スポーツや仕事で人を導く立場の方に参考になる
サッカーはマンガの中でもポピュラーなジャンル。たくさんの作品があって、どの作品も人気です。
中でも多くのファンから支持を獲得しているのが「GIANT KILLING(ジャイアントキリング)」。
舞台は日本のプロリーグに所属する低迷クラブ。選手たちはつねに2部降格の危機とも戦っている。
そんなクラブが、新監督で主人公・達海猛の手腕で潜在能力が覚醒。
リーグでは強豪を倒し、選手たちは日本代表にも選出されていく。クラブとプレーヤーたちの姿がメチャ感動的です。
指揮官のズバ抜けた戦術眼と運営手腕、プレーヤーの卓越した技術や心理を巧みに描写。
「ジャイキリ」の愛称で、たくさんのファンから愛されています。
そして作品のテーマは達海の名言として有名な「自分の中のGIANT KILLINGを起こせ」。
このセリフが読者の共感を呼び、達海が次々と起こしていく「GIANT KILLING」がファンに勇気を与えています。
それだけに作品に興味がある人や、スポーツや仕事で人を導く立場の方たちからは、
「達海が起こしているGIANT KILLINGって、具体的にどんなこと?」
「達海がクラブを進化させている指導力や監督力って、どんな感じなの?」
という質問の声がたくさん上がっているんです。
この記事では達海が「GIANT KILLING」を起こすために実践している「3つの監督力」や、その効果について紹介。
- 「GIANT KILLING」の体現者・達海の「実行力」と「ビッグマウスの力」
- クラブ改革のキーマンで準主役・MF椿大介のカラを破らせた「名言力」
- ベテランMF村越茂幸らクラブのプレーヤーたちの進化を誘発
- 「自分を変えたい」と悩む読者の背中を押してくれる
上記の4つのポイントについて解説します。
4つのポイントは、まさに読者を熱狂させている作品の魅力そのもの。
だから、この記事を踏まえて作品を読めばよりストーリーを楽しむことができます。
指導者や監督者の立場にある人はナットク&マンゾク。「作品を読んで勉強してみよう」と、すぐにページを開きたくなりますよ。
「GIANT KILLING」ってどんな意味? 作品の内容は?
著者はツジトモさん、原案と取材協力が網本将也さん、。2人のコンビで2007年から「モーニング」で連載中。
単行本は65巻(2024年12月27日時点)まで刊行。2010年にはNHKでアニメ化もされました。
★ちょっとあらすじ
リーグジャパンフットボールで毎年のように1、2部の降格争いに顔を出し低迷する東京のクラブチーム「ETU」。そんなチームに、かつてのエース達海猛が監督として帰還。現役時代は独創的なアイデアとプレーでチームをけん引し、日本代表に選出。英プレミアリーグにも移籍したカリスマプレーヤー。チャランポランな言動は指導者になっても変わらず。監督なのにチームから反発を受ける問題児。それでも個性的な指導方法、鋭い観察眼、戦術眼でチームを再生させていく。
そんな達海が信条としているのが「GIANT KILLING」。
この信条の下で展開される達海の指導、指揮、戦術がズバズバ決まる。弱者の「ETU」が強豪チームを倒していく。
そんなストーリー展開が読者を魅了しています。
★「GIANT KILLING」の意味
作品のタイトルとなっている「GIANT KILLING」の意味もくわしく解説します。
英語で「弱者が強敵を倒す」。スポーツではよく使われる言葉。特に欧州サッカーではひんぱんに飛び出しています。
試合前の下馬評で「絶対に勝てない」と思われていた弱小チームが、強豪に競り勝ちしたり、完勝したりするケース。
コーフンと選手たちへのリスペクトを込めて「GIANT KILLING!!!!」という感じで使われています。
日本でいうと、相撲の取り組みで使われる「大番狂わせ」「金星を挙げる」などと同じ。
日本サッカー史上でも「GIANT KILLING」は起こりました。
最大なものとしては1996年のアトランタ五輪。男子サッカーのグループリーグD組で行われた対ブラジル戦。
FIFA(国際サッカー連盟)ランキングで常に上位にいるサッカー王国に対し、日本代表が1-0で勝利しました。
