「松本零士・考察」宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999以外の代表作が読みたい人にお勧め4作品

2023年3月11日土曜日

マンガを楽しむ

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松本ワールドはSFストーリーだけじゃない

松本さんの作風や〝松本ワールド〟が分かって楽しめる名作

宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」など壮大なSF漫画&アニメが大人気だった漫画家・松本零士さん。

2023年2月13日、85歳で永眠されました。お悔やみ申し上げます。


「ヤマト」「999」は発表された昭和当時のアニメ人気に火をつけ、現在のアニメブームに導いた名作です。


一方で松本さんの本職・漫画家としての作品の知名度は、令和の漫画ファンの間ではいまひとつのよう。


ヤマトや999は知ってるけど、他の作品はよく分からないので教えてほしい


松本さんの作品を読んでみたい! オススメの作品はありますか?


松本さんの漫画の作風が分かって面白い作品は何ですか?


そんな声がたくさんあるんです。


この記事では松本さんの数多い漫画の中から、めっちゃ面白い名作をチョイス。


  1. 「男おいどん」
  2. 「わが青春のアルカディア」
  3. 「宇宙戦艦ヤマト」
  4. 「新竹取物語 1000年女王」

上記の4作品について紹介&解説します。いずれも松本作品の中でもオススメの名作ぞろい。


この記事を読めば、「ヤマト」や「999以外の名作や松本さんの作風松本ワールド〟が分かって、ナットク&マンゾク間違いなし!


