孔雀、扇姉妹、晴明…古代史や神話がベースで魔物とのバトルがスゴい「退魔マンガ」3作品

2022年11月1日火曜日

マンガを楽しむ

t f B! P L
悪鬼や魔物はアナタのそばに…

神話や伝承の悪神&悪鬼と密教僧、陰陽師たちの戦いがヤバすぎる

街や家にあらわれて人々を苦しめる悪神怨霊魔物たち。

そして暴れまくる魔物たちを鎮め、祓(はら)う退魔師たち。


退魔師と魔物の戦いを描くダークファンタジーは、マンガでも超人気のジャンルです。


中でも古代の歴史や神話&伝説がベースで、密教や陰陽道などの退魔師たちが描かれている作品の注目度が高い。


ストーリーのおもしろさと、古代史や神話などの学説や退魔師の特徴がくわしく描かれていて好奇心をくすぐられるからです。だから、


密教や古来の神道などがベースで、バトル要素もある作品ってありますか?


古代史や伝説に興味があって、神話の神々や悪神をモチーフにしたマンガを探しています


仏教などの退魔師や陰陽師が活躍するオススメ作品を教えて!


そんな声がたくさんあるんです。


でも退魔師と悪神&魔物が戦うダークファンタジー作品はメチャ多い。どれもが力作・名作だから何を読むか選ぶのに困っちゃうほど。


この記事では悪神や魔物たちとのバトルがスゴくて、古代史や神話、密教や古来の神道、陰陽道の歴史などもくわしい退魔マンガ」をチョイス。


  1. 「孔雀王」(著者・荻野真さん)
  2. 「変幻退魔夜行 カルラ舞う!」(著者・永久保貴一さん)
  3. 「陰陽師」(原作・夢枕莫さん、作画・岡野玲子さん)

上記の3作品について紹介&解説します。いずれも力作・名作ばかり。


この記事を読めば厳選した理由がナットク&マンゾク作品のページを開きたくなりますよ

3作品をチョイスした理由

密教僧や陰陽師ら退魔師のマンガは人気ジャンル

悪神や魔物と戦う退魔師が主人公のマンガはたくさんあります。
どの作品もキャラクターが魅力的で、ストーリーもバツグン。読んでいてハラハラドキドキして楽しめます。 そんな数多い「退魔マンガ」の中から3作品をチョイスした理由は、

  1. 主人公ら登場する退魔師たちの設定が丁寧で巧み。密教や古来の神道、陰陽道の特徴もくわしく解説されていてわかりやすい。
  2. 登場する古代の神々や悪神が、古代史や神話・伝説に基づいて丁寧に描かれている。
  3. 著者の考察や独自に取材した情報も説明されていて勉強になる。

