妖怪ハンター 日本史が好きになる伝奇マンガの厳選エピソード

2021年5月25日火曜日

マンガを楽しむ

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恐ろしいストーリーには歴史が好きになる魅力にあふれている

歴史が苦手な中高生に読んでほしい 


大学受験生中高生の方で、日本史を選択している人はとても多いと思います。

歴史は興味や関心さえあれば、楽しく勉強できます。

でも、苦手な人からは「教科書を読んでも頭に入ってこない…」なんて、そう悩む声をよく聞きます。 じゃあ、どうすればいいか?

日本史の勉強に苦戦している人におススメなのは、日本が誇る伝奇マンガ家、諸星大二郎さんの代表作「妖怪ハンター」。

諸星さんが歴史、考古学、民俗学、異形のモノの深い造詣、考察力を駆使して描いたストーリーは、トリコになる迫力と説得力があります。

しかも、この作品は古事記日本書紀の記紀や風土記、史実などの知識がふんだんに盛り込まれている。

エピソードを楽しく読み進めるだけで知識が吸収できるんです。

私は小学生のころ、作品の魅力にハマり、日本史が好きになって得意になりました。

日本史を勉強する上で最も大切なのは、興味を持つこと、そして好きになること。

この2点を「妖怪ハンター」がアシストしてくれるんです。この記事では、この作品の中でも歴史が好きになる、

  1. 海竜祭の夜
  2. 生命の木
  3. 赤い唇

厳選3エピソードを解説します。

この記事をお読みになれば、「歴史が苦手で…」と困っている人は、絶対に諸星ワールドにハマり、歴史が大好きになりますよ。

妖怪ハンターとは


まずは作品を楽しむための基礎知識から。

1974年に「週刊少年ジャンプ」で連載スタート。

花坂爺瓜子姫などの伝説や、古事記、日本書紀などのエピソードを題材にした事件を、考古学界で異端視され「妖怪ハンター」とあだ名される学者、稗田礼次郎が解決する伝奇物語。

