「信長を殺した男〜日輪のデマルカシオン〜」太閤・秀吉の闇と謎がエグすぎる3つのエピソード

2025年4月22日火曜日

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光輝く天下人・秀吉の謎と闇に迫る

「三英傑」豊臣秀吉を最新の資料や新説&異説を駆使して描く


戦国三英傑」の1人で、日本史ファンの間で人気の高い、豊臣秀吉


戦国時代末の武将で天下を統一、武士としては初めて朝廷で関白後に太閤)となった人物です。


小説や映画などでは「三英傑」である織田信長徳川家康と比べて、陽気明るくて人たらし」のイメージで描かれています。


ただ出生素性などでが多く、多大な犠牲を出した「朝鮮出兵唐入り)」を強行するなど、闇深い人物でもあります。それだけに、


貧しい階級の出身とか天皇のご落胤とかいろいろ謎が多いけど、ホントのところはどうなの?


秀吉はなんで、無謀で犠牲者がたくさん出た朝鮮出兵を行ったの⁉︎


なんて声がたくさんあるんです。


そんな疑問に答えてくれて最新の資料や新説&異説を楽しめる漫画があります。


信長を殺した男〜日輪のデマルカシオン〜」。原案は作家・明智憲三郎さん、作画が藤堂裕さんの作品です。


これまで〝陽気〟なイメージが強い秀吉の〝闇と謎に焦点をあてている人気作で、


ストーリーでは秀吉の謎や闇が深いって聞いて、メチャ興味がある」という人がたくさんいます。


この記事では作品の特徴や、ストーリーで描かれている秀吉の謎と闇がエグすぎるエピソードについて、


  1. あまりにも悲惨すぎる「6本指の貧民の子」の出生
  2. 秀吉の怨念が生んだ「朝鮮出兵」と「世界領土分割支配」思想
  3. 茶人・千利休の「切腹事件」など歴史上の謎の〝真相と新説〟

上記の3つのエピソードを紹介&解説します。


この記事を読めば、作品中で描かれている秀吉の生い立ちや朝鮮出兵などにまつわる謎と闇が分かります


さらには作品を手にしてページを開きたくなりますよ。


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豊臣秀吉と「信長を殺した男〜日輪のデマルカシオン〜」について


秀吉は人臣では最高位の関白を務めた

★貧しい身分から大出世した「日輪の子」


豊臣秀吉といえば、日本人なら知らない人がいない歴史上の偉人。


2026年にはNHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」がスタートするなど日本人ならおなじみで、今さら説明はいらないと思います。