上記の3つの魅力と特徴が、たくさんある作品の中で際立っている。これが3作品を選んだ理由です。

ここからは1作品ずつ紹介&解説していきます。


1.「孔雀王」


著者は荻野真さん。「週刊ヤングジャンプ」で1985年から1989年まで連載。


コミックスは全17巻(文庫版は全11巻)が刊行されています。


当初は「孔雀退魔行」のタイトルで読み切り作品でした。人気が上がり連載化され、タイトルも「孔雀王」に変更。


連載の進行とともに読者の人気と支持を獲得。単行本の第1巻は、発売からわずか数時間で5万部が売り切れたほど。


週刊ヤングジャンプとしては初の集英社青年漫画賞に選出された作品。編集部の期待は高まって、続編もスタート。


1990年ー1992年まで「週刊ヤングジャンプ」で「孔雀王 退魔聖伝」(コミックス全11巻、文庫版全7巻)。


2006年ー2010年まで「週刊ヤングジャンプ」「月刊ヤングジャンプ」で「孔雀王 曲神紀」(コミックス全12巻)。


2012年ー2019年まで「月刊スピリッツ」で「孔雀王 ライジング」(コミックス全10巻)。


同時に2012年ー2019年まで「戦国武将列伝」「コミック乱」で「孔雀王ー戦国転生ー」(コミックス全5巻)。


合計5シリーズで「孔雀王」の驚異の世界が展開されています。


アニメ化もされて1988年から1991年にかけてOVA3作品が制作。


実写映画も1988年(主演・三上博史さん)、1990年(主演・阿部寛さん)と2作品が公開されました。


★登場人物とあらすじ


主人公は孔雀、本名は。仏教の真言宗(真言密教)総本山・高野山のお坊さん。


真言宗は弘法大師・空海が開祖。秘密の真言(各仏さまの呪文)を唱えることから密教(秘密仏教)と呼ばれています。


真言には悪鬼や悪神、化け物を退散させる法力(密法=呪力)がある。


ストーリーの設定では法力で人々を苦しめる魔物を払っているのが、高野山の密教僧たち。「裏高野」と呼ばれています。


孔雀は「裏高野」の1人。僧として禁欲生活を送っているので、退魔依頼で街にくるとステーキなどのごちそうやパフェを爆食い。


スケベ雑誌も大好きで鼻血を垂らしながら熟読。でも魔物と遭遇するとズバ抜けた力で撃退する密法の持ち主です。

密法で魔物を祓う裏高野の退魔師たち。中でも最強と呼ばれた孔雀は、自身の守護神「孔雀明王」の法力の持ち主。

孔雀は依頼を受けて害をなしている魔物と格闘。怨霊や妖怪、吸血鬼、悪魔を密法で祓う。

孔雀は魔物たちとの戦いの中で、闇の力で世の中を支配しようとしている謎の密法集団「六道衆」と遭遇。

六道衆との死闘を繰り広げる一方で、孔雀は自分の出生の秘密や自身の中に〝強大な力〟が存在することを知り…。

孔雀は守護神・孔雀明王の法力で、この世を覆い尽くそうとする六道衆の闇を吹き払うため奮闘します。

★真言密教の使い手「裏高野」


平安時代に弘法大師・空海が留学先の唐(中国)で修行し、日本に持ち帰った密教。当時は最先端の仏法、哲学・科学知識でもありました。


利益が得られて呪術要素もあるインドのバラモン教(ヒンズー教の前身)に影響を受け、真言を唱えれば願いが成就するという教え。


空海は当時では最新の治水土木なども勉強してきて帰国後に実践。「杖をついたら水が出て井戸を作った」などの伝説がある。


人々は空海の法力に驚いて「お大師さまスゲえ〜!」と尊敬を集めていました。


そんな空海が密教の総本山として開いたのが高野山。「孔雀王」では退魔部門の密教僧の組織「裏高野」が設定されています。


密教僧は修行を始めるにあたって、自分の守護尊(神・仏)を決める儀式「結縁灌頂(けちえんかんじょう)」にのぞみます。


たくさんの仏さまが描かれている灌頂壇の上に花を投げて、その花が落ちたところに鎮座する仏さまが守護尊になる。


裏高野の僧たちも儀式を行って、それぞれ仏さまと結縁。孔雀の守護尊は密教でも最強神とされる「孔雀明王」です。


★密教の最強神・孔雀明王


クジャクは毒ヘビ=魔を喰らう力がある

孔雀明王はもともとインドの女神さま。人々に利益を与える神さまです。


毒ヘビを食べちゃう強いクジャクが神格化。ヘビ=魔を喰らう、災厄を祓う力もある。


だから真言宗では、平安の昔から孔雀明王の呪法「孔雀経法」が国を守る(鎮護国家)力があると最重要視されているんです。


そんなスゴい神さまが守護尊の孔雀。彼自身もトンデモない力があるんです。


裏荒野の僧たちは修行を積み重ね、灌頂で結縁した仏さまの法力を身につけます。


守護尊の力を表す真言を唱え、指で真言を表す(印形)を結ぶ。同時に守護尊への祈りを捧げる。これを三密といいます。


三密がしっかりそろうと、僧たちはそれぞれの守護尊の法力が使える。


孔雀は守護尊の「孔雀明王呪」でためた気を魔物にぶつけて粉砕。「飛行呪」で空も飛んじゃう。


さらに孔雀明王以外の仏さまの力も使える。孔雀がよく使っているのが不動明王の法力。


不動明王は密教の最高仏・大日如来の化身。悪神・魔物に怒りの表情で立ち向かい、手にした剣や炎で滅ぼすと信仰を集めています。


ノウマク・サンマンダバザラダン・カン」。そんな真言(不動明王呪)を唱え印を結ぶと、吹き出した炎が魔物を焼き尽くす。


映画「男はつらいよ」で有名な葛飾・柴又の帝釈天の法力も使います。


帝釈天はインドの雷神「インドラ」。孔雀が帝釈天の真言「インドラヤソワカ」を唱えて印を結ぶと雷撃が発生。


密教の九字護身法もマスター。「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」の呪文で怨霊を撃滅します。


