居酒屋は心のいやしの場です |
飲んで食べて…疲れた心とカラダをいやす天国
一日の仕事を終えて、夕暮れの中で家路につく。
ふ〜わりただよってくる、いいニオイ。誘われるままにノレンをくぐって「とりあえず、生ビールと煮込みね」。
キンキンに冷えたジョッキをグイッ。グビグビッ、ぷはー。ミソでじっくり煮込まれたモツをパクリ、グビグビーッ。
疲れた心とカラダを引きずって入る「居酒屋」。まさに天国。ヘブン。
新型コロナウイルスの影響は続き感染防止の対策は必要ですが、時短が必要だった居酒屋などの営業時間も平常に戻りました。
同時に、にぎやかな声も居酒屋に帰ってきました。
さらに「こんど行く店の参考にしたい。居酒屋でウマいサカナで飲んでる気分を味わえるマンガを読みたい」なんて人もいる。
「居酒屋マンガでオススメ作品を教えてください」
「人が行き交い、集まる居酒屋の人間ドラマが楽しめるマンガってありますか?」
こうした声も多いんです。でも「居酒屋」が舞台のマンガはたくさんあって選ぶのも困るほど。
この記事では美味しいサカナを食べて飲んでいる気分が味わえて、人間ドラマも楽しめるオススメの「居酒屋マンガ」をチョイス。
- 陋巷酒家うらまちさかば(原作・丸岡九蔵さん)
- 異世界居酒屋「のぶ」(原作・蝉川夏哉さん、キャラクター原案・転さん、作画・ヴァージニア二等兵)
- 深夜食堂(原作・安倍夜郎さん)
以上の3作品について紹介、解説します。
この記事を読めば、ナットク&マンゾク。3作品のページを開きたくなりますよ。
3作品をチョイスした理由
ミソの濃厚な味がしみこんだモツ煮。ああ、ビールでやりたい |
「居酒屋マンガ」は人気があるジャンルで、たくさんの作品があります。
いずれもおもしろくて名作ぞろい。登場するサカナやお酒もおいしそうで、ヨダレがジュルっと流れちゃいそう。
そんな中からチョイスしたのが、3作品。
- 陋巷酒家うらまちさかば(原作・丸岡九蔵さん)
- 異世界居酒屋「のぶ」(原作・蝉川夏哉さん、キャラ原案・転さん、作画・ヴァージニア二等兵)
- 深夜食堂(原作・安倍夜郎さん)
選んだ理由は、いずれの作品も下記の要素がおもしろくて魅力的だから。
- お店や女将さん、大将や店員のフンイキ。お酒とサカナを味わうお客のうれしそうな顔
- お店で出されるサカナ、お酒がおいしそうに描写されている。
- お店にやってくる人たちの人間ドラマがおもしろい&泣けてくる。
ページ数は長からず短からず、ほどよい感じ。このスペースの中でストーリーの設定がうまくまとまっていてわかりやすいんです。
お店で出てくる一皿も、よけいな講釈が必要ないほどモンクなくウマそう。
「ああ、これを食べながら飲みたいなあ…」。タマシイというか、本能にガツンとくるんですね。
ここからは1作品ごとに紹介、解説していきます。
1.「陋巷酒家うらまちさかば」
原作は丸岡九蔵さん。「ミステリーボニータ」でご自身初の商業誌マンガ「酒処 春來荘日乗」を連載中。新進気鋭の作家さんです。
「陋巷酒家うらまちさかば」はマンガ投稿サイト「マンガハック」や「PIXIV」などで発表されている作品。
電子書籍化され、コミックスは全6巻が発売中(2024年6月時点)です。
★あらすじ
舞台は荒廃した未来の世界。各地で戦争が行われる中でたくましく暮らす庶民のいこいの場の物語です。
ノレンから焼き鳥のケムリがただよう「居酒屋マンガ」で未来の話?