さらにたくさんある作品を手にとって、松本ワールドを楽しみたくなりますよ。

サンデーモーニングで連発した「読んでいない」発言

★令和では知られていない松本作品


2023年2月26日に放送されたTBS系情報番組「サンデーモーニング」では、松本さんの訃報にふれていました。


ビックリしたのがコメンテーター陣の反応。松本作品について「見ても読んでもいない」「名前くらいしか存じ上げない」etc 。


知らない発言が連発したことです。司会の関口宏さんは「作品に一番影響を受けているのは50代」と説明。


コメント陣は70代が2人、30代が1人。「ヤマト」「999」がアニメで弾けた1970年代後半にはカスっていない世代。


唯一「影響を受けた」50代のジャーナリスト・青木理氏が補足していました。


でも視聴者からは「番組制作側が松本さんに敬意を払っていない」「勉強不足」など厳しい声が飛び交いました。


「存じ上げない」原因は「ヤマト」「999」ブームが下火になった1979年以降に「機動戦士ガンダム」などが大ブレークしたこと。


ガンダムを皮切りに爆発ヒットしたアニメブームの風が強すぎたんですね。


だから「ヤマト」「999」は知っていても、他の作品の名前は知らない人が多いーというわけ。


でも2つの代表作しか知らないのはもったいない! 松本作品の真骨頂は、この記事で紹介する4作品に詰まっているんですから。


★松本さんについて


4作品の紹介に入る前に、簡単ですが松本さんの経歴を説明します。


松本さんは1938(昭和13)年1月生まれ。福岡県出身。手塚治虫さんの作品に触れ、小学生のころ漫画家を志望。


同時にSF小説も好きで、海野十三さんやH・G・ウェルズの作品を愛読。後のSF作品執筆のベースになりました。


長崎・佐世保に住んでいた高井研一郎さん(代表作は「総務部総務課山口六平太」など)と「九州漫画研究会」を結成。


1954年、高校時代に投稿した作品が「漫画少年」に掲載されプロデビュー。


高校卒業後に上京し少女漫画でスタートしますが、ちょっと苦戦。一方で1960年前後に少年・青年誌に進出。


発表したSF作品が不人気で打ち切りになるなど悪戦苦闘の末、「男おいどん」が大ヒット。人気漫画家へのスタートを切りました。


次項からは松本さんの出世作「男おいどん」など4作品について、1つずつ紹介&解説していきます。


1.「男おいどん」〜松本漫画の代名詞の1つ・四畳半もの

★オリジナルジャンルを確立


「週刊少年マガジン」で1971年〜1973年まで連載。単行本は全6巻。文庫版は全9巻が刊行されています。


当時の松本さんは、少年・青年誌でSFものを連載していたけどヒットしない。


一方で1970年から「別冊漫画アクション」で連載し、下宿屋で暮らす若者の青春を描く「大四畳半シリーズ」が人気に。


シリーズでは松本さん自身や経験が投影され、オリジナルジャンルとして確立。そのシリーズの1作品が「男おいどん」。


若者たちの共感を呼んで松本さんの出世作となり、第3回講談社出版文化賞児童まんが部門を受賞しています。


★登場キャラクターとあらすじ


主人公は大山昇太(おおやま・のぼった)。中学卒業後に上京した九州男児です。

東京・文京区にある「下宿館」の四畳半の一室が寝ぐら。小柄でガニマタ&短足。ド近眼でメガネの2頭身半男。

昼間はバイトで生活費を稼ぎ、夜は夜間高校に通い大学進学を目指している。

金がないから着たきり雀。サルマタ(パンツ)はたくさんあるけど洗濯せず押し入れにポイ。開けると雪崩に襲われる…。

まさに昭和の学生! ワタシも独身生活が長かったので、昇太が四畳半でウダウダする姿はメチャ共感します。そしてあらすじは、

無芸・大食の昇太は貧しいながらも清く正しく生きる青年。バイトしながら夜学に通い大学進学を目指している。

でも不器用な男なので、バイト先では失敗ばかりでクビの連続。夜学でも授業中は居眠りばかり。

そんな昇太に、周りの人はなぜか優しい。先生は「仕事で疲れてるから起こすな」。

クラスの女の子たちがゴハンをおごってくれたり。バイトがクビで学費がなくなると「立て替えてあげる」と申し出たり。

周囲の人たちの励ましを受けて、昇太がたくましく生きていくストーリーです。

男やもめにウジがわくといいますが…

★独身男のダラシなさとダメっぷりがたまらない

読みどころはズバリ、ムサ苦しい昇太の独身生活にあふれるダメっぷりの面白さ。そこに漂う、孤独と闘う孤高さ。


昇太の孤高感は昭和とか令和とか時代は関係ない。時代を超えて共感しちゃう!