でも、「信長を殺した男〜日輪のデマルカシオン〜」がどんな作品かを知るためにも、有力な通説で秀吉をざっとおさらいしてみます。


1537(天文6)年、尾張国(今の愛知県)中村郷で生誕。父は足軽・木下弥右衛門、母はなか(仲、後の大政所)。


少年時代に武士になるため中村郷を飛び出し、各地で針売り武家奉公などをしながら放浪。


1554年ごろから尾張の織田信長に小者として奉公。草履取りや足軽として仕え、次第に頭角を表す。


敵対する武将の家臣を寝返らせる調略などを駆使。美濃(今の岐阜県)の斎藤氏攻めでは墨俣に一夜城を築くなど功績をあげる。


信長が足利将軍を擁立し上洛するころには、織田家の重臣として台頭。信長の天下布武の覇業では中国方面の司令官として活躍。


信長が重臣の明智光秀に倒される1582(天正10)年の本能寺の変の直後、中国からの大返しで光秀に勝利。


柴田勝家らの重臣を退けて織田家のトップに立つと、三河の徳川家康ら有力大名をけん制しつつ朝廷に接近。


1585年に関白、1586年には太政大臣に就任し豊臣政権を確立。九州や関東、奥州を制圧し天下を統一。


京や大坂(現在は大阪)で天下人(てんかびと)として君臨する一方で、中国・明の征服を狙った「唐入り」を実行。


朝鮮半島に攻め込み「文禄・慶長の役」といわれる2度の侵略戦争を起こしたが、明と朝鮮連合軍に敗北し、撤退(秀吉の死後)。


豊臣家の後継者に不安を抱えたまま、1598(慶長3)年、京の伏見城で病没享年62。ざっとこんな感じです。


戦闘では水攻め兵糧攻めなどで相手を籠城させて降伏させ、味方の損害を減らしたり。調略で有力武将を自分の配下に収めたり。


一般開放した「醍醐の花見」などのイベントを開催するなど、明るく陽気な「人たらし」という「」のイメージが強い人物です。


★秀吉の闇を徹底して描く


光輝くような天下人・秀吉の闇と謎に焦点をあてているのが、この記事で紹介する「信長を殺した男〜日輪のデマルカシオン〜」です。


別冊ヤングチャンピオン」2021年3月号から連載がスタート。コミックスは計7巻が発売中(2025年4月時点)。


作画は藤堂裕さん、原案が作家の明智憲三郎さんのコンビです。


原案の明智さんは、信長を本能寺で倒した明智光秀の子孫とされています


ご先祖の光秀が起こした本能寺の変の〝真実〟に、最新資料や考察で迫った「本能寺の変四二七年目の真実」はベストセラーに。


さらに続編の「本能寺の変431年目の真実」は藤堂さんとのコンビでコミカライズされ、人気を博しました。


こちらの作品については当ブログでも紹介していますので、ぜひご覧ください。


「日本史マンガ」本能寺の変、謙信女性説、家康影武者説…異説、新説、伝説が楽しめる名作3選


そして「〜日輪のデマルカシオン〜」は、スポットを秀吉にあてた続編になります。


こちらの作品でも最新の資料と新説&異説を駆使して、これまでとは違う秀吉像を描いていますが、これがめっちゃエグい!