そう思う方が多いと思いますが、大丈夫。
戦争で荒廃した未来の世界。人々は第三次内戦緊縮体制下で暮らしている。第三首都「蓬莱繁盛市」の駅ビル地下7階「西地区伍番街」の商店街に「陋巷酒家」はノレンをかかげる。イスがない立ち飲み屋。切り盛りするのはキレイでキップのいい女将さんと、カワイイ女性店員の笑美ちゃん。夜になると仕事を終えたサラリーマンや肉体労働者、ゴロツキ、兵隊、爬虫類のような異種族がやってくる。笑い声やどなり声が響き、焼き鳥やタバコのケムリがただよう店で、お客はウマい酒とサカナで一日の疲れをいやす。
これがまた、未来感とわい雑さがマッチしていい味が出てるんですよ。
★未来の立ち飲み屋にただよう昭和のフンイキ
店で出されるサカナは、その日の「オススメ」を中心になんでもアリ。
煮込み、まぐろ納豆、浅漬けなど「すぐ出る」つまみ。焼き鳥、つくね、ホルモンなどの焼き物。揚げ物、刺身もアリ。
お酒もジョッキの生ビール、冷酒、アツカン、焼酎サワー&お湯わり、ウーロンわり、ホッピーなど。
そう。お品書きは〝現代〟の居酒屋メニューと同じ。このサカナがすごくうまそう。
煮込みはモツがぷるん、濃いめの汁がしみこんでいる。こいつをキンキンに冷えたジョッキの生ビールでグイッ。
読んでるコッチが「プハーッ」といいそうになるほど。
揚げたてでジュウジュウいってるハムカツ、タレが焼けて香ばしいニオイがフンワリただよう焼き鳥。よだれがジュル。
注文ごとに「生と煮込みで750円ね」なんてお金を払う明朗会計。
新橋や梅田などの昭和の飲み屋街のフンイキがただよっているんです。
「ずり餅(もち)」は全身が胃ブクロ。目にした生物を飲み込む危険なヤツ。店に出現した際は笑美ちゃんが退治。女将さんは「煮込みの材料が尽きてたし、笑美ちゃんこれ倉庫に入れといて」…。
未来の〝得体の知れない〟食材を下ごしらえと手際のいい調理でサカナに生まれかわらせてるんです。
★登場キャラたちも〝未来感〟あふれまくり
店の常連には港湾作業や土木作業で働く男たちがいます。ときには戦火が飛び交う地上で作業することもある。
中には攻撃に巻き込まれて体が吹っ飛ばされる人もいて、サイボーグ化して復活。
上半身だけ機械化されて店に来て、ジョッキをグビグビ。「かあーっ、ウメエ〜」と味わうんです。
以前のバイト先で反政府ゲリラ?の爆弾テロに遭遇して重傷を追う。会社の補償で最新型サイボーグとなって生還。視力5・0、心臓(動力部)は10万馬力。酔ったお客のケンカなどヒョイと体を持ち上げて止めちゃう。
一日の労働の疲れをいやす一杯と一皿。それを味わうヨロコビ。昭和の懐かしい風景が未来でも続いている。
作品の世界観がホント、秀逸なんです。
2.「異世界居酒屋『のぶ』」
原作は蝉川夏哉さん、キャラクター原案が転さん、作画がヴァージニア二等兵さん。
「ヤングエース」で2015年8月号から連載中。コミックスは計18巻(2024年6月時点)が発売中。
高評価だった蝉川さんの小説をコミカライズ。2018年にバンダイチャンネルでWebアニメ化。
2020年にはWOWOWプライムで、大谷亮平さん主演で実写ドラマ化されました。
★あらすじ
アイテーリアの街の一角「馬丁宿通り」。夜になると店のあかりがともる居酒屋「のぶ」。大将の矢澤信之と女性店員の千家しのぶが、京都のさびれた商店街で営業しているはずだった。なのに店の入り口が異世界の街並みにつながっている。でも裏口は京都の街に出られる。店のトビラが開くたびに中世風の軍人や庶民たちがやってきて、お酒や料理に舌つづみをうっている。
この作品こそウマいサカナを「モグモグ」、冷えたジョッキを「ぷはー」。居酒屋の楽しみのシンズイを味わえるんです。
★キンキンに冷えたビールがノドを流れるヨロコビ
「のぶ」には兵隊さんや労働者らのほか、宮廷の要人らもやってきます。
彼らがまず頼むのは「トリアエズ ナマ」。生ビールです。
なぜかわれわれが生ビールを注文するときの「とりあえず、生ね」が、アイテーリアで「トリアエズ ナマ」と決まりモンクになってる。