ラーメンライス】。共感ポイントの1つ目で昇太の大好物です。


昇太が住む「下宿館」の近くにある「中華食堂 紅楽園」(今でいう町中華ですね)で、必ず味わう一品。


町中華のしょう油ラーメンにドンブリ飯。特別じゃないけどベストマッチ。令和でも愛されていることで分かります。

バイト先の女の子からお茶に誘われても「おいどんはラーメンライスの方が好きなんよ」とブレない。

いつでもどこでもススっている。孤高の男が愛する至高の一品を「食いてえなあ」と思っちゃうんですよね。

サルマタ】昇太は服の種類は多くないのにパンツはたくさん。でも面倒くさいから洗わない。汚いヤツがたまっていく。


これも時代は関係ない、独身男の風習、クセ。この記事を呼んでいるアナタも身に覚えがあるんじゃない⁉︎


洗わずに湿ったまま(汚なっ)押し入れにぶち込む。だから雨が降れば異生物が発生。「サルマタケ」ですね。


サルマタケ】いわゆる「ヒトヨタケ」。枯れ葉や埋もれ木の間に自生。たまに古い畳などに発生することもある。


松本さんのパンツに生えたことで作品に採用したそうで、昇太は嫌がらずほっといている。あまりの空腹で食べるエピソードもある。


実は松本さん、大親友で盟友の漫画家・ちばてつやさんにラーメンに入れて食べさせたそうです。


ヒトヨタケは食べれる種類があって、お吸い物などと好相性だそう。でも食用前後にお酒を飲むと中毒を起こすんです…。


読めば読むほど「オレと同じ!」「昔はこんな感じだったなあ」と深〜く共感しちゃうんです。

男のやせ我慢に漂う孤独と孤高の姿


不潔な独身男のダラシない生活。でも時代に限らず、多少の差があってもこんな感じ。


ため込んだ洗濯物にカビが生えたり、お金がなくて、具のないラーメンをススってライスでお腹を満たしたり。


そんな昇太を見かねて、友人の女の子が手助けを申し出てくれる。でも昇太は、おことわりするんです。

クニを出るとき、ぜんぶ自分の力でやるとちかいをたてたんよ。ここでたすけられたら男が立たんのよ。

昇太は典型的な九州男児でガンコ。だけど出身に限らず若い時(人)って、やせ我慢することがある。

辛くても苦しくても、負けるとわかっていても、1人で闘わなくちゃいけない時がある

だから昇太に共感しちゃう。そして昇太の姿は、その後の松本作品の中に貫かれている美学でもあるんです(後述)。


★松本作品のキャラたちのふるさと


「男おいどん」に登場するキャラたち。個性派がそろっていますが、その後の松本作品にも登場するプロトタイプなんです。


代表格が主人公の昇太。2頭身半の小柄&短足なスタイルは「999」の主人公「星野哲郎」に採用されています。


メガネが加わると「宇宙海賊キャプテンハーロック」に登場するハーロックの盟友・トチロー


昇太が知人から譲られた「トリさん」。大きくて真っ黒な九官鳥のようですが、ハーロックを始めいろんな作品に登場。


クラスの女の子で第1話に登場する「秋山さん」。長い髪とまつ毛の美女は「999」のヒロイン「メーテル」にそっくり。


中華食堂「紅楽園」のオヤジは「ヤマト」のお医者さん「佐渡酒造」。下宿館の大家のおばあさんもいろんな作品に登場します。


理由は「スターシステム」。独自キャラをいろんな作品に登場させるシステム。


1人の俳優さんがいろんな作品でキャラを演じるような感じ。手塚治虫さんが発案したシステムを松本さんも使ったんです。


「男おいどん」は松本さんが独自ジャンルを確立した出世作であり、後の代表作につながっていく偉大な作品です。


2.「わが青春のアルカディア」〜メカの精密な描写と男たちの友情が秀逸

★マニアックなメカ描写が楽しめる


「男おいどん」のようなムサい男の孤高の世界観とともに、松本さんの作品の魅力の1つがメカニックの精密な描写です。


それが十二分に展開されているのが、いわゆる「戦場まんがシリーズ」とされる短編作品群。


ホントに秀逸! 戦闘機が活躍を始めた第2次世界大戦が主な舞台です。


マニアックなメカの精緻な描写とストーリーが戦記漫画ファンの間でブレークしました。


ここで紹介する「わが青春のアルカディア」は「戦場まんがシリーズ」の1つ。


「ビッグコミック オリジナル」1976年5月5日号に表題作が掲載。ほかの6作とまとめられた単行本全1巻が発売中です。


1982年にはアニメ映画版が公開されています。


★登場人物とあらすじ


主人公はファントム・F・ハーロックⅡ世。第2次世界大戦時代のドイツ空軍パイロットでエース。撃墜王です。


右目に黒い眼帯ほおに傷があるイケメン。愛機は「わが青春のアルカディア号」。機体にはドクロのマーク。


松本作品の超人気キャラ「宇宙海賊キャプテンハーロック」のご先祖さまです。


そして日本人の台場元(だいば・げん)。光学機械メーカーのエンジニア。ボサボサの髪にメガネ。小柄で短足。