秀吉はご先祖・光秀のカタキだけに、子孫だという明智さんは厳しく描いてるんじゃないの⁉︎ なんて思っちゃうほど。


でも、さまざまな資料や新説&異説を紹介しながら展開するエピソードはめっちゃ説得力があって面白いんです。


次項からは、エグすぎるエピソードを1つずつ紹介&解説していきます。


1.あまりにも悲惨すぎる「6本指の貧民の子」の出生



★「貧民の子」と「天皇のご落胤」


前述しましたが、秀吉は尾張・中村郷の貧しい階級の出身ーというのが通説。ところが通説にも諸説があるんです。


まずは秀吉の両親。母のなか(仲)は後の「大政所」として史実上の人物。通説では美濃の鍛冶の娘とされています。


ただ本当に「なか」と呼ばれていたかは不明だとか。


父親の木下弥右衛門は足軽、農民、大工などの技術者漂流の民ともいわれ、史実で確認できない。実在すら怪しい人物。


さらに母・なかの再婚相手とされる竹阿弥(ちくあみ)は、信長の同朋衆(芸能や雑務の担当)といわれています。


一説では竹阿弥こそが秀吉の実父で、弥右衛門と竹阿弥は同一人物だとする説も。要するに、父親ははっきりしないんです。


一方、秀吉が天皇のご落胤(落としだね)という説もあります。


母のなかの父親は「萩の中納言」と呼ばれる公家で、その縁でなかが宮中で仕えていた際に天皇のお手つきになった。


その後に秀吉が生まれたとされる「ご落胤」説です。天下をとった後の秀吉自身も明かしているとされています。


ただ、これは当時の秀吉が関白職への就任のためアピール中で、そのアピールの一環で「ご落胤」説をつくりあげたとされています。


要するに、秀吉は尾張・中村郷に住む、名前や素性もはっきりしない下層階級の子どもだったーというワケです。


★ひどい差別を受ける貧民の子


「〜日輪のデマルカシオン〜」では、秀吉の出自を尾張・中村郷で暮らす「貧民の子」として描いています。


第7話出生」は強烈なエピソード。秀吉の出自について紹介しています。


周囲の農民から差別を受ける「最下層」の人として、その描写がめっちゃエグくて…。

秀吉は天文6年2月に誕生。出生直後に「忌み子」として間引かれそうになったが、母・なかが思いとどまって育てる。

なかは秀吉以外にも、父親が分からない子どもを多く生んでいた。貧しさから身を売ることもしていた。

なかが身を寄せた秀吉の継父・弥右衛門は貧しい小作人兼足軽。性格は荒れていて、なかや子どもたちを虐待していた。

通説では「貧しい農民一家」のイメージがあります。でも作品では、秀吉一家は食うや食わずの「最下層」。

幼いころから小作の手伝いや草鞋、薪売り、さらにはいくさで亡くなった人から金品をあさったり。


生きるためには何でもやらなきゃいけない身分。秀吉の容姿はガリガリで猿にも似ていた。だからいじめられて…。

ある日、小作人の仁王に「猿のまねをしてみろ」と命じられ、拒むと「卑賎の分際で口答えするな!」。

秀吉が泣く泣く猿のまねをすると、仁王は「全裸で猿のまねをしろ」「売◯の忌み子!」とどうかつする。

やがて継父の弥右衛門が戦場で負った傷が元で死亡。なかに遺体を埋めてこいと命じられるんです。

兄弟で穴を掘って遺体を埋め終わった後、秀吉の独白が胸に刺さります。

このみじめな骸(むくろ)は将来の俺たちの姿だ…。

這い上がりてぇ、この貧困から…。この境遇から…。この地獄から…。

どんなに卑怯で汚い手を使ってでも這い上がってやる!

たとえこの身が醜い化け物になろうとも…。

「いじめはダメ」「差別はいけない」なんてコンプライアンスは存在しない、非情な戦国時代。

人は差別をする」という怒り恨み、「抗わなければ喰われる」という恐怖感


救いの手も存在しない境遇で生まれた怨念ともいえる思いが、後の「太閤・秀吉」の原動力になる。


そう描かれているけどあまりにもエグくて、すさまじいエピソードなんです。


秀吉の右手は6本指だったという伝承があります

★秀吉の「6本指説」


秀吉には「右手の指が6本あった」という「6本指説」があります。


秀吉は生まれつき、右手の親指が2本あったという説で、作品でも「6本指説」をストーリー設定に組み込んでいます。


前述の「出生」では秀吉の誕生直後に、母親が「6本指」に気づき「忌み子」(望まれず生まれた子)として扱うシーンが描かれています。


この秀吉の「6本指」説、歴史資料的にも記述が多く信憑性があるようです。


ポルトガルの宣教師、ルイス・フロイスが著書「大日本史」で「6本の指があった」と記しています。


秀吉の同僚だった武将・前田利家の回顧録「国祖遺言」でも、「6本指があり信長から六つめとあだ名された」と記述されています。


「6本指」は医学的に「多指症」と呼ばれ、手の場合は親指が1本多いケースが多数あるそうです。


歴史資料では、秀吉は天下を取るまで「6本指」を隠すことはなく、天下人になってから記録から〝事実〟を抹消したとされています。


作品では誕生直後から「6本指」として描かれ、成長後は2本の親指を布でぐるぐる巻きにしている姿になっています。


一方で「親指を切り落とした」という資料もあって、朝鮮の儒学者が残した「看羊録」には成長した秀吉が切断したとされています。


作品では右手に手袋をして切断を隠している姿が描かれています。


さらに前作「本能寺の変431年目の真実」では、柴田ら織田家重臣とのいさかいで秀吉自ら親指を切り落とすシーンがあります。


「6本指」説については、藤堂&明智コンビは「切断説」をとっているんです。


2.秀吉の怨念が生んだ「朝鮮出兵」と「世界領土分割支配」思想



★信長の構想にあったとされる「朝鮮出兵」


織田家中の柴田勝家ら、ライバルを制して天下統一を果たした秀吉。


天下人となったことを「光の事績」とすれば、「闇の事績」といっていいのが「朝鮮出兵」です。


いわゆる1592(天文20)年に実施した「文禄の役」、1597(慶長2)年に実行した「慶長の役」。


中国・明を征服する「唐入り」が目的で、さらには呂宋(フィリピン)や天竺(インド)まで侵略しようという構想です。


その入り口となった朝鮮に総勢約16万人で攻め入り、朝鮮・明の連合軍と激突。双方の犠牲者は5万人超ともいわれています。


日本側は、海を隔てた土地勘のない異国で兵の食料補給ルート(兵站)を遮断され、相手の反撃や抵抗に苦戦。


戦死者もさることながら、日本側は飢えと疫病による犠牲者の数がハンパじゃなかったそうです。


後世にまで「無謀すぎる」「征服できるという妄想に支配されていた」と酷評される「朝鮮出兵」を、秀吉はなぜ実行したのか?


