぎる
  3. ライバルで盟友・庵野秀明さんらとのバトルがバチバチで面白すぎる

上記の3つの魅力について紹介&解説してきました。


「アオイホノオ」は島本さんがモデルの主人公が漫画家を志し、奮闘する姿を描く島本版「まんが道」。


若き日の島本さんが影響を受けた80年代の漫画やアニメ作家たちがこれでもかってくらい登場しています。


さらには、島本さんが対抗心をむき出しでしのぎを削る庵野秀明さんらライバルたちも登場します。だから、


80年代の漫画やアニメ、カルチャーが分かって楽しめる漫画はあるの?


この作品って、どこまで島本さんの実話なの?


作品でエヴァの庵野秀明さんらが出てくるみたいだけど、島本さんと知り合いなの?


なんて方たちは、この記事を読んで作品の特徴や80年代の漫画やアニメ&カルチャーがよく分かったと思います。


また、島本さんと庵野さんら仲間たちとのエピソードもよく分かったはずです。


「アオイホノオ」は現在も連載が続いていて、主人公・ホノオは「まんが道」をずっと歩き続けています。


だから80年代世代の方はもちろん、令和の漫画ファンもめちゃ楽しめる作品です。


この記事を読んで興味を持った方は、ぜひ作品を手にとってページを開いてみてください。


暑苦しいくらい熱血な島本ワールドにハマりますよ!


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