アニメ映画版の名前は大山敏郎。キャプテンハーロックの盟友・トチローの先祖という設定です。そしてあらすじは、

第2次大戦末期。ドイツは連合軍に敗戦寸前となっていたが、ハーロック大尉は空軍パイロットとして奮闘していた。

愛機はドイツ戦闘機メッサーシュミット。機体が変わっても愛用し続けた電影照準器「 REVI C12D 」で不敗を誇った。

空戦で英国機を駆逐したが燃料切れで不時着。電影照準器の研究と技術交換でやってきた台場と知り合う。

不時着地点に迫る連合軍から友軍を逃がすため、ハーロックと台場は新機に搭乗し飛び立った…。

1976年。ドイツのハイリゲンシュタットで暮らす、老いたハーロックのもとに、日本人青年・台場進が訪れ…。

ハーロックと台場が搭乗した最後のアルカディア号の死闘と、2人のその後が描かれる哀愁感が漂うストーリーです。

★キャプテンハーロックのプロトタイプ作品


ハーロックは女性ファンがメチャ多い人気のキャラ。松本作品でも古参で登場機会が多いキャラです。


商業誌での初登場は1968年の「冬眠惑星」。さらに1969年の「パイロット262」。


ただ、いずれもハーロックの代名詞である「右目の眼帯&ほおの傷」はなし。


また宇宙海賊として初めて搭乗したのは1970年の「大海賊ハーロック」。眼帯は左目で傷がない。


「右目の眼帯&傷」の設定が定着したのは、1975年の「ダイバー0」から。


そして「右目の眼帯&傷」と愛機「アルカディア号」という設定で発表されたのが「わが青春のアルカディア」です。


アニメ版では宇宙海賊のハーロックは、ハーロックⅡ世の子孫という設定。


その父・ハーロックⅠ世は1973年「スタンレーの魔女」で登場。複葉機でスタンレー山脈越えに挑むパイロットでした。


ご先祖さま2人が、1977年に「プレイコミック」で連載された「宇宙海賊キャプテンハーロック」につながるんです。


★ハーロック家は海賊の子孫


未来の「宇宙海賊」の先祖・ハーロックⅡ世は、作品中でハーロック家の歴史を語っています。

故郷はドイツのハイリゲンシュタット。美しい森と湖に囲まれ、古代ギリシャの楽園アルカディアにたとえられている。

機体のドクロマークはハーロック家の紋章。アルカディアの海賊騎士の紋章。

先祖はゲルマニアの大海賊。キャプテンハーロックと名乗り、イギリスの海賊と戦っていた。

父・ハーロックⅠ世は第1次大戦のドイツ空軍パイロットだった。

複葉機「わが青春のアルカディア号」でニューギニアのスタンレー山越えを目指したが戻ってこなかった。

自分も愛機に「アルカディア号」と名付け、ドクロの紋章を機体に描いている。

「アルカディア」の名前とドクロマークは、宇宙海賊になった子孫にも引き継がれているわけですね。

ハーロックⅡ世が愛用したメッサーシュミット

★迫力あるドッグファイトと男の友情

ハーロックⅡ世のカッコよさに加えて、アルカディア号によるリアルで迫力ある空中戦(ドッグファイト)が見どころ。


第2次大戦のヨーロッパの空では、ドイツ軍のメッサーシュミットと英国軍のスピットファイアが死闘を展開しました。


当時ではいずれも名戦闘機ですが、松本さんは両機の激しいドッグファイトを見事に再現。


両機の運動能力や装甲などのスペックを説明しつつ描かれる戦いは、リアル感と迫力に満ちています。

ハーロックⅡ世はアルカディア号の旋回・運動能力を駆使して敵機とバトル。

コックピットを覆う装甲は頑丈だが他の部分は薄い。敵機の攻撃でアルカディア号は穴だらけでオイルが流れた。

昇降舵の感覚もおかしくなり、昇降ワイヤーのスペースに乗り込んでいた台場に確認するが「なんともないよ」。

燃料が切れ愛機はスイス国境前で不時着。機内で台場が切れた昇降舵ワイヤーを腕と足に巻き付け操縦を助けていた。

台場の男気に感謝したハーロックⅡ世は愛用の電影照準器を託し、台場を逃がすため1人で居残るんです。

生き延びたら酒を飲もう」。共に過ごした時間は短くても2人は真の友になった。

2人は戦火の中で生き延びます。そして1976年。台場の息子・(すすむ)ハーロックⅡ世を訪ねてくる。

父が亡くなったため、代わりに進は電影照準器を返し遺言をハーロックⅡ世へ語りかけます。

ハーロックという立派な男と友だちになれてうれしい。

ハーロックのような鉄の信念を持った男になれ。

戦場での一瞬の出会いで燃え上がった友情の炎。松本さんが理想、美学とする男たちの姿なんです。

3.「宇宙戦艦ヤマト」〜著作者裁判が話題になった代表作

★漫画とアニメのマルチメディア作品


宇宙戦艦ヤマト? 一番の代表作じゃん。他のオススメ作品を紹介するんじゃないの ⁉︎


この項目を見て、そう思った方が多いと思います。確かに「ヤマト」は「999」と並ぶ松本さんの代表作です。


ただ他の漫画作品と違い、漫画版「ヤマト」はアニメ版をコミカライズしたマルチメディア作品なんです。


テレビ版アニメが1974年10月に日本テレビ系で放送スタート。