これも歴史上の謎、闇の1つで、実行した理由にも諸説があるんです。


ざっと紹介すると、後継者の息子・鶴松の死去でのうっぷん説。秀吉自身の征服欲説 etc。


ワタシ的に有力だと思っているのが「余剰兵員の処分説」。当時は天下を統一し戦国乱世が終わり、安定期に入った時代。


戦闘の担い手である武士は、今でいう「余剰人員」です。国内には、そんな武士たちを食わせる土地や余裕もない状態。


だから「余剰人員」を移す目的で、中国大陸に目を向けたーという説です。


この説には、天下統一目前だった信長も構想していたという説があり、秀吉も主君の考えを察していたのでは?というワケ。


作品の原案者である明智さんもこの説を支持しています。さらに自身の考察と資料も使って独自の説を展開しているんです。


★西欧に対抗する「日輪のデマルカシオン」


秀吉の構想は、朝鮮半島を入り口に大陸の明を征服。さらにフィリピン、インドなどをも制しようというもの。


まさに東アジアを自らの支配下に入れるという構想だとされています。


島国の日本から海を隔てる広大な東アジアを支配する。マジで誇大妄想狂気のさたと思ってしまいます。


主君・信長でさえできなかった天下統一を果たしただけに、今でいう〝無敵・無双感〟があったのかもしれません。


でも、そんな秀吉が脅威に感じていた存在があったんです。それは西欧列強国。特にスペインです。


英国との「アルマダの戦い」で敗れるまで、スペインは「無敵艦隊」と呼ばれる強力な海軍を駆使して東アジアに進出。


隣国でやはり海運国家といえるポルトガルとともに、植民地を増やしていました。


そして両国が結んでいたのが「トルデシリャス条約」。1494年に結ばれた両国で世界を分割支配するという、おそるべき条約。


この条約の別名が「デマルカシオン」(分割)。この作品のタイトルにもなっているんです。


第6話天正遣欧少年使節」では、秀吉が「朝鮮出兵」を実行した理由が両国の「デマルカシオン」にあるとしているんです。

秀吉は会見した宣教師ら西欧人たちの口ぶりや表情から、悪意を感じ取っていた。

「危険じゃ…、西欧(やつら)に喰われる前に喰わねば ‼︎」

秀吉はキリスト教の禁止と宣教師を追い出す「バテレン追法令」を出すとともに、スペイン領フィリピン総督に手紙を送っています。

作品では、フィリピン総督あての書簡の内容も紹介しています。

明を攻めれば呂宋も非常に近く、すべてが予の親指の下にある。

我々は永遠に仲良く交易しようではないか。このことをスペイン王国に書き送れ。

スペイン国王よ、遠いところに居るからといって、予の言葉を甘く見るなよ。

書簡では、秀吉が当時のスペイン国王だったフェリペ2世に「甘くみるなよ」と脅しているのが、スゴい。

要するに秀吉は東アジアの基点になる明を征服し、押し寄せる西欧に対抗しようとしていた。


西の欧州と東の日本(豊臣政権)で、世界を分割統治しようとしていた。


そのためには東アジアを制することが必要で、これが「朝鮮出兵」を実行した理由だと説明しているんです。


これって、実際に秀吉の書簡が歴史資料として残っているのがスゴいと思います。


まさに「日輪(秀吉)のデマルカシオン」。ものすごく信ぴょう性がある説だと思うんです。


京都の伏見桃山城。創建者は秀吉です

★怨念が生んだ「デマルカシオン」


秀吉の「朝鮮出兵」は、西欧と対抗するためだったー。


作品中でこの説を展開する明智さん&藤堂さんコンビですが、秀吉が西欧との対決を決意するに至ったきっかけも紹介してるんです。


同じく第6話「天正遣欧少年使節」で、宣教師コエリョが秀吉に西欧の高速戦闘艇や大砲の威力をみせつけるシーンがあります。


秀吉とともに見せつけられた「西欧の力」に、同席した武将・小西行長は感心しきり。

秀吉は「戯(たわ)け… ‼︎ あの〝差別〟に満ち満ちた眼に何故気づかぬ」。

「コエリョめ、予はだまされぬぞ…… ‼︎」

表面はにこやかなコエリョの笑顔に、秀吉はアジア人蔑視の悪意を感じ取ったワケです。

前述した通り、秀吉は幼少期に「6本指の貧民の子」といじめにあっていました。