だから孔雀は密教でも高位者「阿闍梨(あじゃり)」に次ぐ力の持ち主として、裏高野では高評価の僧なんです。


★孔雀明王の生まれ変わり


孔雀は西洋の魔物も祓います。コミックス第2巻では姉弟の吸血鬼とバトルを展開。

孔雀は姉の吸血鬼に血を吸われて絶体絶命に。だが姉は体中を駆け巡る孔雀の血を制御できず、体が破裂。

さらに孔雀の体に宿る〝力〟が夜明け前の太陽を呼び、強烈な光で弟の吸血鬼を焼き尽くす。

弟の吸血鬼は「そんな力を持つのは、神か悪魔…」と言葉を残して消滅する…。

吸血鬼をビビらせる孔雀の力。守護尊・孔雀明王は守り神どころか孔雀の体内に宿ってるんです。

コミックス第4〜6巻では、孔雀明王の秘密が明かされます。

孔雀は六道衆の強敵・大聖歓喜天に苦戦。歓喜天の目的は伝説の大魔王「孔雀王」を復活させることだった。

孔雀は仲間とともに歓喜天を撃破。孔雀王が眠る地獄門に入るが何もなく、大魔王はすでに復活を遂げて去っていた。

孔雀王の行方を探る孔雀は、死人が蘇る事件に遭遇。「光翼教団」の教祖・倶魔羅が死人の国を作ろうと禁術を使っていた。

倶魔羅は凶星・黄幡星の精を受けて生まれ、災い封じのため消された子どもたちの魂の集合体。孔雀も凶星の子どもだった。

孔雀は倶魔羅と死闘を展開。戦いの中で、孔雀は自分の体の中に孔雀王が宿っていることに気づくんです…。

★孔雀明王の設定が知的好奇心を刺激する

キリスト教世界の大魔王ルシフェル

この世に復活した孔雀王。ストーリーでは黄幡星の子どもの体に宿り、その子どもが孔雀であることも明かされます。


この孔雀王。イラクのクルド民族のヤズィーディー教徒が信仰する「マラク・ターウース(孔雀大天使)」のこと。


この大天使は、神さまに反逆して地獄に落とされた堕天使とされています。ストーリーではこの伝説を採用。


また、孔雀王は密教の孔雀明王と同一の神だと設定しています。


神さまに逆らった堕天使。思い浮かぶのが、西洋のキリスト教世界の大魔王ルシフェル。反逆罪で地獄に落ちた悪魔の王です。


ストーリーでは、孔雀王とルシフェルも同一神。さらにシリアやパレスチナの神でキリスト教では悪神とされたバアルも同体。


要するに神さまに反逆した世界各地の悪神や天使を孔雀王と設定しているんです。


世界各地に伝わる神話には「大洪水」など共通する要素があるといわれます。


神や悪魔という存在にも人類共通の要素がある。ストーリーにはそんな考え方があふれている。


「孔雀王」は古代の歴史や神話&伝説がくわしくて、密教の歴史や特徴を知ることができるんです。


孔雀のライバル王仁丸による、平安時代まで存在した呪禁道(師、後述)の呪術も登場。


日本古来の神々とも戦い続ける孔雀の活躍を、「孔雀王」シリーズでお楽しみください。


2.「変幻退魔夜行 カルラ舞う!」

著者は永久保貴一さん。「ハロウィン」で1986年から1993年まで連載。コミックスは全18巻(文庫版全8巻)。


作品は人気を呼んで、続編が大展開されてシリーズ化。


変幻退魔夜行 新・カルラ舞う!」が「サスペリアミステリー」で1998年から2006年まで連載。


コミックス全18巻。シリーズ第1作と合わせた「完全版」計44巻が刊行されています。


さらに2006年から2018年まで「ミステリーボニータ」で「真・カルラ舞う!」など7作品が掲載(単行本全29巻)。


2020年からは「ホラーシルキー」(Web版)で「変幻退魔夜行 カルラ舞う!宿儺を殺した神」を掲載(単行本全2巻)。


2022年8月からは新作「変幻退魔夜行 カルラ舞う!贄の咆哮」が連載中です。


1989年にはシリーズ第1話の「奈良怨霊絵巻」がアニメ映画化され、ボイスドラマ(カセットテープ書籍)や小説版も発売。


1990年にOVA作品も発売。作品はロングランの人気シリーズになっています。


★登場人物とあらすじ


主人公は扇翔子舞子(上の表紙)。双子の姉妹で女子高生。扇家の家業である迦楼羅(かるら)神教38代目の教主です。


迦楼羅はインド神話の神鳥「ガルダ」。仏教の守護神で「迦楼羅天」とも呼ばれています。


