「ひらやすみ」松本大洋ら漫画家や有名人が絶賛するホームドラマに心がほっこり癒される3つの魅力

2024年5月22日水曜日

マンガを楽しむ

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阿佐ヶ谷の七夕祭りでの一コマ

平屋暮らしのほっこりフリーターにハマる理由とは⁉︎


家族や友人、同僚との人間関係に疲れちゃったり…。


学校での嫌なことや仕事先の理不尽さに、心が消耗しちゃったり…。そんな時、


心が癒される漫画が読みたいんだけど、何かほっこりする作品はないかなあ?」なんて作品を探す人は多いと思います。


そんな悩ましい声に応えて、最近の作品で名前があがるのが「ひらやすみ」。


週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中のホームドラマです。


東京・阿佐ヶ谷の古い平屋で暮らすフリーターの主人公らの日常を描く作品ですが、漫画家さんやタレントさんらが大絶賛しています。


それだけに、まだ作品を読んでいない人からは、


たくさんの漫画家さんやお笑い芸人さんが推しているけど、理由は何なの?


レビューですごく評判がいいけど、どんな魅力があるの?


なんて声がたくさん上がってるんです。


ワタシも〝お試し版〟を読んでみたら、心がほっこりしてコミックス全巻一気買い。「何でこんなにしみじみと来るんだろう」と考えました。


この記事では考察を繰り返して分かった「ひらやすみ」に心がほっこり癒される魅力として、


  1. 無言なのに〝思い〟がジ〜ンと伝わる登場キャラクターの表情
  2. 見開きで展開する風景が登場キャラの心象風景となっている
  3. 「ひらやすみ」のタイトルの意味が示す生きづらさとの葛藤

上記の3つの魅力について紹介&解説します。


この記事を読めば、「ひらやすみ」が秘めている魅力多くの漫画家さんやタレントさんが絶賛する理由がよく分かる


そして実際に作品を手にとってページを開きたくなりますよ。

「ひらやすみ」って、どんな作品なの?





★全巻大重版の人気作


著者は真造圭伍(しんぞう・けいご)さん。東京造形大在学中に「なんきん」でデビュー。


代表作は初連載作で映画化もされた「森山中教習所」や「ノラと雑草」など。


やわらかくてほのぼのとした優しい線と、登場キャラクターの豊かな表情が心に刺さる作風。


小学生の日常をコミカルに描く「団地ともお」の小田扉さんのアシスタントを務めていたそうです。


「ひらやすみ」は「週刊ビッグコミックスピリッツ」2021年21・22合併号で連載スタート。


コミックスは計7巻が発売中(2024年5月時点)。「全巻大重版」され累計発行部数は75万部を突破。


各巻の帯には「ピンポン」などが代表作の松本大洋さんら漫画家や、お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹らが推薦文を寄稿。


