「日本史マンガ」本能寺の変、謙信女性説、家康影武者説…異説、新説、伝説が楽しめる名作3選

2022年2月10日木曜日

マンガを楽しむ

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明智光秀が織田信長を裏切った動機とは

メチャおもしろいトンデモ説で日本史のナゾやミステリーを推理できる

日本史をテーマ、舞台にしたマンガは人気のジャンルです。

古代、飛鳥、奈良、平安、鎌倉時代。人気のある戦国、江戸〜幕末。各時代の偉人たちが主人公で活躍してカッコいい! おもしろい!


各作品はそれぞれ時代考証がバッチリ。だから読むだけで日本史の勉強ができちゃう。


そして主人公と作品に感情移入して、日本史がもっと好きになる。


日本史が好きになるとヌマにハマります。


通説、定説の間で流れる異説、新説、伝説いわゆるトンデモ説。これがメチャおもしろい。だからネット上では


日本史の異説、新説をもとにしているストーリーの作品を教えて!


日本史にまつわる都市伝説、ウワサが描かれているマンガありますか?


なんて質問がたくさんあるんです。そして、


日本史の偉人が従来のイメージと違う、異説の人物像で描かれているマンガはありますか?


こんな声もけっこう多い。実はあるんですよ、た〜っくさん。


この記事では異説、新説、伝説が楽しめる「日本史マンガ」を多くの作品からチョイス。


  1. 「信長を殺した男〜本能寺の変431年目の真実〜」(作画・藤堂裕さん、原案・明智憲三郎さん)
  2. 「影武者徳川家康」(原作・隆慶一郎さん、脚本・會川昇さん、作画・原哲夫さん)
  3. 「雪花の虎」(原作・東村アキコさん)

上記の3作品について紹介、解説します。


この記事を読めば「日本史にこんな異説や新説、伝説があったんだ」とナットク。作品がすごく読みたくなります。


日本史がもっと好きになって、異説、新説、伝説のヌマにずっぽりハマっていきますよ

3作品をチョイスした理由


本能寺の山門。再建されたお寺だけど往時のフンイキを感じる

源為朝の琉球王朝始祖説。源義経のチンギス・ハーン説。豊臣秀頼の薩摩逃亡説 etc。


日本史には異説、新説、伝説がたくさんあります。いわゆる「トンデモ説」をテーマにしたマンガには、定説とは違うおもしろさがあります。


各説の全部が想像を超えていて「こんな説があるんだあ」とビックリしちゃう。


もしかしたら、こうだったんじゃないか?」なんて推理する楽しみもある。


数多い作品の中から、この記事でチョイスした3作品


  1. 「信長を殺した男〜本能寺の変431年目の真実〜」(作画・藤堂裕さん、原案・明智憲三郎さん)
  2. 「影武者徳川家康」(原作・隆慶一郎さん、脚本・會川昇さん、作画・原哲夫さん)
  3. 「雪花の虎」(原作・東村アキコさん)