並行して漫画版も「冒険王」1974年11月号から1975年4月号で連載。


単行本は全3巻が刊行されていますが、1巻ごとにテレビシリーズのストーリーが描かれています。


この項で紹介するのは第1巻でアニメ版第1作のストーリー。アニメとは違った、松本さんの作風とタッチが楽しめる。


実際に漫画を手に取った人も少ないようで、これが作品を紹介する理由です。


★爆発的にヒットしたアニメをコミックで楽しめる


アニメ版は初放映当時、視聴率で苦戦。予定していた全39話が全26話に短縮されたほど。


でも再放送で人気が急上昇。テレビ版を再編集した劇場版が1977年に劇場公開されると爆発的なヒットに。


続編がテレビ&劇場版で制作され、昭和のアニメブームに火を付けました。


松本さんはテレビ版のキャラクターデザイン、ストーリー制作に関わると同時に漫画版の執筆も並行。


あまりの忙しさに漫画版は、松本さんいわく「ダイジェスト版」。


とはいえ「ヤマト」の壮大なストーリーがコミックとして楽しめる充実した内容になっています。


★あらすじと主な登場人物


2013年にリメイク版「宇宙戦艦ヤマト2199」が制作されているだけに、知らない人はいないと思われるストーリー。


ただ壮大な世界観を知るためにも、あらすじを紹介します。

2119年。地球はガミラス星からの攻撃を受け、遊星爆弾で地上は放射能汚染が拡大。人類は地下都市に逃れていた。

地下にも放射能が浸透。人類滅亡まで1年となる中、マゼラン星雲のイスカンダル星からメッセージが届く。

放射能除去装置を取りにくること。外宇宙航海に必要なワープができる波動エンジンの設計図が記されていた。

地球防衛軍は第2次大戦で九州沖に沈んだ日本軍戦艦・大和をモデルに建造していた宇宙戦艦に波動エンジンを搭載。

完成した「宇宙戦艦ヤマト」でイスカンダルまでの往復29万6000光年の旅に出た。

主な登場人物も、昭和当時では国民的なヒーローばかり。

「ヤマト」の乗組員では主人公で戦闘班長・古代進(こだい・すすむ)。生活班長で恋人の森雪(もり・ゆき)。


そして艦長の沖田十三(おきた・じゅうぞう)。


地球を狙う大ガミラス帝国では、デスラー総統。太陽系方面作戦司令官の勇将・ドメル


イスカンダルでは地球に救いの手を差し伸べる女王スターシャ。その妹サーシャといったところ。


ガミラスとイスカンダルは2連星。いずれの星も年老い消滅する運命にあった。


デスラーはガミラスのために地球への移住を決意。放射能が混ざっているガミラスの大気に似せるため地球に遊星爆弾を落とした。


平和を望むスターシャは母なる星の最後を覚悟して、地球の救済を決意した。


地球側もイスカンダルの呼びかけを信じ、ヤマトを建造してマゼラン星雲への旅にかけた。


広大な宇宙を舞台にした、ヒューマンドラマも楽しめる名作ですね。


ガミラスとイスカンダルは消滅する運命にあった


★「ヤマト」の原作者をめぐる法廷闘争


平成以降の「ヤマト」については、法廷での著作者をめぐる裁判闘争が記憶に新しいでしょう。


そのてん末は、ちょっと分かりづらい。ただ平成に入って再び「ヤマト」が世間に注目された出来事として説明します。


「ヤマト」の原作に関して、アニメの企画・原案はプロデューサーの西崎義展氏とされていました。


一方、松本さんはキャラクターなどのデザイナーとして制作に参加。ストーリーやアイデアも出した「共同作品」とされていた。


それだけに「原作については、あいまいだ」と主張していました。


西崎さんが破産した1997年以降、松本さんは「自分が原作者」で「西崎さんは作品とは無関係」だと主張しはじめました。


そして1999年、「ヤマト」の著作者(原作者)をめぐって松本さんと西崎さんの間で裁判が行われたんです。


松本さんは「ヤマト」のモデルとなったとする自身の作品を証拠に出してアピール。でも東京地裁の一審判決は「西崎さんが著作者」。


松本さんは全面敗訴したため、さらに控訴しました。


★オトナの裁定で和解


松本さんが起こした控訴審が進む中、2003年に法廷外で和解が成立。「西崎さん、松本さん共に著作者」という認識で合意しました。


日本を代表する作品が法廷論争の原因になっていることは残念。作品を愛した「ヤマト」ファンにも申し訳ない。


そんな思いや考えから和解となった感じです。


ただ「西崎さんが筆頭著作者」「西崎さんの許しなく新作を作れず権利も行使できない」という、ただし書きつき。


ヤマトシリーズの新作で松本さんがクレジットを出す場合は『設定・デザイン』」としなくてはいけないことになりました。


合意したとはいえ、松本さんにはわだかまりがある。


2010年の実写映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」「宇宙戦艦ヤマト2199」など続編に松本さんは名前を出しませんでした。