多くの有名人から絶賛の声がたくさんあがっています。


マンガ大賞2022」で堂々の3位、「マンガ大賞2024」でも8位にランクインしている人気作品です。


★あらすじと登場人物


舞台は東京・阿佐ヶ谷。都会の中に昔ながらの商店街住宅街が混在する人情の街

29歳のフリーター、生田ヒロトが身寄りのないおばあちゃん・和田はなえとひょんなことで仲良くなる。

ヒロトは毎週月・木曜の晩に、はなえが住む平屋で夕飯をごちそうになっていた。

でもトンカツをごちそうになった翌日、はなえが死去。彼女の遺言でヒロトは平屋を譲り受ける。

やがて故郷・山形からいとこの小林なつみが美大進学のために上京し、ヒロトと平屋で共同生活を始めるー。

阿佐ヶ谷駅から徒歩20分の平屋で、ヒロトとなつみの日常の出来事友人たちとの交流が描かれる、ほのぼのホームドラマ。

そして青い空や夕暮れの心地よい空気感、カエルや虫の声で演出された季節感。とにかくていねいに世界観が創られています


松本大洋さんが推薦文で「日常生活を心地よく描写する事のできる真造くんはカッコいい」と称賛するほど。


そして主人公と主な登場人物は、


生田ヒロト】阿佐ヶ谷の釣り堀でバイトするフリーター。のんきな性格で、勝ち負けにこだわらない。お年寄りに好かれる。


愛車はスーパーカブで、キャンプツーリングが好き。好物はたこ焼き。お金がないから自炊の日々。


俳優を目指し山形から上京した。でも好きなタイプの女性とうまく話せず、女優との絡みでNGを連発。俳優の道を断念した。


小林なつみ】高校卒業後、山形から都内の美大に進学。ショートボブが似合う素朴でかわいい娘。


都内の美大に入学したが田舎コンプレックスで気後れ。幼いころからヒロトを慕っているが、のんびり屋のヒロトにイラ立ちも…。


実は漫画家志望。両親や友人に隠れて創作の日々を続けていたが、ひょんなことからヒロトにバレた。


和田はなえ】阿佐ヶ谷の住宅街の平屋で一人暮らし。結婚の経験はなく、かつては給食のおばさんだった。


ちょっとへんくつで頑固者だけど、のんびり屋で優しいヒロトが好きで月・木曜の晩御飯をふるまう。


自分の死を覚悟していたのか、家の手入れを手伝い「この家が好きだ」というヒロトに自宅を託すことを生前から決めていた


この3人を軸に、心に刺さりまくるエピソードが展開するんです。


1.無言なのに〝思い〟がジ〜ンと伝わる登場キャラクターの表情





★はなえばあちゃんの表情にやられて


「ひらやすみ」は、ほのぼのとした絵柄とストーリーが絶品。コミックスの表紙は作品の魅力を象徴していますよね。


特に作品の特徴として、ワタシが「めっちゃいいなあ〜」とシビレたのは、登場人物の表情。これがいいんですよ!