「おまちどうさま」と出される「ナマ」にお客はびっくり。ガラスのジョッキに黄金色のビール。これに驚く。
さらにジョッキを手にして、飲んでびっくり。ジョッキはキンキンに冷え、ビールも冷えていてノドごしバツグン。
初めて味わった「ビール」の爽快さに「ぷはーっ」となるわけです。
アイテーリアは、おそらく中世ヨーロッパの異世界。街で飲めるのは常温で濃厚な味わいの「エール」。
低温でノドごしバツグン、黄金色でグビグビ飲める「ラガー」は中世以降に生まれたもの。
「ラガー」だと知っていても飲んだことのある人は少ないはず。だから「グビグビ」「ぷはーっ」となっちゃう。
ジョッキ自体も中世ではスズなどの合金製が主流。透明なグラスジョッキは中世後期からで、なかなか手にできない。
冷蔵庫などない時代でジョッキがキンキンに冷えてれば、そりゃ驚いてうれしくなります。
だから登場キャラはビールをゴクゴク飲み干す。「ぷはーっ」とする顔がすごくいい。
読んでいるコチラは「ゴクリッ」とツバを飲み込むほどです。
★エダマメ、唐揚げ、オデン
「のぶ」は居酒屋。われわれが通うお店と同じメニューがそろってます。
エダマメ、唐揚げ、あんかけ豆腐、焼き魚、刺身 ect。
現代のわれわれには居酒屋でも家庭でも食べられるメニュー。でもアイテーリアの人たちには〝初めての食材〟。
「ビール」で驚きうれしくなっちゃったお客たちは、料理の強烈なウマさにKOされるんです。
まずはエダマメ。ゆでたてで軽くシオがふってある。定番のお通しだけどハンスは初めての味。シオ加減絶妙の味に止まらなくなったところで、店のオススメ「オデン」を注文。ホクホクして汁がしみこんだダイコン、トロトロの牛スジ、かむとジュワッと汁がにじみ出るちくわ。口の中の具に「アツカン」をチビリと流し込む。ハンスは「うめえええええ」と目をつむり天を仰ぐ。
ハンスが、おごってくれるという中隊長を連れて「のぶ」へ。中隊長は部下たちがウワサしている「のぶ」の味が知りたかった。中隊長は冷え冷えビールとエダマメの味にびっくり。「他のメニューにも期待できそうだ」とお品書きをにらむ。でもお品書きの日本語が読めない。だから好きなとり肉で「トリアエズ ナマ」にぴったりな料理をオーダー。料理ができるまで「きゅうりの一本漬け」を味わいながら、目の前でじゅわ〜と揚がる唐揚げをじっと見つめる。揚げたてをサクッとかむと、肉汁がじゅわっ。肉汁のウマさととり肉の柔らかさ。さらに冷え冷えビールをグビグビ。ウマすぎる組み合わせに「これは出会いだ…」。
ストーリーではまかないのナポリタン、あんかけ豆腐、刺身と海鮮丼などが登場。お客はビールとのマリアージュの前に、KO。
ウマいお酒をグビグビ、チビチビ楽しみながら、出来立てのサカナを食らう楽しみとヨロコビ。
「異世界居酒屋のぶ」は、うらやましくなるほど楽しめる作品です。
3.「深夜食堂」
原作は安倍夜郎さん。「ビッグコミックオリジナル増刊」2006年11月号に読み切り作品で登場。
以降「ビッグコミックオリジナル」で連載が続いています。コミックスは全28巻(2024年6月時点)が発売中。
2009年には小林薫さん主演でテレビドラマ化。2015年、2016年に実写映画化もされています。
★あらすじ
夜12時に店が開き、朝7時ごろノレンをしまう。そのため常連客は「深夜食堂」と呼んでいる。メニューは豚汁定食だけ。酒は瓶ビール(1人2本まで)、日本酒、焼酎のみ。「あとは勝手に注文してくれりゃあ、できるもんなら作るよ」頼まれたものはなんでも作る。これが店の「マスター」の信条。
お客の注文を聞いてマスターが作る料理は飾り気なし。ウインナー炒め、玉子焼き、カレーライス etc。
「めしや」らしい料理。家庭でも食べられる味。でも、一皿一皿がビールやアツカンをやりながら食べたくなる。
一品一品に登場キャラの思いや人生がこめられていて、実にいい味が出てるんですよ。
★どこにでもあるのに特別な味
マスターはお客の注文通り、イメージ通り料理を作ってくれます。だから、イカツイ人もコワモテも優しい顔になってニンマリするんです。
