「必ず読むべき作品」と高評価の秘密を解説する
「野球マンガの中で、一番おもしろい作品は何ですか?」
マンガファンの間で、つねに飛び交う質問の一つです。
その答えで「必ず読むべき作品」として上がるのが、ちばあきおさん原作の「キャプテン」。
東京の下町にある中学校の野球部員たちが、ひたすら練習を積み重ね、地区大会を勝ち抜き、中学日本一を目指すー。
実にオーソドックスな内容の作品です。でも、平成をへて令和のいまでも大人気。
作者は違いますが、続編も連載中です。
その理由は、作品に登場する4人の歴代キャプテンの魅力あふれる個性的なキャラ。
それだけに、
「4人のキャプテンの中で、だれが一番好きですか?」
「4人は、それぞれどんな人? どんな性格なんですか?」
なんて質問も多く上がっているんです。
そこで、この記事では、谷口タカオ、丸井、イガラシ、近藤茂一ー、この4人の歴代キャプテンについて、くわしく解説します。
読めば「野球マンガで読むべき作品」という意見に納得。
「4人はどんな人?」という疑問も一気に解決。〝キャプテン通〟としてドヤ顔ができますよ!
どんな作品なの?
原作はちばあきおさん。名作「あしたのジョー」などで知られるちばてつやさんの実弟です。
作品は1972年から1979年まで月刊少年ジャンプで連載。単行本は全26巻刊行。
愛蔵版、文庫版それぞれ全15巻も発刊されています。
昭和の野球少年たちのほとんどが、この作品に影響を受けた作品。
プロ野球では、米大リーグでも活躍したイチロー、新庄剛志、松井稼頭央、田中将大の各選手たちがファンだと公言しているほど。
作品のあらすじ
舞台は東京の下町にある墨谷二中。野球部に転校生・谷口タカオが入部。谷口は野球の名門・青葉学院からやってきて、部員たちから過大な期待をかけられる。でも、青葉時代は二軍で、補欠。期待と実力のギャップに悩む谷口は、大工の父親の猛特訓を受けて実力をつけ、新チームのキャプテンに就任。チームは強くなり、青葉を破って中学日本一に輝く。谷口の卒業後も3人のキャプテンたちが奮闘。猛練習を重ねチームは全国レベルの強豪に成長するー。
1.4人のキャプテンのキャラクター
野球少年たちに影響を与えた理由は、強くなっていく墨谷二中の選手たちの努力する姿。
けがを恐れず、ひたむきに努力し、汗を流す。ひたむきな姿への共感です。
このシンパシーを呼び起こしたのは、ちばさんによる歴代4キャプテンのキャラクター作りの妙。
ここからは4人のキャプテンを1人ずつ取り上げ、その性格と魅力を解説します。
1.谷口タカオ・努力する才能を生かせる天才
「4人の中で、だれが一番好きですか?」
この質問で、最も多く名前が上がるのが谷口です。
名門・青葉からの転校生。青葉では二軍で補欠、へたくそなのに、墨谷二中で過大な期待を受けて悩む。大工の父親から自宅近くの神社で猛特訓を受け、バネ仕掛けで強烈な球が飛び出す「マシン」で捕球練習を何度も繰り返す。次第に努力の才能を前面に出し始める。球が当たってもめげずに食らいつき、捕球技術が向上。その力を見込まれて、新チームでキャプテンに就任する。
キャプテンになると、さらに努力の天才の本領を発揮します。
新チームでは1年のイガラシを抜擢。チームを強化して地区予選を勝ち抜き、決勝で青葉との対戦が決定。大人と子供ほどの実力差を補うため、谷口は通常より3分の1の距離でのノック、打撃練習、何時間も続く基礎体力作りを実行。過酷な練習に反発した選手たちは抗議にいく。神社で「マシン」の球が当たり体がボロボロになる谷口の姿を目撃。「おれたちみたいに 素質も才能もないものは こうやるしか方法はないんだ」。そう、つぶやく谷口の言葉に、選手たちは厳しい練習にのめり込んでいく。
谷口は、努力する才能を生かせる天才。「素質も才能もないものは こうやるしか方法はないんだ」という言葉が象徴しています。
天賦のセンス、技術はなくても、それに近づくために、けがしても苦しくても諦めない。