日本サッカー史上に刻まれる大金星として日本列島は大コーフン。
会場名から由来した「マイアミの奇跡」として、いまも語り継がれています。
そして2022年のワールドカップ・カタール大会。
1次リーグE組で日本はドイツ、スペインとW杯で優勝経験のある強豪国に逆転勝ち。
日本では「ドーハの奇跡」と称賛され、国民は大歓喜。欧州の強豪に競り勝ちできる実力があることを証明しました。
1.「GIANT KILLING」の体現者・達海の「実行力」と「ビッグマウスの力」

現役時代の達海は、その当時でも弱小だった「ETU」のスター選手でエース。
ズバ抜けたテクニック、独特な戦術眼と独創的なアイデアを駆使してチームをけん引。
日本代表に選出され、さらには英プレミアリーグのクラブにも移籍。
大ブレークした要因は技術と戦術眼、相手を出し抜くようなアイデア。これらを実現させる実行力でした。
でも海外移籍の直後、足の古傷が悪化し現役を引退。大きな挫折を経験しました。
「フットボールの神様」に与えられた試練。
達海は「自分の中のGIANT KILLING」を起こして試練に立ち向かい、見事にピッチへ復活。
現役時代の特徴だった自分のスキルを指揮官として使い、生かすんです。
達海は英国の5部リーグに属するアマチュアチームの監督になる。選手の個性と技術をどう生かすかを熟考。自分の戦術スキルも駆使してチームを編成。彼の教えを理解したチームは2部のプロチームを破るなど大躍進。英国のカップ戦「FAカップ」ではベスト32に進出。16強入りを狙った試合でイングランド代表がいる強豪クラブと接戦。2-3で敗れたが観衆やチーム本拠地の街は大熱狂。「またタツミがGIANT KILLINGをみせてくれるさ」と称賛する。ゲームを見た「ETU」のフロントが達海の招へいを決意。ラブコールを受け達海は古巣に指揮官として帰還する。
★古巣の改革で駆使した「実行力」
古巣の「ETU」では、達海はチャランポランで適当なことばかりしてチームを困惑させます。
でも、これはズバ抜けた観察・洞察力で選手たちの持っている力を測るため。春のキャンプで自分のプランをガンガン実行します。
短距離走を何本も走らせる。疲労してからスピードがどれだけ落ちないのか試し、身体能力を把握する。練習メニューを丸投げ。選手がチームのためにどんな行動にでるのか、草むらから観察。選手一人一人が抱える課題や性格なども、選手の学生時代の恩師や関係者に直接取材したりして分析する。すべては勝てるチームをつくるため、任せたい役割にフィットするかを見ている。
当然ながら、監督の言動に対して選手たちからは反発の声が沸騰。
「何考えてんだ?」「ふざけんじゃねえよ!」。
達海は「そんな声が上がるのは当然だろ ⁉︎」って感じで意に介さない。「これが正しい」と決めたらとことん突き進む。
強烈なまでの意志貫徹の力。これが達海の「実行力」の原動力なんです。
★「ビッグマウスの力」で自分を追い込む
自分の考えや目的を実行するために、達海はさらに自分を追い込むんです。それが大言、大グチ。ビッグマウスです。
リーグ開幕直前のプレス・カンファレンス。達海はリーグや各クラブの関係者、マスコミの前でビッグマウスをブチかまします。
ETUみたいな貧乏な弱小クラブがすげえフットボールをして、強豪クラブをバッタバッタとなぎ倒す痛快だろ? まあ見てなって。この国の今年のサッカー界…、俺が面白くしてやるよ。以上っ
当然、会場はどよめく。大言を聞いていた各クラブの監督たちは「何をバカなことを」なんて冷笑する。
でも達海の表情は、どこ吹く風って感じ。あえて大言で自分を追い込み、考えや目的を達成するための原動力にする。
各クラブの指揮官たちは、現役時代に何をしでかすか分からない達海の力も認めている。だから発言を聞いて警戒心がわいてくる。
トンデモない意志の強さと計算力ですね。
★達海のモデルは?
達海の手腕によって再生されたクラブは、化学変化を起こしたような変身を遂げます。
ライバルクラブに脅威を与え、サポーターたちには「GIANT KILLING」を予感させる。
指導者としての達海は、組織論としては型破りですが実に魅力的。「こんな上司がいたらなあ」なんて思わせてくれます。
そんな達海の強烈なキャラクター、モデルはいるんでしょうか?