カウンター席にお客がにぎわう「めしや」。引き戸がガラッと開くと、グラサンでコワモテの男が入ってくる。男の名前は剣崎竜。やくざの幹部だが店の常連。「めしや」でタコの形の赤いウインナー炒めを楽しんでいる。タコさんウインナー炒めの大盛りをビールで決める。コワモテの顔は穏やかでウマそうに食べる。二丁目でゲイバーをやっている常連の一人、小寿々と仲がいい。小寿々は甘い玉子焼きを食べながら冷酒でやるのが大好き。ある日、二人はカウンターで隣り合わせて、ウインナーと玉子焼きを取り替えっこ。「懐かしい味」。以来、二人はそれぞれの大好物を取り替えっこして味わう間柄になる。
自分の大好物を味わいながらウマい酒を飲む。その表情が実にいいんです。
★一品につまった〝人生の味〟
閉店前の朝6時半。やってきた女性が「かつぶしある?」「あったかいごはんにのっけて、おしょうゆかけて食べたいんだけど」。マスターはゴハンを炊いて「猫まんま」を作る。女性は口にほおばると「ニッ」と笑う。以来、女性は明け方にやってきては「猫まんま」を楽しみ、演歌歌手の千鳥みゆきと明かす。彼女は店でも歌うようになる。常連の作詞家が書いてくれた曲が売れ始めるが、みゆきは病気になる。亡くなるひと月前、みゆきは病院から抜け出してきたが「猫まんま」を半分も食べられなかった。みゆきが旅立った後、ある朝の6時半。店に猫がやってきた。マスターは「猫まんま」を出してやる。ウマそうに食べた後に「ニッ」と笑う猫に、マスターは「おかえり」。
売れない歌手のみゆきにとっては、カラオケで練習してペコペコのおなかを満たしてくれる大事で大好きな料理。
豪華な料理にもまさる、心が欲する一品なんです。
タコさんウインナー、甘い玉子焼き、猫まんま。一品一品にはそれぞれの人の思い、人生がつまっている。
子どものころ、遠足や運動会で食べた楽しい思い出。お母さんが作ってくれた思い出の味。
いろんな思いがつまっていて忘れられない大好物を、ウマい酒で味わうヨロコビ。
「深夜食堂」は、それを教えてくれる作品なんです。
まとめ・ウマいお酒と大好きなサカナで「ぷはー」っとやるヨロコビ
タコさんウインナーはビールにピッタリ |
- 陋巷酒家うらまちさかば(原作・丸岡九蔵さん)
- 異世界居酒屋「のぶ」(原作・蝉川夏哉さん、キャラ原案・転さん、作画・ヴァージニア二等兵)
- 深夜食堂(原作・安倍夜郎さん)
3作品に共通しているのは、ウマいお酒と大好きなサカナで「ぷはー」っとやるヨロコビ。
ヨロコビを実感できるのが、居酒屋だということ。
煮込み、唐揚げ、焼き魚。さらにはナポリタン、カレーライス etc 。
店の女将さんや大将、マスターが出してくれるのは庶民の味。高級感はまったくあふれてません。
でも、揚げたての唐揚げをかむとジュワッと飛び出る肉汁。体の奥底までしみわたる煮込みの汁。
庶民の味は、なんど食べてもあきない。一日の疲れをいやしてくれて、すり減った心を整えてくれる魔法がかかっている。
その一皿一皿に、味わう人の思い出や人生が詰まっている。
人間ドラマが詰まった魔法の味を、グビグビ〜っと流し込むビールやお酒が体中に届けてくれる。
家庭とは違うフンイキの中で「食べて飲む」ヨロコビを楽しめるのが、居酒屋。
紹介した3作品はヨロコビをめちゃ味わえるストーリーがたくさんあるんです。だから、
「こんど行く店の参考にしたい。居酒屋でウマいサカナで飲んでる気分を味わえるマンガを読みたい」
「居酒屋マンガでオススメ作品を教えてください」
「人が行き交い、集まる居酒屋の人間ドラマが楽しめるマンガってありますか?」
という方は、この記事を踏まえて3作品をお読みください。
美味しいサカナを食べて飲んでいる気分が味わえて、人間ドラマも楽しめますよ。
当ブログではほかにも「食べもののマンガ」を紹介しています。ぜひお読みください。
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