松本さんが「ヤマト」に距離を置くという残念な結果になりました。でも、それでも漫画版「ヤマト」は読むべき一冊です。


松本さんは「ダイジェスト版」と評していますが、テレビ用のエピソードを必要最小限にしてストーリーを表現。


松本さんのタッチで描かれるメカやキャラはアニメ版にはない、松本さんならではの世界観が広がり、楽しめるからです。


4.「新竹取物語 1000年女王」〜1000年女王はメーテルなのか

★都市伝説とSFがミックス


タイトルに「新竹取物語」と銘打たれているように、都市伝説的な要素を盛り込んだSF作品です。


作品は産経(当時サンケイ)新聞などで1980年から1983年まで、月曜〜金曜版で1ページずつ連載されました。


単行本は全5巻が刊行。2023年2月28日には特装版(上の表紙)の上・下2巻が発売。松本さんのデビュー70年目を記念したものです。


漫画版に連動してアニメもフジテレビ系で1981年〜1982年まで放送。


アニメ映画版も1982年に「1000年女王 QUEEN MILLENNIA」のタイトルで公開されました。


★主な登場人物とあらすじ


主人公は中学生の雨森始(あまもり・はじめ)。「999」の星野哲郎のような容姿。宇宙が好きな心の優しい少年。


ヒロインは雪野弥生(ゆきの・やよい)。両親を亡くした始がお世話になっている伯父・雨森教授の助手。「999」のメーテル似の美女。


雨森教授は筑波天文台の所長を務める天文学者。太陽系の第10番惑星が地球に接近していることを発見。警鐘を鳴らす。


映画版のCMキャッチコピーは「1000年女王はメーテルなのか?」。


ヒロイン・弥生はメーテルそっくりの容姿。2人は同一人物なのか? この謎も作品の主テーマの1つ。あらすじは、

1999年、雨森教授は地球に接近する太陽系第10番惑星を発見。

一方、始の両親が経営する電子鉄工所で爆発が発生。始も事故に巻き込まれ入院。病院で謎の美女と出会う。

両親は犠牲になり、始は雨森教授に引き取られる。入院中に出会った女性が伯父の助手、弥生だと知る。

始の周辺では奇怪な事件が多発。背後に謎の組織「1000年盗賊」の存在があることを知る。

接近する惑星が「ラーメタル」と知り、弥生の正体が惑星から派遣され密かに地球を指導していた1000年女王と知る。

天文台のコンピューターが、惑星が地球に衝突すると計算。その時間を「1999年9月9日零時9分9秒」と弾き出す。

地球を救うため、始と弥生たちはラーメタルとの戦いにのぞみます。

★昔話「かぐや姫」と第10番惑星

タイトルの「新竹取物語」から分かるように、作品は平安時代に成立したとされる昔話「かぐや姫」(竹取物語)がモデル。


竹の中から出てきた赤ちゃんが美しい美女に成長。実は彼女は月の住人で、使者とともに月に帰る物語。


不思議なストーリーだけに「かぐや姫は宇宙人。実際にあった話が物語として伝わっている」なんて都市伝説があります。


そして「太陽系第10番惑星」。こちらも都市伝説に近いイメージがあります。


ただ天文学会では太陽から最も遠い軌道を回る海王星よりも、さらに遠くに惑星があるのではないかという仮説がある。


NASAも2005年に海王星の外側に太陽を回る星が存在すると発表。惑星かどうかは不明ですが「惑星 X」と呼ばれています。


惑星Xには高度な文明が存在する⁉︎


★「惑星 X」の住人は高度な文明の持ち主


「惑星X」には生命が存在し、地球より進んだ文明がある。UFOはそこから飛来している。


現在の都市伝説では、そう主張する説があります。


「1000年女王」は「竹取物語」をモデルに、まさに「惑星 X」を先取りしたような作品。そして、

ラーメタルは1000年ごとに地球へ接近するたびに女王を派遣。地球を密かに管理させていた。

ラーメタル人は地球を離れている1000年間は眠りにつく。その慣習を嫌い指導者ラーレラは地球移住を狙う。