何度も反復して練習ができる天才。その姿をみて心が震えない人はいません。
2.丸井・チームのことを一心に考え意思を貫徹する努力家
「人間くさいキャラが最高!」
丸井は短気でおっちょこちょい。それを自覚して他人の意見に耳を傾けます。
そんな性格がファンの支持を集めています。
イガラシにレギュラーを奪われても擁護する人情家。陰で自主練習する努力家でもあります。
そんな丸井の性格を買って、谷口はキャプテンを託します。
丸井は尊敬する谷口を見習い、新チームを率いる。だが、優勝候補として臨んだ春の選抜大会ではミスが重なり1回戦で敗退。イガラシから、相手を分析するなど全国大会への準備不足を指摘されてムクれる。一方で、チームを強くするため「谷口さんならどうするんだろう」と熟考。夏の大会に向けて、様々なタイプのチームに勝つため選抜出場36校との練習試合を計画し、強化合宿を実行する。
丸井は、谷口の努力の姿勢を引き継ぎ、実行することを大事に考えています。一方でチームの和、バランスも重視。
イガラシの過激なチーム強化策に戸惑います。それが最善だと判断すると即実行。合宿では谷口から受け継いだハードな練習メニューを実行。100人以上いたチームは10数人に減るが、鍛え上げたチームは練習試合で全勝。夏の地区予選も勝ち抜き、宿敵・青葉と決勝で激突する。
イガラシの意見は、結果的に脱落した選手を切り捨てることになり、悪者になる恐れがありました。
丸井はそれを理解しつつ、批判を自分が受ける覚悟がある。
そして実行力、決断力に長けています。短気だけどチームを思う気持ちと男気。
この人のために頑張らないといけない。そう思わせるタイプです。
3.イガラシ・天賦の才能の持ち主、緻密な計画の実行者
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「手段を選ばない冷徹さが、逆にいい味が出ている」
小柄ながら全ポジションを守れるという天才肌。
1年からレギュラー。2年では丸井を補佐しエース&4番。そして新チームでキャプテンに就任します。
夏の大会での故障者の回復が遅れ、卒業生も抜けたため、春の選抜に向けたレギュラーが組めない。イガラシは100人以上集まった新入生と準レギュラーの2、3年生を合わせてテスト。冷徹に選手を見極め、眼鏡にかなった10数人で強化練習に入る。だが100人以上が球拾いやグラウンドの隅で練習するという状況に保護者が待った。さらに、レギュラー組からけが人が出たため、選抜出場を辞退する。
そんな苦境でも、イガラシは冷静。厳しい環境下で、チームを強化します。
棄権した選抜期間中に、学校側から決められた時間を守りながら、緻密な計画をたててチームを強化。テスト不合格組の実力の底上げをし、中学野球最強とされるチームを編成。地区大会決勝で旧友の剛腕・井口率いる江田川中に競り勝ち。全国大会でも強豪を破っていく。決勝の和合中戦では、春の選抜で青葉を破って日本一の座に就いた強豪と接戦を演じる。
イガラシはプレー、そして指揮にも天賦の才があります。
一方で、それ故に「使えない」と見極めると切り捨てる冷徹さもある。
でも、この天才のやることに間違いないと思わせる、説得力があるキャプテンです。
4.近藤茂一・努力の才能がない天才
「あの、いい加減さ、能天気ぶりがおもしろい。負けん気もあるのがいい!」
イガラシの後を継いだ近藤には、ファンから、そんな評価があります。
巨漢から繰り出す重い速球でが持ち味。1年からイガラシとともにWエース。
でも、 練習がきらいでさぼり気味。
入部当初はセットポジションすら知らず、速球でねじ伏せようとして失敗を重ねる。
それでも全国大会準決勝の南海中戦では爪をはがした痛みに耐えて力投する根性もある。
イガラシはそれにかけて、キャプテンに指名しました。