「妖怪ハンター」シリーズは、特に厳選されたエピソードが収録された文庫版がおススメ。

」の巻、「」の巻、「」の巻と、3冊が刊行されています。

諸星先生は2021年12月時点で御年72歳、バリバリの現役作家です。

妖怪ハンターシリーズは、不定期ですが現在も「ウルトラジャンプ」で掲載中なんです。

作品に流れているテーマは、伝説や記紀のエピソードは決して作り話ではなく、モデルになった事実がある。

そして、現代にもその証拠が残っており、奇怪な現象、謎が発生しているーというもの。

災いをもたらす河童禍津神(まがつかみ)など、異形のモノがたくさん登場します。

そんな奇怪な事件や現象を、稗田氏がフィールドワークを通し、自身の学説と推理を駆使して解明していきます。

クトゥルー神話に通じる面白さ


この世には、いにしえの頃から異形のモノが存在し、人間社会に影響を及ぼし続けているというコンセプトでもあります。

これは米国の怪奇小説家ラブクラフトクトゥルー神話に通じるものがあり、今読んでも新鮮さと怖さと不思議さが楽しめます。

異形のモノがたくさん登場します

1.海竜祭の夜

最初に紹介したいのが、「」の巻に収録されている「海竜祭の夜」です。

大学の教え子から、昔から風変わりな祭りが続いている島があると聞いた稗田氏は、「加美島」を訪ねます。

ストーリーはここからスタート。

その祭りは旧暦の3月24日に行われ「海竜祭」と呼ばれている。

島には平家の落人伝説があり、「安徳神社」が存在する。

村の言い伝えによると、「海竜」は深夜に岬の突端に上陸し、その岬に設けられた鳥居に奉納された魚を食べて帰る。

稗田氏は島中を調査。島の伝説の核心に迫ります。

祭りは琵琶法師による平家物語の音曲と、神主による祝詞とともに始まるが、なぜ海竜の祭りに平家が絡んでくるのか。 

疑問に思った稗田氏は、村の古老から海竜が「あんとく様」だと聞き出す。

それが源平による壇ノ浦の戦いで、8歳ながら海中に没したとされる安徳天皇であることを知る。

岬に向かった稗田氏の前に海竜が現れ、その顔は幼い子供だった。

平家の落人伝説に彩られる四国


作品中では「加美島」がどこにあるのか触れていません。

稗田氏が船に乗って訪れたことを考えると、瀬戸内もしくは四国。高知県には「香実市」があります。

平家の落人の言い伝えは全国に存在しますが、特に四国は有名。

かずら橋がある徳島の祖谷渓は落人の里として知られ、壇ノ浦で入水したとされる安徳天皇も隠れ住んだという伝説があります。

私も祖谷渓を訪問したことがありますが、実に山深いところ。ここじゃなければ源氏の追手から逃れることはできないなと納得したほど。

稗田氏は、「海竜祭」は安徳天皇の鎮魂祭だったと推測します。あの隠れ里のような印象を考えると、その推測に賛同できました。

2.生命の木


」の巻に収録されている人気の高いエピソード。

2005年に阿部寛さんが主演し「奇談」のタイトルで映画化されました。

東北地方に存在したとされる隠れキリシタンがテーマ。

東北のある山奥に、「はなれ」と呼ばれる村があり、村人は古くから隠れキリシタンの末裔とされていた。

「はなれ」では、世界の始まりとイエスにまつわる「世界開始の科(とが)の御伝え」が伝えられていた。

だが、布教を進めるカトリックの神父にとっては、聖書の教えから変質した異教徒の祝詞に近かった。

フィールドワークで「はなれ」を訪れた稗田氏は、村の住人たちについて調査。奇怪な〝救済〟の現場を目撃します。

「はなれ」の人々は「生命の木」の禁断の果実を食べた「じゅすへる」(悪魔)の子孫だった。

そして、その科(とが)から「いんふぇるの」(地獄)に落ちる。

村人には「善ず」(イエス)役が存在して、彼らを救済して天国に昇天させる。この〝奇跡〟をずっと繰り返している。

稗田氏は、この〝奇跡〟を目の当たりにして考えます。

そして聖書の教えとは違う救世主による救済が、東北の山奥で続いているんだ、と。

隠れキリシタンの真実


戦国時代には、宣教師たちが東北にも訪れ、布教していた。この事実を、私はこの作品で知り、とても勉強になりました。

そして宣教師が離れた後、その教えに仏教や神道などが混入し、独特の信仰体系になったといわれています。

東北ではありませんが、私は九州・熊本の天草にある隠れキリシタンの資料館を訪れたことがあります。

そこでは、村人が実際に唱えていた祈りの言葉が音声で再現されていました。

まるで日本語とは思えない不可思議な言葉遣いと響きがあり、不気味さと不思議さで胸がいっぱいになりました。

ストーリーのコンセプトが、聖書から変質した信仰が実はキリスト教本来の教えで、「はなれ」では、それに則っている。

そう解釈すれば、天草で体験したことが、すごく腑に落ちるのです。

3.赤い唇


私が小学生のころに読んだ「妖怪ハンター」シリーズの中で、最も震え上がったのが「赤い唇」です。

やはり「」の巻に収録。

これは史実をネタにしたものではなく、稗田氏が民俗学的フィールドワークで遭遇した事件という設定になっています。

ある町の古いお寺。そこに安置されている仏像に封印された「赤い唇」が、女子中学生の唇に取りついた。

彼女の唇から発せられた言葉には誰もあらがえず、「死ね」と命じられれば校舎から飛び降りる。

不可解な「自殺」が多発し、町は不穏な空気に包まれる。

古寺の調査で町を訪れた稗田氏は、事件の存在を知り、寺に伝わる言い伝えをもとに調査をします。

稗田氏は古寺に安置されていた仏像の周囲を調べ、古文書を発見。

古文書を解読し、「赤い唇」が古い伝説に登場する「鬼女」を封じた「朱唇観音」から抜け出したものと判明。

稗田氏は、やはり古文書に記された「封じ」方を参考にして「赤い唇」を退治する。

中学生の口からポロリと外れた唇は、ヒクヒクとうごめいてニヤリ笑うと、シュウシュウと溶けていった…。

自分の仕事の原点に


小学生だった私には、実にうす気味の悪い話。オッサンになったいまでも鮮烈に記憶しているエピソードです。

でも、歴史家や考古学者は、こうして古い寺社や遺跡を取材しているんだ。そう知って、その仕事にすごく興味を覚えました。

私が就いた仕事は違いました。でも物ごとを取材して文章にするいまの仕事の原点となった、といえるのです。

総論・日本最高の伝奇マンガは歴史の参考書


今回は私の大好きな3エピソードを解説しました。

この妖怪ハンターシリーズには他にもたくさんの面白いエピソードがあふれています。

また、諸星先生には「暗黒神話」「マッドメン」「西遊妖猿伝」など多数の名作があります。

諸星さんの全作品は史実をベースに練り上げられていて、読むだけで学べる歴史の参考書です。

日本史が覚えられない」「どうしても苦手で…」と悩んでいる人は、「妖怪ハンター」シリーズを手に取ってください。

ストーリーにハマって、絶対に日本史が好きになります。気がつけば日本史が得意になっていますよ。

また、諸星先生のほかの作品の解説もしていますので、興味がある方はのぞいてください。


そして、今後も日本最高の伝奇マンガ作家の作品を紹介していきます。

「妖怪ハンターをすぐに読んでみたい!」という方は、スマホなどにダウンロードすれば、すぐに読める電子書籍版がオススメです。

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