秀吉には「差別のない世をつくりたい」という思いがあり、さらには「抗わなければ喰われる」。


この思いが、幼少のころから天下統一を果たすまでの秀吉の原動力でした。


少年時代に味わった差別への憎しみや怨念が、日本にやってくる西欧の危うさを感知させる。


そして西欧への対抗として「朝鮮出兵」に至ったーというワケです。


作品では、そんな秀吉が自分の怨念に飲み込まれて怪物になっていく過程を描いています。


中国の神話に登場する饕餮(とうてつ)。財産や財宝、食べ物など何でもむさぼる妖獣です。


作品では秀吉の心の奥底に、この妖獣がひそんでいる。


当初は「差別のない世をつくる」「西欧に対抗する」という思いからの行動が、どん欲な饕餮によってゆがめられる。


「朝鮮出兵」で日本兵や朝鮮の人々が苦しんでいるのに、秀吉の中の妖獣は自身の欲望を満足させようと戦闘を続け犠牲者を増やしていく


この秀吉の闇の描き方が、めっちゃ秀逸なんです。


3.茶人・千利休の「切腹事件」など歴史上の謎の〝真相と新説〟



★千利休切腹事件


「朝鮮出兵」以外にも秀吉は、その真意=理由が分からない歴史上の謎=事件を残しています。


その1つが「千利休切腹事件」です。


千利休といえば茶道の祖。「わび茶」を完成させた偉人。信長を始め多くの武将に茶を教え、政治的影響力があったといわれています。


商家の生まれで商才もある。豊臣政権では秀吉の側近として仕え、政治参謀的なポジションにいました。


でも、やはり側近で秀吉の実弟だった豊臣秀長が病没。利休は大事な側近だったにも関わらず、突然秀吉に切腹を命じられたんです。


その理由が分からず歴史上の謎となっていて、諸説あるんです。


例えば、大徳寺の楼門の上に雪駄履きの自身の像を設置し、その下を秀吉に歩かせたため、秀吉の怒りを買ったという説。


また、秀吉が進めていた「朝鮮出兵」をいさめたことで怒りを買ったという説。


第22話利休切腹事件」では、当時の状況について、豊臣政権の重鎮・秀長が亡くなり、石田三成ら官僚の「奉行衆」が台頭しつつあったと説明。


奉行衆が利休の〝悪事〟をデッチ上げて秀吉に刺したという「政争説」を展開しています。


その結果、利休は秀吉に切腹を命じられ最後を遂げるんですが、その利休の〝最後〟についても〝新説〟を紹介しています。


これも歴史資料を駆使して説明されていてメチャ面白い。くわしくは、ぜひ作品をご覧ください。


★関白・秀次切腹事件と秀頼の出生


そして、もう1つが関白豊臣秀次の「切腹事件」です。


秀吉のおいで、豊臣家では秀吉に次ぐ2番手である「関白」として政権トップの座にいた秀次。


秀吉の息子・(ひろい、後の秀頼)が成人して、豊臣家を継ぐまでの後見人としても期待されていました。


でも秀吉から「謀反」の嫌疑をかけられ、やはり切腹を命じられるんです。


「謀反」や「切腹」に至った理由は、これを説明する資料がなく歴史上の謎。そのため諸説があります。


ただ「拾」の誕生後から秀次は体調を崩し、一方で人に危害を加えるなどメンタル面でも変調をきたしています。


これは関白の座を「拾」に奪われてしまう、という強迫観念があったとされています。


第41話雨煙る吉野桜」ではさらに一歩踏み込んで、秀次の変調の原因を「拾」の出生にあるとしてストーリーを展開しています。


拾は本当に秀吉の子なのか?」。これは当時から令和の今に至るまでの歴史上の謎の1つ。


当時の秀吉は50代後半。「お年寄り」扱いされる年齢で、子をなす力を疑われていました。


そして秀吉は「朝鮮出兵」の指揮を執るため、肥前(現在の佐賀〜長崎県)・名護屋京阪間を往復している状況。


まさに多忙な中、秀吉の側室茶々(淀殿、二の丸殿)が懐妊しました。


でも秀吉の在阪時とされた懐妊の時期から逆算すると、実際の産み月がおかしい(遅い)。


重臣の大野治長はじめ「茶々はほかの男と密通した」など、当時から疑惑がささやかれていました。


作品では、秀吉はじめ一族が苦労して確立した豊臣政権を、素性の知らぬ子ども(拾)に奪われる。