ワタシがやられたのが、1日目第1話)「ヒロトとなつみ」で、はなえばあちゃんがみせた表情。


一気に〝ひらやすみ沼〟にハマりました。


ヒロトは毎週月・木曜日、釣り堀のバイトが終わるとばあちゃんの家で夕食をごちそうになっていました。


エピソードの夜も、ばあちゃんの家でトンカツをほおばります。


カツばかりバクつくヒロトに「ほかのも食うんだよ」と怒るんだけど、ヒロトを見つめる目は息子や孫を見守る目そのもの。

帰宅する時に風邪気味でセキをするヒロトに、はなえは自家製のカリン酒とデイサービスで作った猫の切り絵を持たせる。

ヒロトはうれしくて「ありがと ばーちゃん!」とはなえを抱きしめる。

はなえは目をつむり、ヒロトの暖かさを心に刻むように彼の体に手を添える。

翌日、はなえは心筋梗塞で亡くなった。

はなえばあちゃんの目をつむった表情が、ホントにジンときて最高なんです。

自身の死を予感していたのか、ハグしてきたヒロトとの時間、ヒロトの暖かさを忘れない。そんな心情を感じてしまうんです。


余計なセリフは加えず、表情だけでヒロトへのあふれる思いを表現している。


ワタシは、はなえばあちゃんの表情一発で「ひらやすみ」にハマりました。


★ヒロトの呆然とした表情


あんなに元気だったばあちゃんが急死。ヒロトのショックははかりしれないモノがあります。


葬儀会場に飾られたばあちゃんの遺影の前で、ヒロトはつぶやきます。

「ピンボケすぎるだろ… ばーちゃん…」

その表情は、まさに呆然。無表情。ヒロトが見つめる遺影のばあちゃんの顔はボヤけている

大事な人を亡くして混乱し、心のピントが合わないヒロトの心情が見事に表現されたワンシーンです。


ヒロトとばあちゃんの交流は、第1話以降でも少しずつ披露されています。


2人の出会いは、まさにひょんなことから(0日目ヒロト君の休日」)。

ある夕暮れ、ヒロトが散歩していたらステキな平屋を発見。写真を撮っていたら、ばあちゃんに「何撮ってんだい」と怒られた。

ばあちゃんが開けた窓からカレーのいいニオイが漂ってきてオナカがグ〜。

ばあちゃんは「アンタが嫌じゃなかったらウチで食ってき」。

以後、ばあちゃんの家に遊びに通うことになったんです。

庭木や家の手入れを手伝ったり、ばあちゃんが転倒して腕を骨折した際には病院にかけつけたり。


ばあちゃんはヒロトの純粋な優しさから、自分が死んだら家を譲りたいと思ったんですね。


ヒロトも、へんくつだけど優しくしてくれるばあちゃんが大好き。だから急死が信じられない実感もない。呆然として涙も出なかった

葬儀から3カ月後、なつみが山形から上京。平屋でヒロトと同居することになった。

なつみがセキをしているので、ヒロトはばあちゃんが残したカリン酒を床下から取り出した。

目の前の壁にはばあちゃんと撮った写真が貼ってあり、ヒロトは急にこみあげて号泣する。

「もうばーちゃんいないんだなって…」「オレなんもしてやれなかった…」

ばあちゃんが亡くなって初めて流した涙。大切な人が亡くなったことを初めて実感する。リアルでジンとくるシーンです。




★カラを破ろうとするなつみの顔がいじらしい


はなえばあちゃんが亡くなってから3カ月後に、山形から上京したなつみ。


夢と希望と、ちょっとだけ不安を抱えて美大でのキャンパスライフに臨みます。


でも、なかなか友だちができない…。彼女には田舎から上京したというコンプレックスがあって、華やかにみえる大学生活になじめないんです。


絵画科のオリエンテーションの自己紹介で、印象に残ろうとしてやった輪ゴムマジックで大スベリ。この失敗が原因だとイジイジしている。


以後、講義はサボりがち。大学に行くふりして街の本屋さんで立ち読みして時間をつぶしたり。


2日目友達100人なんていらないよ」で描かれる、なつみの表情はいじらしくて仕方ありません!