いずれも作家さんが描かれる上で、歴史資料に残された「異説」をしっかりと調査、取材。


作家さん独自の世界観、推理や解釈も加わってストーリーとして素晴らしく、おもしろい。


そして3作品がそれぞれテーマにしているのは、日本史の中でもトンデモなく興味深いナゾばかりなんです。


ここからは1作品ごとに紹介、解説していきます。


1.「信長を殺した男〜本能寺の変431年目の真実〜」

作画は藤堂裕さん、原案が明智憲三郎さん。


戦国時代の中で最大の事件、ナゾである「本能寺の変」。


天下統一を前にした武将・織田信長を裏切り、倒した家臣の明智光秀を描いた作品。


「別冊ヤングチャンピオン」2016年9月号から2020年8月号まで連載。コミックスは全8巻が発売中です。


原案の明智さんは光秀の末裔(まつえい)。残党狩りから逃れた光秀の側室の子の子孫とされています。


2009年に出版された「本能寺の変四二七年目の真実」が大ヒットし続編も精力的に執筆。


「信長を殺した男〜」は明智さんの「本能寺の変431年目の真実」をベースに描かれました。


★あらすじ


1582(天正)10年6月2日。早朝の京で発生した「本能寺の変」。光秀が信長に謀反(むほん)を起こしました

信長を倒した後、光秀はあだ討ちを狙う信長の家臣たちとの戦いに備えていた。

だが備中(今の岡山県)の毛利勢を攻めていた羽柴秀吉が予想以上の速さで迫る。

光秀は、秀吉が内通者から自分の謀反を知り転戦を準備していたことに気づく。

光秀は山崎合戦で秀吉に敗退。ある武将の援軍の到来を待つ。「貴方あってこその謀反」と祈りながら。

援軍はなく同盟者も無視を決め込む。光秀は落武者狩りによって命を落とす。

光秀はなぜ信長を裏切ったのか? 内通者はだれなのか? 援軍の武将とは?

さまざまな歴史的ナゾが解き明かされていきます。


★なぜ光秀は信長を裏切ったのか?


なぜ光秀は信長を裏切ったのか?「本能寺の変」発生から現代まで続く、戦国最大のミステリーです。


光秀の謀反の動機については諸説あります。


  1. 信長のイジメ、セッカンを繰り返し受けたことによる「怨恨説」
  2. 信長が警備の手薄な状況にある中での「偶発説」と「単独犯行説」
  3. 信長にとって変わり天下取りを狙った「野望説」
  4. 信長に追放され恨んでいた元将軍の「足利義昭黒幕説」
  5. 信長が天皇をないがしろにしようとしていたことへの「朝廷黒幕説」

ほかにも秀吉徳川家康の「黒幕説」など。最近では「偶発説」と「単独説」が強い印象。


作品の原案を務め「光秀の子孫」である明智さんが主張しているのは「信長の企ての阻止」。

この説、メチャ説得力があるんです。


★戦国覇者・信長はなにを企てていたのか?


信長にとっての抵抗勢力は、西は毛利、長宗我部、島津。東は上杉、北条といったところ。


ただ、いずれも強敵ながら連携はしていない。個別に粉砕していけば日本統一は可能な状況でした。


日本を統一した後、権力者はなにを目指すのか?


まずは組織の改革。領地拡大のため外向きにしていた組織を改めること。日本を統治するための行政組織に改編することです。


だから組織をうまく回すために使えない、いらない要素は切り捨てる。


信長は佐久間信盛など織田家の重臣でさえ使えないと見切り、追放しました。


当時の織田軍団は西国方面を担当する秀吉、北陸の柴田勝家、関東の滝川一益、近畿の光秀。4方面軍の編成でした。


平時になれば4軍団長でも「明日はわが身」。行政的なセンスがなければ余剰人員になる。


ナンクセをつけられツブされるか、知らない遠い国へ飛ばされるか。


多くの武士たちは地縁、血縁で領地を経営していました。土岐一族とされる光秀にとっても、領地がえは一からやり直しの死活問題でした。


そして切り捨てた人員を、どこに配置転換するのか?