豊臣家を守らなければ」という強迫観念が秀次を動かし、〝行動〟に出たのではないか? という説を展開しているんです。


「秀次の切腹」「拾の出生」と、いずれも歴史上の謎に関連性をもたせて描く手法は、めっちゃ説得力あり。


「拾の出生」について知りながら葛藤する、秀吉の心の闇の描き方も不気味で最高です。


大阪城は秀吉の栄華の象徴でした

★生き地獄の朝鮮で秀吉に背いた男


「〜日輪のデマルカシオン〜」では、日本史であまり紹介されない教えられない史実伝承を多数描いています。これが秀逸なんです。


「朝鮮出兵」時のエピソードである外伝沙也可」では、生き地獄と化した朝鮮の地で、秀吉に反旗を翻した武士を紹介しています。


前述した通り、「朝鮮出兵」では日本兵、朝鮮の人々などたくさんの犠牲者が出ました。


現地で戦っていた日本の武士たちの多くが、「このいくさに大義理由があるのか?」と葛藤していたそうです。


当時の朝鮮側が残した資料によると、実際に戦いを放棄して朝鮮側に投降した武士は1万人超いたそうです。


このエピソードで登場するのは、加藤清正の配下にあった雑賀(さいか)衆の部隊。


雑賀衆は紀伊(現在の和歌山県)が根拠地だった鉄砲傭兵軍団。敵対した信長に滅ぼされたけど、生き残りが清正の配下になっていました。


彼らは現地で捕虜にした一般の人々の処刑を命じられますが、指揮官に反抗して朝鮮側に投降するんです。


投降した武士たちは、朝鮮側に処刑されるケースが多かったそうです。


ただ救援に駆けつけた明側が説得し、投降した武士たちの戦闘力と技術を活用するように方針を転換。


朝鮮&明側は投降兵がもたらした戦術・戦略、武器などを研究し、これが戦局での反撃のきっかけになったそうです。


前述した雑賀衆の1人は「沙也可(さやか)」と呼ばれ、彼は朝鮮軍の一員として日本側と戦ったそうです。


それらの功績で朝鮮王から「金忠善」という朝鮮名をもらい、現地で骨を埋めたという伝承が残っているそうです。


こうした史実は知る機会が少ないだけに、作品を読んでいてスゴく心に刺さりました。


このほかにも、日本史ではなかなか紹介されないエピソードがたくさん披露されているので、ぜひ作品をご覧ください。


まとめ・秀吉のエグすぎる謎と闇のエピソードを楽しもう


謎が多い秀吉のエピソードを楽しもう

ここまで「信長を殺した男〜日輪のデマルカシオン〜」について紹介してきました。


そして作品の特徴や、ストーリーで描かれている秀吉の謎と闇がエグすぎるエピソードについて、


  1. あまりにも悲惨すぎる「6本指の貧民の子」の出生
  2. 秀吉の怨念が生んだ「朝鮮出兵」と「世界領土分割支配」思想
  3. 茶人・千利休の「切腹事件」など歴史上の謎の〝真相と新説〟

上記の3つのエピソードを紹介&解説してきました。


この記事を読んで、作品中で描かれている秀吉の生い立ちや朝鮮出兵などにまつわる謎と闇が分かったと思います。


豊臣秀吉は貧しい階級から身を起こして戦国時代に天下を統一、武士としては初めて朝廷で関白(後に太閤)となった人物。


織田信長、徳川家康と並ぶ「三英傑」で、陽気で明るくて「人たらし」のイメージ。


一方で出生や素性など謎が多く、多大な犠牲を出した「朝鮮出兵」を実行するなど闇深い人物でもあります。


そんな秀吉の謎と闇に焦点をあてて、最新の資料や新説&異説を紹介しているのが、この作品です。それだけに、


貧しい階層の出身とか天皇のご落胤とかいろいろ謎が多いけど、ホントのところはどうなの?


秀吉はなんで、無謀で犠牲者がたくさん出た朝鮮出兵を行ったの⁉︎


ストーリーでは秀吉の謎や闇が深いって聞いて、メチャ興味がある


なんて方にはピッタリで、ぜひ読んでいただきたい作品です。


光輝く天下人・秀吉の謎と闇を描くストーリー、めっちゃ秀逸ですよ!


当ブログでは、ほかにも面白い歴史漫画を紹介しています。ぜひご覧ください。


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