冒頭の学生食堂のシーン。学生たちのおしゃべりで賑やかな中、ラーメンを抱えながら無表情で立ち尽くす姿に孤独感があふれまくり。


新歓パーティーでは、会場の入り口で顔を赤くして立ちすくむ。その姿には「絶対友達をつくる!」という気負いと悲壮感が漂っています。


でも結果は飲みすぎて自爆。駅のホームで大リバースしてるのに、だれも助けてくれない。傷はさらに深くなるばかり。


でも4日目くよくよキラキラ」で、ついにカラを破るんです。

なつみは大学をサボってぶらぶらしていたら、バイト帰りのヒロトとバッタリ。

いつものんきそうなヒロトに「悩みとかないの?」と問いかける。

ヒロトは「ないなあ悩み」「くよくよ考えたってしょうがないじゃん」。

ヒロトの言葉に感じるものがあって、なつみは再び大学に通い始めます。そして、アトリエで、1人の女の子と出会うんです。

同じ絵画科1年の横山あかり。三つ編みのかわいいメガネっ子。一浪で博多から上京したけど、彼女も友達ができなかったんです。


実は彼女、新歓帰りに大リバースして苦しそうななつみに水をくれたんです。


だからなつみも彼女を覚えていて、「この人となんか気が合いそうだな」と勇気を出して声をかけたんです。


2人のもじもじしつつも、友だちが欲しいという思いがあふれる表情。互いに名乗り合うと、距離がグッと縮まるんです。


大学などに入学した頃って、いつも一緒にいた高校の友人たちがいないから不安で孤独を感じるんですよね。


友だちできなくて、オレ4年間ずっと1人かも…」なんて思ったりして。でも、友だちができるとメチャうれしくて。


なつみの表情は、おっさんの懐かしくて甘酸っぱい? 思い出を呼び覚ましてくれたんです。


2.見開きで展開する風景が登場キャラの心象風景となっている





★嵐の夜とヒロトの過去


「ひらやすみ」のもう1つの特徴は、見開きなど大きなコマで展開される風景・背景の描写


前述した登場キャラの無言の表情と同様に、風景・背景にもキャラの心情が盛り込まれていてメチャ印象的なんです。


例えば15日目台風の夜に」。ヒロト自身が俳優時代について明かすエピソードとなっています。


はなえばあちゃんが生前の頃、台風が来た夜の話です。

ヒロトはばあちゃんの家で、台風に備える準備をした。夕食後、帰宅しようとしたが風雨が強まり泊まることに。

2人で梅酒を飲みながら、ヒロトが出演した映画「まぶしくて見えない」のDVDを鑑賞。

ばあちゃんはヒロトの演技に感激し「いやぁもったいない」「辞めなくてもよかったのに」と残念がる。

そして「ビュオオオオ」と風雨が平屋に吹きつけている大コマが続く。辛い過去を思い出したヒロトの心情を象徴するようです。

酔っ払ったヒロトだが、急に真顔になり「売れなかったら負けって世界だから、辞めたんだぁ」。

「オレには…あの世界は…あってなかったん…だ…」と酔いつぶれる。

室内に嵐の音が響く中、ヒロトの心の闇を垣間見たばあちゃんは言葉を失った感じ。その表情が切ないんですよ。

ヒロトは上京した際、「楽しいから」役者を目指すと所属事務所の人に明かしたんですが「売れたら勝ちという世界」と冷淡に返されます。


ヒロトは役者として活動する間にたくさんの「勝ち負け」を見続けたんでしょうか…。


でも嵐が去った朝は、台風一過の晴天。ばあちゃんとラジオ体操をやりながら「酔っ払って変なこといってなかった?」。


のんきだけどくよくよしないヒロトのいいところを、青い空に象徴させる名シーンです。


★初夏の夕暮れに幸福感が漂う


17日目ヒロト君のお仕事」では、初夏の釣り堀を舞台にヒロトの親しい人たちに吉報が続くエピソード。


ヒロトのうれしそうな、幸せそうな雰囲気を見開きの背景が演出しているんです。

バイト先の釣り堀に出勤したヒロト。店番で本を読んでいると「ヒッマそうだな〜」と、なつみとあかりがやってきた。

なつみは「釣りをしてみたい」というあかりと釣りにチャレンジする。

あかりが見事に金魚を釣り上げ喜んでいると、なつみのスマホに着信が…。

出版社から、なつみが投稿した漫画が入選したという朗報だった。

あかりたちから祝福される横で、ヒロトのスマホにもメールが着信。

親友のヒデキから、赤ちゃんが生まれたという連絡だったんです。


ヒロトは小さな頃からなつみが漫画を描いているのを知っていて、彼女が漫画家を目指していることを応援しています。


また、ヒデキに子どもができたと聞いても「うらやましいな」と思うより「赤ちゃんが無事に生まれてくればいいな」と願う優しいヤツ。


だから2人の朗報を聞いて、ヒロトはホントにうれしかったんです。


そんな彼の心情を象徴するのが、ヒロトが釣り堀で立たずむ見開きのシーンです。

閉園時間になった夕暮れの釣り堀で、ホウキで掃除をするヒロト。

家々にあかりが灯り「タタントトン」と電車の音が響いている。

暑さが落ち着いた初夏の宵の心地よさを感じながら、ヒロトは目をつむりながら幸福感にひたっていた。

「ひらやすみ」が「読むとほっこりする」と漫画ファンに愛される理由を象徴する名シーンでもあるんです。

阿佐ヶ谷の釣り堀。漫画の舞台にそっくり

★なつみが空に見い出した光明

投稿漫画が入選したなつみは、編集者の指導を受けてプロデビューを目指すことになります。