歴代の1000年女王にはクレオパトラや卑弥呼など、歴史上の女王たちがいる。

弥生ら歴代の1000年女王たちは地球人を愛したため、帰還命令に背いて母星の移住計画に備える準備を重ねていた。

弥生も地球を愛する1000年女王として母星ラーメタルの侵攻に備える準備をしてきました。

人々を避難させるため、地下空間に大団地を建設。地球人を宇宙に脱出させるための宇宙船をたくさん建造していた。

ラーメタル人ながら地球を愛した「1000年盗賊」も母星の計画を阻止するため、母星側と思っていた弥生の行動を妨害。

組織の首領で弥生の妹・セレンも、母星に対抗するための宇宙船を建造。

弥生もセレンも始の両親に宇宙船用の部品製作と供給を依頼。母星側の工作で鉄工所は爆破されてしまった。

弥生とセレンは始の両親を巻き込んだことをすまなく思っている。さらに弥生は始に昔の恋人の面影を見る。だから始を助けようと奮闘する。

そして弥生とセレンは共闘し、ラーメタルと死闘を演じるんです。

平安時代と現代の都市伝説をベースに展開する不可思議な謎と壮大なストーリーは、読んでいてワクワクしてきます。

★1000年女王とメーテルの関係は?


そして、もう1つの謎「1000年女王はメーテルなのか?」。


漫画版には2人の関係性を示す描写はありません。ただ、弥生のラーメタル名は明かしています。


ラー・アンドロメダ・プロメシュームⅡ世」。この名前って、どこかで聞いたことがある ⁉︎ そうなんです。


「999」の最初の作品「アンドロメダ編」で登場した、機械王国の女王「プロメシューム」。メーテルのお母さん


作品ではストーリーが「999」の前史弥生はメーテルの母・プロメシュームということを暗示しているんです。


その後に公開された2000年のアニメ「メーテルレジェンド」と2004年「宇宙交響詩 銀河鉄道999外伝」では明示されています。


「999」前史で壮大なストーリーが展開する「1000年女王」。メーテルファンの方はぜひお読みください。


「999」については当ブログで紹介中。よろしければ、のぞいてみてください。


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まとめ・作品愛ゆえに起きた歌手・槇原敬之さんとの法廷闘争


壮大な物語が展開する作品への松本さんの愛は深い


ここまで松本さんの作風や面白さが楽しめる名作を紹介&解説してきました。


  1. 「男おいどん」
  2. 「わが青春のアルカディア」
  3. 「宇宙戦艦ヤマト」
  4. 「新竹取物語 1000年女王」

上記の4作品は、いずれも松本作品の中でもオススメの名作ぞろい


松本作品の特徴である「男の孤高」や「メカの精細な描写」、壮大なSFストーリーなど〝松本ワールド〟がたっぷり。


ヤマトや999は知ってるけど、他の作品はよく分からないので教えてほしい


松本さんの作品を読んでみたい! オススメの作品はありますか?


松本さんの漫画の作風が分かって面白い作品は何ですか?


そう悩んでいる方にはピッタリの作品です。ぜひ作品を読んでみてください。さらに〝松本ワールド〟にハマりますよ。


「ヤマト」の項で説明しましたが、松本さんの作品をめぐっては法廷闘争が多いんです。


2007年、「999」の第2作「エターナル編」のフレーズが、歌手・槇原敬之さんが作った曲の歌詞に盗用されていると提訴


裁判所は槇原さんに軍配を上げ、2人は和解しています。


法廷闘争の原因は、松本さん自身が生み出した作品への愛が強く、深いこと


その意味でも「999」や「ヤマト」のアニメしか見たことがない方に、松本さんの漫画を読んでほしいと思います。


当ブログでは、ほかにも面白い漫画を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。


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