★信長の「唐討ち入り説」


唐討ち入り」といえば太閤・秀吉。でも秀吉が考え出して実行したのではなく、信長のオリジナルという説があります。


明智さんも「唐討ち入り説」を重視しています。


平時になれば行政・実務面の仕事人が必要で、戦闘モードの武士たちは無用の存在になる。


失業した武士たちの配転先として信長が見ていたのが、当時の明が君臨した中国大陸


切り捨てるつもりの武将、武士たちに中国の広い領土を切り取らせ領地にさせる。日本は信長の血縁だけで治める。


信長は「唐入り」構想を温めていた。光秀や秀吉ら信長の重臣たちも知っていた。


日本から戦いがなくなったと思ったら、次は中国へ。「いつになれば戦いが終わるのか」。光秀は強烈な不安と恐怖を抱えていた。


ほかの武将も心境は同じ。信長の最大の同盟者といわれた、あの武将でさえ…


多くの歴史学者は明智さんの主張を否定しています。でも作品を読めば「謀反の動機」にナットク、ワクワクしてきます。


ぜひ「信長を殺した男〜」をお読みください。


2.「影武者徳川家康」

原作は隆慶一郎さん、脚本が會川昇さん、作画は原哲夫さん。


「週刊少年ジャンプ」で1994年12号から1995年13号まで連載。コミックスは全6巻が発売中。


歴史小説家である隆さんの同名ベストセラー小説をコミカライズした作品です。


テーマは江戸幕府を開いた徳川家康が、実は影武者が替え玉を務めていたというもの。


★あらすじ


1600(慶長5)年、徳川方の東軍と石田三成が率いる西軍が激突した岐阜・関ケ原。天下分け目の合戦からスタート。

合戦の序盤で家康は、三成の家老・島左近が放った忍びに暗殺された。

徳川陣営は、戦いの序盤で総大将が討たれたと知られたら東軍の士気にかかわると危ぶむ。

徳川陣営は家康にうりふたつの家臣で影武者、世良田二郎三郎元信を替え玉にして決戦に臨む。

かつて元信は野武士として転戦。火縄銃の名手で織田信長を狙撃しケガを負わせたほど。兵法にも明るい。

合戦は東軍が勝利。重臣の本多忠勝、本多正信らは元信の能力を評価し家康の代役を継続させて徳川政権を樹立する。

だが「家康の代役」を快く思わない家康の嫡男で二代将軍・秀忠は、元信を亡き者にして政権を奪おうと狙ってくる。
命を狙う秀忠方に対して、影武者の元信らが対抗していく姿が描かれています。