新作のネームをバンバン描きますが、編集者からは「要素を詰め込みすぎ」「何を伝えたいのか分からない」とダメ出しの連続。


編集者に「どうしたらいいのか」説明を求めたり。その説明を録音して繰り返し聞いても、言っていることがよく理解できない


袋小路にハマったなつみは、ストレスがたまってイライラモードに…。


そんな折、ヒロトがヒデキとゾンビ映画を撮ることに。なつみも手伝うことになりました(51日目クランクイン」)。

あかりらなつみの友人も手伝って撮影はクランクイン。みんなががんばる中、なつみは「時間のムダ」と1人イライラ。

そんな気持ちが態度に出たなつみに、ヒロトは「そんなやりたくないなら、やんなくていいよ」。

なつみが「映画撮ってどうなりたいわけ?」と問いかけると、ヒロトは「自分の中にしこりがある」「悔いを残したくない」。

「そんなの…意味ないじゃん!!」というなつみに、ヒロトは「全部に意味がなきゃ、ダメなの?」。

早く漫画家デビューしたい。そう焦るあまり、なつみは漫画以外は意味がないと考えるようになっている。

だから俳優を辞めたヒロトが、映画を撮り始めた意味が分からない。だから「意味がない」といっちゃったんですね。


ヒロトはヒロトで映画を撮ることになったのは、いろいろ大変な目にあった末の一大決心だったんです(後述)。


なつみは、みんなががんばってるのに1人でネガティブになっている自分が悪いと分かっていた。


だから、改めてヒロトとヒデキの撮影を手伝うことにしたんです(53日目なつみちゃんのムダなこと」)。

撮影はラストシーン。ヒロトとヒデキがゾンビから走って逃げるシーン。なつみは自転車で先導して激走シーンを撮ることに。

雨が降る中、撮影がスタート。雨に濡れての激走になったが、雨雲の中から陽光がさしこみ雨粒がキラキラ光るのが見える。

なつみは目の前の美しい光景に、ムダだと思ってることにこそ、意味があるんじゃないかと思った。

見開きで描かれた光る雨粒のシーン。迷路で立ち往生するなつみを、雨粒が輝いて導いているようでめっちゃ印象的です。

吹っ切れたなつみは、〝漫画のために〟ちょっと漫画から離れてムダなことをしてみよう。そう決心したんです。


3.「ひらやすみ」のタイトルの意味が示す生きづらさとの葛藤





★著者のアクシデントから生まれた漫画


作品タイトル「ひらやすみ」には「平屋に住む」や、「ひら」の意味である「ひたすら休む」というニュアンスがあるようです。


この作品は著者の真造さんが遭遇したアクシデントから誕生しているからです。


真造さんは当時33歳だった2020年4月、血液のがんである「悪性リンパ腫」の治療のため執筆活動を中断。


11月に寛解となりましたが、治療のための入院期間中にネームを描いたのが「ひらやすみ」だったんです。


真造さんは2023年4月に「Yahoo!ニュース」のインタビュー記事に登場。


「必死でやらなきゃ売れない」呪縛があったー33歳でがんになった漫画家・真造圭伍の休み方』によると、

「がんだって分かった瞬間は…まあ、がーんですね(笑)。一瞬、目の前が暗くなる感じがやっぱりありましたね」

「(入院中は)一人になれて、いろいろ自分をみつめられました」

「その頃、仕事がうまくいっていなくて」「新しい何かが見えるんじゃないかと、がんになって最初に思いました」

「感じたのが普通に生きることのありがたさ」「普通に過ごすってめちゃくちゃ幸せなんだということを描きたかった」

真造さんの思いが結実したのが「ひらやすみ」だったワケです。

「(入院前は)必死でやらなきゃ売れないみたいな呪縛があった」

「(今は)徹夜はしなくなりました……意図的に休みを入れるようにもなりました」

現在の真造さんは、「がんばること」と「休むこと」の両立を実践しているそう。

「がんばる時はがんばるし、できない時はできないっていうぐらいでいいんじゃないかな」

真造さんのそんな思いは、「ひらやすみ」のキャラたちが生きづらい世の中で葛藤するストーリーに反映されているんです。

★追い込まれていく親友


ヒロトの親友・ヒデキ。2人は高校時代からの付き合い。高校の映画部ではヒロトが俳優、ヒデキが監督として映画を撮っていました。


今は1児の父で、都内の家具店に勤務。ヒロトの前ではちょっとすかしているけど、基本的に友人思いのいいヤツです。


でも生後間もない赤ちゃんの世話や、仕事場での上司のパワハラ精神的に病んでしまうんです。


36日目青春と田んぼ」、37日目肉まんはあの頃の味」と42日目またね青春」では心労で危うい親友の姿が描かれています。

ヒデキは夜に赤ちゃんにミルクをあげたり、子育てで疲れている奥さんのために家事をお手伝い。疲労がピークに達していた。

職場では年下の上司にパワハラを受けている。それでも「頑張れオレ!」「オレには守るモノがあるんだ…」。

ヒロトから笑顔で花見を楽しむ写真がLINEで送られ「なんで怠けるお前のほうが幸せそうなんだよ」とブロックしてしまう。

直感でヒデキが心を病んでいると悟ったヒロトは、親友の勤務先へ走り出します。

ヒロト自身が役者時代に心を病み、ヒデキの「オレはお前が俳優とか関係なく大事」という言葉に救われたからなんです。

職場のヒデキはフラフラしていて「いらっしゃいませ…」とつぶやいているが、ヒロトには「オレは大丈夫」と笑顔をみせる。