春の選抜のためのチーム編成や練習メニューを決めないチャランポランさ、無神経な発言にチームメートが反発。そんな近藤に、父親は「卒業したら、どんなチームを残すかが大事」とアドバイス。近藤は1年前の選抜棄権の悔しさを教訓として、無理をせず、後輩をじっくり育てチームの戦力にする計画を立案する。
歴代キャプテンとは真逆の育成方針を貫き、チームの底上げに成功します。
レギュラーテストを実行し、見込みのある選手を全員合格。さらに強化練習に参加させる。そうして編成した1,2年生主体のチームは、強くなるポテンシャルを秘める。選抜大会では、ミスを犯しながら全員でカバー。強豪を破り、夏の大会での飛躍を感じさせる。
近藤は、イガラシとは別な、体が大きく剛球が投げられる天賦の才能があります。
一方で練習嫌いのため、緻密なプレーがうまくならない。
丸井は「おまえの力は認める。でも、努力する才能がないんだな」と辛口です。
それでも、父親のアドバイスを受けた「練習計画」を貫きます。
基礎練習期間、実戦練習期間など長期的に実力をつける。それが完成するのは近藤たちが卒業後という内容。
チームが強くなるため、自分たちの大事な最終学年を犠牲にするという心意気。
そして面倒見の良さ。後輩たちは慕い、その背中についていきます。
2.自分の身近な、親近感のあるキャラが支持される
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4人のキャプテンは個性的な魅力がある |
ここまで解説した4人のキャプテンのキャラクターを振り返ると、以下のようになります。
- 谷口は努力する才能に恵まれた天才。その姿でチームを引っ張る。
- 丸井は他人の意見をよく聞き、決意すれば実行&貫徹を目指して努力する。
- イガラシは天賦の才能で、この人についていけば勝てると思わせる。
- 近藤は努力のできない天才ながら、面倒みの良さで慕われる。
この4人みたいな人、学校の部活や職場にも必ずいるんです。
「この人があれだけ練習しているんだから、自分もやらなきゃ」
「彼は失敗が多いけど、チームのことを必死に考えてのことなんだよな」
「あの人にプレーではどうやってもかなわない。でも、信じてついていけばきっと勝てる」
「あいつはいい加減なヤツだけど、プレーはすごいし憎めないんだよな」
原作のちばさんは、自分の身近にもいそうな、親近感のある4タイプをチョイス。
そこからキャラを作り、チームを引っ張らせた。そう推察します。
それぞれ個性的な一方で、共通していることがあります。
谷口がいう「素質も才能もないものは こうやるしか方法はないんだ」という諦めず、努力を惜しまない哲学。
身近な選手たちが、劣勢でも、けがで苦しくても、ひたむきに勝利を目指して最後まで戦う。
その姿に心が揺さぶられる。昔もいまもファンが魅了される秘密は、ここにあるんです。
まとめ・令和のキャプテンにも注目!
ここまで、歴代4人のキャプテンについて、解説してきました。
「4人はどんな人なの?」という疑問が解消。
「必ず読むべき作品」という理由が、納得できたと思います。
もう一度「キャプテン」を読み返すと、より作品が楽しめるはずですよ。
さらに「キャプテン」の世界を楽しめる方法があります。
現在、「グランドジャンプ」で続編の「キャプテン2」が連載中なんです。
作者は「グラゼニ」などのヒット作が有名なコージィ城倉さん。
コミックスは計11巻(2024年3月18日時点)が発売されています。
ストーリーは新展開の連続でメチャおもしろい!この続きは作品をお読みください。
「キャプテン」シリーズの集大成に、きっとトリコになりますよ!
当ブログでは「キャプテン」シリーズの「プレイボール2」についても解説。
ほかの「野球マンガ」も紹介しています。興味がある方は、ぜひお読みください。
「キャプテン」「キャプテン2」が「すぐに読みたい!」という方は、スマホなどでダウンロードしてすぐ読める電子書籍版がオススメ。
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