原作の網本さんらによると、プロ選手たちの有名なエピソードなどを参考にしているとのこと。特定の名前は明かしていません。
ただ現役時代の達海から思い浮かぶのは、日本代表で攻撃的なMFとして人気だった中田英寿さん。
監督としては自信満々の発言や態度が有名で、R・マドリードやM・ユナイテッドなど欧州の強豪を率いたジョゼ・モウリーニョさん。
この2人がベースになっている可能性があります。
でも、あくまでもピッチで戦うのはプレーヤー。いかに指揮官が優秀でもチームが勝たなきゃ意味がない。
そこで達海が見い出したのが、「GIANT KILLING」の素養を秘めた準主役・MF椿大介(つばき・だいすけ)です。
2.クラブ改革のキーマンで準主役・MF椿大介のカラを破らせた「名言力」
![]() |
「GIANT KILLING」は選手、サポーター、読者を熱狂させる |
椿は相手ディフェンダーを置きざりにする、とんでもないスピードとセンス&潜在能力がある。
なのに自分に自信が持てず、人見知りで自分を主張できない。チームでもサテライト(2軍)でくすぶる新人選手。
自分のカラを破ることができない。一方で、そんな自分を「変えたい、サッカーがうまくなりたい」。
ずっと悩みながら、心と体がマッチしない状態が続いていました。
それを見抜いた達海は、彼の高校時代の恩師らに事情を聞くなど指導方法を模索。そして教え子に向けて、シビれる言葉を送ります。
「責任は全部おれがかぶるから、好きなようにやってこい」「お前はとんでもないものを秘めている。日本で一番のフットボーラーになれる」「おれを信じて何も考えずボールを蹴ってこい」
まさに名言。うるっときそうなセリフを起爆剤として与えて、椿の中にたまっていた「GIANT KILLING」というガスを爆発させるんです。
★人を進化させる言葉の力
達海はチャランポランな言動で、クラブの選手や関係者からは「???」という反応がたくさん。
一方で達海がやることなすこと、すべて効果や結果が目に見えて分かる。さらに現役時代の実績はスゴすぎる。
そんな不思議な魅力に満ちあふれた人から「責任は全部おれがかぶるから、好きなようにやってこい」なんていわれたら…。
気持ちがわき上がらない人なんていない。誰だって勇気をもらえます。
人が行動を起こす時。「やってやる!」とみんな決意していると思います。一方で「できるかな?」なんて不安も残っている。
そんな時って、誰かが背中を押してくれるのを待っているんですよね。
不安や迷いを吹っ切らせてくれる言葉。ホントにありがたい。勇気がもらえて力がわき上がってきます。
そんな言葉の力を、達海は分かっているんですよね。
★「達海2世」への変身と五輪代表&A代表へ

達海による指導の下、椿は覚醒。チームの新エースとして躍進し五輪代表、さらにはA代表にまで招集される選手に進化していきます。
ピッチの中で、椿はとんでもないスピードとテクニックを発揮してチームをけん引し、リーグの中で注目を集める。時には以前までの自信のない「自分」が顔を出して、ミスをやらかしたり、大きな挫折を味わう。その度に「このままじゃ、今までと同じじゃないか。何も変わらない」と奮起。チームを優勝争いできる位置に押し上げる。自身もU-22五輪代表,さらにはA代表に選出されるプレーヤーに成長。「達海2世」とまでいわれるようになる。
達海は自身が理想とする「フットボーラー」を椿に投影し、指導することで獲得します。
椿は「自分の中のGIANT KILLING」を起こして爆発的に進化。海外クラブがオファーをかけるほどの選手に成長していきます。
3.ベテランMF村越茂幸らクラブのプレーヤーたちの進化を誘発

達海の強烈な「実行力」「ビッグマウスの力」「名言力」。
この「3つの監督力」は椿だけじゃなく、ほかの選手たちの進化を誘発させます。
その最たる例が「ミスターETU」。低迷したチームをけん引してきたベテランMF村越茂幸。
村越は本来、ボランチとして守備の要を務めつつ、豪快なミドルシュートなど攻撃参加もできる選手でした。
でも達海が海外クラブへ移籍し、エースを失ったチームを支えるために主将として奮戦。そのため、プレーが守備的になっていました。
そんな中で達海がクラブに指揮官として復帰。クラブに入団した当時、村越にとって達海は憧れの人でした。
達海のようなプレーヤーになって、クラブをリーグ優勝に導きたい。そんな気持ちがあったけど、達海はクラブを見捨てて海外クラブへ移籍。
いわば裏切り者です。でも戻ってきた達海は、現役時代さながらの独創的なアイデアと「監督力」でチームを改革し椿を覚醒させていく。
一方で自分はチームの主将としての重責を背負うあまり、プレーヤーとしての自分を出せないジレンマがありました。
★ベテランの闘志を取り戻させた言葉の力
そんな村越も達海の「名言力」で、プレーヤーとしての闘志を取り戻すんです。
このチームの色…そいつはお前だ、村越。前だけ向いていろ。条件は芝の上じゃ絶対服従。俺の考えを完全に理解し選手に徹底させろ。気づいたことは全て報告。仲間の眼なんか気にするな。その上で選手として足掻き続けろ。ぬかったら容赦しねえ。
村越は達海に「チームを背負いすぎるな」と主将から外され、1人のフットボーラーに立ち戻る。