★家康の影武者説


徳川初代将軍となった家康は用心深い人で、影武者を何人も使っていたとされています。


影武者の世良田二郎三郎元信が戦死した家康の替え玉を務め、初代将軍になったという説。


主張したのは明治時代の地方官、村岡素一郎さん。1902(明治35)年に出版した「史疑 徳川家康事蹟」という本で説を展開しました。


説の根拠は江戸時代の儒学者・林羅山の「駿府政事録」に書かれている、家康が家臣に語ったとされる一節。


自分は子どものころに又右衛門に銭5貫で売り飛ばされて、9歳から18、19歳まで駿府にいた


史実では、家康は6歳のとき今川家の人質として駿府にいく際、家臣の裏切りで織田方に送られ2年間すごしています。


史実には「又右衛門」の名や「売り飛ばされた」記述がない。この違いに村岡さんは「売り飛ばされた」のは元信の身の上だと考えた。


家康は桶狭間の合戦後に独立したが家臣に暗殺された。長男の信康が成人するまで元信が替え玉になった」と主張しました。


★隆さんの「影武者説」では秀忠が悪人に


村岡説に着目したのが隆さん。家康が入れ替わった時期は、人柄が変わったように見える関ケ原後と考えました。


理由は家康が将軍の座を秀忠に譲った後、秀忠に対抗するように駿府で大御所政治を実施。


平安時代の法皇、天皇による「院政」に似ている。二重権威のような状況だったから。


「影武者徳川家康」では、家康が替え玉であることを知っている秀忠が元信を亡き者にしようとしかけてきます。


手下の柳生家を使って暗殺を狙う。まさに陰謀好きの悪人として描かれています。


北斗の拳」をヒットさせた原さんの描く元信ら駿府陣営は、ナイスガイでさわやかな「漢(おとこ)たち」。読んでいてスカッとします。


元信は秀忠の陰謀にどう対抗するのか。ぜひ「影武者徳川家康」をお読みください。


3.「雪花の虎」


原作は東村アキコさん。「ヒバナ」2015年4月号から2017年9月号まで連載。


移籍した「ビッグコミックスピリッツ」2018年7号から2020年48号まで掲載されました。


コミックスは全10巻が発売中です。


戦国時代を代表する武将、上杉謙信。仏の守護神・毘沙門天の化身、知略・義侠心を備えた勇将として人気です。


一方で謙信が実は女性だったという説がある。東村さんが女性説をベースに〝姫武将・謙信〟の活躍を描いています。


★あらすじ


謙信は越後(今の新潟県)守護代、長尾為景の子として誕生します。

為景は本拠地・春日山城で男の赤ちゃんの誕生を待っていた。長男・晴景は頭脳明晰でもなく体が弱かったから。

為景の妻・お紺の夢枕に僧が立ち、今度生まれる子どもは毘沙門天の化身だと告げる。

為景は予言を喜び、後つぎとなる男子の誕生を待ったが、生まれたのは女の子。

為景は落胆するが気を取り直し、赤ちゃんを「虎千代」と命名。「姫武将」として育てる。

虎千代は武道と学問を習い、武将の子として成長していく。

史実によれば、虎千代はわんぱく小僧。野山で遊ぶのが好きな子だったそうです。

★謙信女性説


謙信女性説は小説家の八切止夫さんが1968(昭和43)年に発表しました。


八切さんは、説の根拠として主に3つの分析結果をあげています。


  1. 船乗りゴンザレスがスペイン国王に送った報告書には「上杉景勝は叔母が金山を開発し黄金を持っている」との記述がある。
  2. 姫路藩主・松平忠明が記したとされる「当代記」で、謙信の死因を「大虫」としている。「大虫」は「月経」と思われる。
  3. 当時の越後ではやった民謡「ごぜ唄」に「まんとらさま(謙信)は男もおよばぬ大力無双」という歌詞がある。

景勝は子どものいなかった謙信が養子にした後つぎ。史実では景勝にとって謙信は「叔父」にあたります。


史実での謙信はトイレで倒れ亡くなったとされ、死因は脳いっ血とする説が主流。一方で「虫気」(腹痛)とする説があります。


★東村さんの女性視点での洞察


東村さんは八切さんの「女性説」をベースに「姫武将・謙信」のキャラ像を作っています。


東村流「謙信像」は女性的な視点で謙信の伝承などを分析。説得力に満ちています。


新潟・上越市の春日山のふもとにある林泉寺。謙信が子どものころに学問などを学びました。


お寺の宝物殿には生前に描かれた謙信の唯一の肖像画があり、実際にみた東村さんの印象が作品中で紹介されています。

ヒゲもなければ、強面でもない。(没後の肖像画とは)全くの別人である。

ふっくらとした輪郭に真っ白い肌、小さく柔らかな手。

丸みを帯びたなで肩に、薄い眉に小さい口、すうっと伸びた鼻筋。

越後の猛将、上杉謙信は女だった。

東村さんは美大の油絵科出身。当然ながら肖像画も描かれています。

2016年、東村さんは上越市で開かれた講演会に出演。上越タウンジャーナル(1月23日)によると、

肖像画を描くから分かるけど、これは「若くきれいに描いてあげよう」という絵。

たおやかな、ふんわりした、優しげな美しいおばさまの絵だ。

そう話されていたそうです。

「謙信女性説」は学者さんからは否定的にとらえられています。


でも東村さんの画家、作家、女性の視点と直感からの意見は、拝聴するべきだと思います。


東村さんはストーリーで謙信を闘志にあふれ、知略・戦術感が素晴らしい「武将」として表現。


一方で「姫武将」としての苦しみ、かっとうも描いています。


ヒューマンストーリーとしても秀逸な東村流謙信の活躍をぜひお読みください。


まとめ・異説、新説の「日本史マンガ」は原作もオススメ


春日山の謙信像。優しげな目で越後平野を見つめています

ここまで異説、新説、伝説が楽しめる「日本史マンガ」について紹介、解説してきました。

  1. 「信長を殺した男〜本能寺の変431年目の真実〜」(作画・藤堂裕さん、原案・明智憲三郎さん)
  2. 「影武者徳川家康」(原作・隆慶一郎さん、脚本・會川昇さん、作画・原哲夫さん)
  3. 「雪花の虎」(原作・東村アキコさん)

いずれの作品も興味深い異説、新説、伝説が展開されていて、読んでいてドキドキワクワク。


こんな説があるんだ!」と驚き、楽しめる内容です。


日本史の異説、新説をもとにしているストーリーの作品を教えて!


日本史にまつわる都市伝説、ウワサが描かれているマンガありますか?


日本史の偉人が従来のイメージと違う、異説の人物像で描かれているマンガはありますか?


なんて方は、この記事を踏まえて3作品をお読みください。絶対にマンゾクできますよ


日本史への興味がかき立てられて、さらに好きになること間違いなしです


マンガに合わせて原作を読むこともオススメします。原作で頭に入った異説、新説をマンガでよりイメージできるからです。


当ブログでは、ほかにも日本史が好きになる記事を紹介しています。ぜひごらんください。


アトランティス、天の羽衣「伝説や神話を楽しみたい」人へ「古代文明・伝説マンガ」ベスト3


妖怪ハンター 日本史が好きになる伝奇マンガの厳選エピソード



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