ツタが美しい甲子園球場 |
ネット上の評価はイマイチだけど「谷口像」にブレはなし
昭和の野球少年をトリコにした、ちばあきおさん原作の「プレイボール」を引き継ぐ作品。
コージィ城倉さんが2017年4月から連載していました。
主人公は、墨谷高校野球部の主将、谷口タカオ。
努力の天才がひたむきにプレーする姿に、たくさんのファンがいます。
でも、ちばさんが逝去され、谷口率いる墨高は甲子園に出場できたのか、卒業後に谷口はどうなったのか。
〝その後〟は描かれていません。
そのため、谷口ファンは、
「3年生になった谷口と墨高は甲子園に行けたの?」
「野球部を引退した後の谷口はどうなったの?」
そんな声を受けて、谷口の「その後」を描いているのが「プレイボール2」。
3年になった谷口にとって最後の甲子園出場への挑戦がテーマ。
ちばさんの作品では描かれなかったストーリーが展開されています。
そして、甲子園への挑戦の結末、谷口の気になる進路が感動的に描かれています。
そこで、この記事では谷口と墨高の「その後」について解説します。
★ちばさん原作とは「完全に別物」との声が
ただ、インターネット上や書籍レビューでは、キビシイ声が…。要約すると、
- 絵柄、コマ割り、背景はちばさんと同じだが、完全に別物。コージィ城倉の作品。
- 登場人物のキャラクターが、ちばさん原作と変わってしまっている。
- がむしゃらに選手を引っ張る谷口が、策士みたいになっている。
- 登場人物のセリフ、心の声が多すぎる。
こうした声があがる理由の一つには、谷口ら登場人物の心理描写があります。
ちばさんの原作でも、選手の〝心の声〟は出てきますが、コージィさんの描写より少なめ。
選手の表情や、落ち着くためにロージンバックをパタパタやる仕草などで心境を表現。
これが絶妙にうまくて、ちばさんの作風の特徴でした。
コージィさんは、代表作「グラゼニ」でもそうですが、登場人物に自分の心境を〝心の声〟で説明させるスタイル。
これは、現在の野球マンガが一球の意味や戦術を詳細に説明するため、それをコマに盛り込む必要があるからです。
ちばさんがご存命で作品の続編を描くとしたら、どう表現したか。
考えるだけでも面白いですが、コージィさんが「プレイボール2」にも取り入れた現在のスタイルは、アリです。
試合でのプレーシーンは細かい状況が分かりやすく描かれ、ワクワクします。
好意的な声も
また、ネット上には好意的な声もたくさんあります。要約すると、
- 全体的な雰囲気は正統な続編だと思う。
- 原作を良く理解している。
- ハンパない練習量と努力の積み重ねで目標を目指す谷口が健在だ。
- ストーリーはおもしろい。
自分もこれらの意見に賛成!
ストーリーの組み立てが素晴しく、読みごたえもバツグン。迷わずに読むべきです。
その理由は3つ。
- ちばさんの「谷口像」がしっかり継承されている。
- ちばさんがご存命だったら必ず直面する課題をしっかり描いている。
- 最終巻では、甲子園挑戦の結末、野球部引退後の谷口の進路が描かれている
コージィさんは自分のカラーを出しつつ、ちばさんの絵柄、作品の雰囲気を見事に継承。
ストーリーもしっかりと進めているんです。
ここからは「谷口のその後が気になっている」人が読むべき、3つの理由を説明します。
1.ブレずに継承された「谷口像」
墨高ナインは信頼感と絆が強い |
「努力することができる天賦の才」に恵まれた選手です。
ノックができるようになるため、家の近所の神社で夜遅くまで1人でバットを振る。
チーム練習に追われ、自分の練習のために大工の父ちゃんに頼み、バネ仕掛けの「マシン」が弾き出す強烈な球を捕球し続ける。投手になるため、雨の日でも、休み時間でも、周りに「諦めが悪い」と笑われても球を投げ続ける。「プレイボール」では、曲がった指でも送球ができるように、やはり神社でひたすら送球を繰り返す。「才能のない者は、こうするしかないんだ」練習はウソをつかず、陰の努力でプレーは向上。その姿に、チームメイトも発奮してついていく。