でもパワハラは激しくなり上司からの電話すら恐ろしい。「自分みたいな役立たずが生きててすみません…」。

ある日の夕暮れ、ヒデキはフラッと釣り堀に立ち寄り、ヒロトと釣り糸をたれます。

ヒデキのスマホに上司から着信が入る。ブルブル震えるヒデキからスマホを取り上げると、ヒロトは釣り堀の中へ投げ込む。

「何すんだ!」と怒るヒデキに、ヒロトは「もういいって。頑張んなくていいんだよ!」。2人は釣り堀の中へどぼーん。

高校時代そのままのヒロトの笑顔にヒデキは救われ、職場を辞めた。

がんばろうと踏ん張るあまり、心を病んでいく。

ワタシも仕事がうまくいかず、上司と合わなくて自分が不要な存在で「死んだら楽になれるかな」と思ったことがありました。


でもね、死ぬくらいならがんばらなくていい。仕事なんて辞めちゃえばいい。ゆっくり休んで次の道を探せばいい。


だから真造さんが「がんばること」と「休むこと」を両立していることに、メチャ共感したんです。


ホント、生きてナンボなんですよ




★本当にやりたいことを見つける


実はヒロト自身もがんばりすぎてエラい目に遭っていました


はなえばあちゃんの時から使っていた、平屋の給湯器が故障お風呂がわかせなくなっちゃったんです。


修理できず取り替えになり、15万〜20万円の費用が必要でバイトを急増。


ヒロトはまじめな性格。バイト先でがんばりすぎて疲労が蓄積してしまって…。


なつみからも、いつもののんびり屋のヒロトらしくないと心配された矢先にぶっ倒れたんです。


失神して搬送された病院のベッドでヒロトは、はなえばあちゃんの夢を見ます(44日目ばーちゃんの挑戦」)。

ばあちゃんは年をとったので、新しいことをやるのがおっくうだった。

でもヒロトに乗せてもらったバイクの爽快感を知り「何かをするのに、手遅れなんてないのかもね」と考えを改めた。

ある日、ばあちゃんは街のブティックできれいなワンピースを発見。でも「こんなヨボヨボに似合うわけない」。

それでも意を決してワンピースを購入。何十年ぶりに感じる新しい服のニオイに心がわき立ち、指を鳴らして踊り出す。

外の窓からのぞいていたヒロトは、ばあちゃんの楽しそうな姿を見てうれしくなった。

生前のばあちゃんが新しいことに挑戦していた思い出が、夢の中でよみがえったんです。そして45日目リスタート」。

退院したヒロトは、なつみと区民センターの屋上へ。敷かれている芝生に寝転び、青い空を見上げます(この風景も秀逸!)。

ヒロトはばあちゃんの遺影に「オレ決めたよ。今年中に本当にやりたいこと、見つけるね」。

「本当にやりたいこと」の第一歩が、ヒデキと撮ったゾンビ映画なんです。

なつみに映画を撮る意味を問われた時、ヒロトはこう説明します。

「オレは役者に戻りたいわけじゃないんだ」「自分の中にしこりがあるからやってるんだ…」

俳優を諦めてモラトリアムのフリーターとなったヒロトですが、入院というアクシデントが自分を見つめる機会になった。

そして新しい何かを見つけるために、心の奥に残っている役者・ヒロトへの踏ん切りをつけることを決心した。

真造さんが療養中に至った心境が見事に反映された、素敵なエピソードです。


まとめ・気になる美女「立花よもぎ」との恋の進展にも注目





ここまで「ひらやすみ」という作品について紹介&解説してきました。


そして多くの漫画家さんやタレントさんが絶賛する「ひらやすみ」に心が癒される魅力として、


  1. 無言なのに〝思い〟がジ〜ンと伝わる登場キャラクターの表情
  2. 見開きで展開する風景が登場キャラの心象風景となっている
  3. 「ひらやすみ」のタイトルの意味が示す生きづらさとの葛藤

上記の3つの魅力について紹介&解説してきました。


「ひらやすみ」は、都内の平屋で暮らすワタシたちのような普通の人たちの物語。激動のストーリー展開などはありません。


でも日々の出来事や友人らとの交流で揺れる心や、きれいな空や心なごむ虫の声など、普通の日常をていねいに描いています。


それだけに作品を読むとしみじみとして、心がほっこりしてくるんです。だから、


心が癒される漫画が読みたいんだけど、何かほっこりする作品はないかなあ?」なんて作品を探す人にぴったり。


そして、この記事を読んで「ひらやすみ」が秘めている魅力多くの漫画家さんやタレントさんが絶賛する理由がよく分かったと思います。だから、


たくさんの漫画家さんやお笑い芸人さんが推しているけど、理由は何なの?


レビューですごく評判がいいけど、どんな魅力があるの?


なんて、まだ作品を読んでいない人にもオススメしたい作品です。


この記事を踏まえて作品を読めば、「ひらやすみ」の世界観にほっこりハマって続きが読みたくなりますよ。


最後に紹介したいのが、ヒロインキャラ立花よもぎヒロトとなつみが住む平屋の管理をしている不動産屋のOLさんです。


詳しくは作品を読んでほしいんですが、出会いからヒロトとはいろいろあって…。


でも互いのことを知っていくうちに、相手への印象も変わっていって…。2人の間の進展も今後の読みどころの1つです。


ぜひ「ひらやすみ」を手に取って読んでみてください。


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