覚醒する椿を見て、主将だった自分の立ち位置とプレーヤーとしての葛藤に苦しみながら「今の俺になにができる」と模索。
そして村越も「自分の中のGIANT KILLING」を起こします。村越の進化が発現したのは、リーグ開幕前に行われた試合。
このゲームでの村越のプレー。私が「GIANT KILLING」にハマった理由の1つなんです。
★心を揺さぶるベテランのスーパーゴール
リーグ開幕前に行われた、プレシーズンマッチでの東京ヴィクトリー戦。
本拠地が同じ東京でも、相手はリーグ優勝を重ねて日本代表も在籍する強豪クラブです。
リーグ戦の行方を占う大事な一戦。チームを支えるために守備的なプレーに終始していた村越は自分自身を変えるんです。
自陣内でボールをタッチした村越の脳裏に達海の顔が浮かび上がる。一人のフットボーラーとして、ピッチでやるべきことは何か。ドリブルで中盤に一気に切り込み、ためらいなく蹴り込んだ豪快なミドルシュートがゴールに突き刺さる。
ボールがゴールネットを揺らした瞬間、会場は静寂に包まれる。ピッチにヒザを落として腕を突き上げる村越に遅れて、大歓声がわき起こる。
この作品の序盤で屈指の名シーン。多くのファンをトリコにして、ワタシもハマりました。
椿と村越の覚醒は、他のチームメートたちの化学反応を誘発させクラブも進化する。
シーズンに入ると、チームはリーグの強豪やライバルを倒して「GIANT KILLING」を連発。
熾烈な優勝争いを演じてサポーター、サッカーファンを熱狂させていくんです。
4.「自分を変えたい」と悩む読者たちの背中を押してくれる
「GIANT KILLING」が作品タイトルとして使われている理由。
それは読者に「このマンガではドキドキ、ワクワクさせるGIANT KILLINGをお見舞いするぞ!」。
そんな意味のメッセージも込められています。
この作品を読んでいると、展開にワクワク&ドキドキしながら「自分も椿たちのように変身してみたいな」なんて気持ちになってきます。
その舞台は、決してサッカーだけに限らない。
学生さんなら自分が所属する部活、社会人なら自分が働く職場。
自分が持つスキルや可能性を信じて「このままじゃ今までと同じだ」「自分は変われるんだ」。
自分を変えるために、一歩前に進むんだ。この作品は読者のそんな思いを揺さぶるんです。
★自分も変わることができる
「自分の中のGIANT KILLINGを起こせ」。
作品のテーマに背中を押されたことで、読者は直面する「強者」を倒す「番狂わせ」を起こそうとする勇気と決意をもらうんです。
主人公・達海が若手の椿、ベテラン村越らチームメート。そして読者に化学反応を誘発していく。
化学反応で進化したチームは、どんな苦境に陥っても決して屈しない。心が折れない。
達海の戦術、そして言葉を信じて90分間ピッチをかけめぐり、大番狂せを達成する。
そんな選手たちの姿に、読者は心を揺さぶられる。「自分も変わることができるんだ」。強いハートと勇気を手にする。
これこそ「GIANT KILLING」が誘発する進化への化学反応。そして作品が読者をトリコにする魅力なんです。
まとめ・ストーリーはリーグ初優勝をかけて最高潮に
ここまで達海が「GIANT KILLING」を起こすために実践している「3つの監督力」や、その効果について紹介。
- 「GIANT KILLING」の体現者・達海の「実行力」と「ビッグマウスの力」
- クラブ改革のキーマンで準主役・MF椿大介のカラを破らせた「名言力」
- ベテランMF村越茂幸らクラブのプレーヤーたちの進化を誘発
- 「自分を変えたい」と悩む読者の背中を押してくれる
上記の4つのポイントについて解説してきました。
4つのポイントは、まさに読者を熱狂させている作品の魅力そのもの。それだけに、
「達海が起こしているGIANT KILLINGって、具体的にどんなこと?」
「達海がクラブを進化させている指導力や監督力って、どんな感じなの?」
なんて作品に興味がある人は、この記事を踏まえて作品を読めばよりストーリーを楽しむことができます。
指導者や監督者の立場にある方はナットク&マンゾク。「作品を読んで勉強してみよう」と、すぐにページを開きたくなりますよ。
最後に「自分の中のGIANT KILLINGを起こせ」という作品コンセプト。
連載がスタートして16年(2023年5月時点)がたっても、決してブレていません。
そして「ETU」の「GIANT KILLING」は、これから最高潮に達します。
コミックス第61巻では、初めてのリーグ優勝をかけた大一番に向かうETU戦士たちの姿が描かれています。
チームは最後の大舞台で「GIANT KILLING」を起こすことができるのか⁉︎ 今後のストーリー展開がホント楽しみです。
当ブログでは、ほかにもスポーツマンガを紹介しています。ぜひお読みください。
「GIANT KILLINGをすぐ読んでみたい」という方は、スマホなどでダウンロードすればすぐに読める電子書籍版がオススメ。
「ebookjapan」「コミックシーモア」などのマンガストアなら無料で試し読みができますよ。
0 件のコメント:
コメントを投稿