コージィさんの「プレイボール2」でも、この「谷口像」は継承されています。
指導者としての成長も
投手層を厚くするために抜擢したイガラシや2年の松川に、1日200球の投げ込みと10キロのロードワークをノルマに課す。一方で、谷口はバッティング投手とブルペンで1日の球数は400球超。しかも10キロの走り込みも怠らない。チームでは「体力不足の新入生には厳しいノルマ」という声がある中、谷口がそれ以上のメニューをこなす。その姿に、体力任せでチャランポランな井口は「谷口さんはこんなに練習するんだ」。
読者からは「谷口が策士になった」という声もあります。
でも、指導面で高校3年というオトナに成長して、後輩を指導する方法を変えた。
間接的な言い回しで相手に気付かせる、指導者としても成長していると評価しています。
2.金属バットの登場、都立校と強豪私立の違い
コージィさんのストーリーは金属バットにも対応した |
金属バットが高校野球で使われ始めたのは1974(昭和49)年。
「プレイボール」の時代は1976(昭和51)年から1978(昭和53)年。
当時は「何で墨谷の選手は金属バットを使ってないの?」という声がありました。
当時は「野球は木製バット」というこだわりがあって、「当たれば飛ぶ金属バットは邪道」なんて空気がありました。
でも、当然ながら木製バットは折れやすく、高校の部活では経済的負担がかかる。
それで金属バットが主流になったんです。
ちばさんの原作を引き継ぐ上で、こうした整合性をどうするか。
墨高では最初、通常練習や練習試合では竹製バットを使用。
木製より球が当たって飛ぶ「芯(スイートスポット)」が狭く、芯に当てないと手がしびれる。
しっかりと当てる練習をこなし、公式戦で木製を使えば効果が期待できる、という狙い。大阪の強豪私立「浪国」との練習試合に臨んだ際、相手の監督から「無礼だ」と怒られ、途中から金属製にスイッチ。
そうしたストーリーの流れで作品を〝時代〟に合わせています。
都立校が強くなるには
都立校は強豪私立と比べ、学校の設備や経済力、選手層などで劣ります。
だから夏の大会で都立校が活躍すると「都立の星」と注目を集めます。
ちばさんの原作でも、墨谷は私立強豪の高い壁に苦戦、惜敗します。
前述した「浪国」を始め、強豪私立は都外、遠い県外に遠征。甲子園常連校などと練習試合を重ねて、実戦での経験値を積んでいる。
墨谷は、谷口が2年次のチームが夏の大会でベスト8に進出。その後の新チームでブロック予選で優勝しシード権を獲得。
この実績が評価され、「浪国」「師岡学園」などの強豪私立から練習試合の誘いが増えていく。
ホントにうまいストーリー展開です。
3.気になる谷口の進路は⁉
谷口の最後の夏は… |
墨谷は東東京大会で強豪が集まったBブロックを勝ち抜き、4強に進出。かつて練習試合で大敗した甲子園常連校・谷原と対戦します。両チームは総力戦で戦い、延長18回に突入。そして、墨高は激戦の末に…。
球友、恩師の熱い思いに涙が止まらない
進路について、谷口は「父ちゃんに弟子入りして大工になる」と決意。野球を思い切りやらしてくれた父への感謝と、親孝行のため。経済的負担をかけたくない思いもあった。父と盟友・倉橋、野球部長の先生の考えは違った。父は「大好きな野球を大学でも続けさせてやりたい」と学費を貯めていた。
倉橋は「人生の視野を狭め過ぎている」と考え、知人で高校卒業後に川北高の監督になった田淵に相談。田淵に監督になった経緯を聞き、自分で考えついた「妙案」を部長先生にぶつける。先生は「その手があったか」と、父ちゃんと話し合い、さらに一手を打つ。
まとめ・谷口の「その後」を楽しもう
「グランドジャンプむちゃ」でコージィさんが連載。
近藤主将が率いていた墨谷二中野球部の物語「キャプテン2」が「グランドジャンプ」に引っ越し。
なんと舞台は再び墨高野球部となります。
「キャプテン2」のコミックスは計11巻が発売中(2024年3月18日時点)。
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