密教でも本尊として信仰され、降魔、病除、延命の力があるとされています。

迦楼羅の法力を使って、扇家はいにしえの時代から邪法による怪事件を鎮める一族。

各時代の政権から退魔依頼も受け、38代目の2人も内閣調査室からの仕事をこなしている。

扇家では霊能力を持つ者が一代おきに生まれ、先代37代目は祖母・千景。

翔子は魔物の感知力は優れているが降魔念術が弱い。舞子は体術と念術の使い手だが魔物が見えない。1人では半人前。

でも翔子が念術で魔物を可視化して拘束、舞子が念術で撃破する連携技で退魔行を実践。

強敵には奥義「変幻」で2人が魂を入れ替え。体術と念術の強い舞子の体に翔子の魂が入って魔物を撃退する。

恐ろしい闇の事件を解決していく扇姉妹。ほかの退魔師とも連携したり、対決していきます。

★陰陽師、古来の神道の使い手たち

扇家は代々、時の政権からの依頼を受けて退魔を行ってきました。でも依頼を受けるのは扇家だけじゃない。


陰陽道や古来の神道の使い手たちも依頼を受け、代々の扇家教主と連携して戦ってきました。


シリーズ第1話「奈良怨霊絵巻」では、陰陽師剣持司玄妙教の教え長(おさ、教主)三杉鉄夫が登場。


扇姉妹と協力して怪事件を解決します。

奈良県では選挙戦が行われていたが、突然顔が焼けただれるなど立候補者たちの不審な死亡事件が発生。

扇家は内閣調査室から事件の調査依頼を受ける。姉妹は、亡くなった立候補者の息子が在学し不穏な噂が流れる高校へ転校。

校内には悪霊たちが集まっていた。一方、剣持と三杉は調査室の後藤、錦織とともに事件の原因を突き止めるべく調査。

犠牲者は平城京跡地での朱雀門の復元工事の反対派。事件は蘇我入鹿の首を用いて外法(邪法)が使われたことが判明。

外法の犯人は飛騨の呪術師、宿儺一族の二面僧都。目的はかつて藤原不比等が一族の栄華のために朱雀門にかけた呪法の復活。

新たに呪法をかけた朱雀門による宿儺一族と奈良の繁栄だった…。

翔子(上の表紙)と舞子、剣持らは宿儺一族の呪法の使い手・辰王(しんのう)や二面僧都と死闘を展開します。

翔子と舞子は迦楼羅教に伝わる、ためた気を発する「破邪」などの念術


剣持は平安時代の陰陽師・安倍晴明の末えい。敵の呪詛を返して倒す「闇の死繰人(しぐると)」と呼ばれる術者。


晴明が駆使した式神(術者が使役する鬼)や晴明印(五芒星)と呼ばれる呪符呪文などを使って戦います。


敵の辰王も呪力を込めた石礫(つぶて)を使った礫術で扇姉妹らを苦しめる。


術者たちの激突は令和の大人気マンガ「呪術廻戦」に負けない迫力があるんです。


★退魔術の解説がわかりやすくておもしろい


扇姉妹や剣持らが繰り出す念術や陰陽術などは、ストーリー上でくわしく解説されています。


コミックス巻末でも永久保さんが「おまけページ」で実に丁寧に説明。これがメチャおもしろいんです。


第1話「奈良怨霊絵巻」では、ストーリーで登場し読者から質問が多かった呪術に関して解説(第2巻)。


扇家では神道系の呪文も使います。例えば「一二三(ひふみ)ふるえ、ゆらゆらー」。神道ではポピュラーな呪文です。

呪文の由来は古代の大豪族・物部氏。大戦力を誇った名門豪族は朝廷の祀りも行っていて、呪文は物部氏の秘術だった。

ストーリーで登場し「孔雀王」でも使われた九字切りも解説。

扇家は「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字呪文。陰陽師の剣持は最後の2文字が「前・行」と違う呪文を唱える。

剣持の呪文は「六甲の秘術」と呼ばれ中国の道教(民間呪術)で使われるもの。道教が日本に伝わって変化したのが九字の呪文

9文字の意味や印の結び方なども説明していて、好奇心を刺激してくれます。

★ストーリーの背景となった歴史的な考察もスゴい


迦楼羅はアジアではガルダの名で信仰されている

「おまけページ」ではストーリーの背景となった伝説、伝承も紹介。これもメチャおもしろい!


「奈良怨霊絵巻」では蘇我入鹿の首を使った呪力で、二面僧都が一族に栄華をもたらそうと暗躍します。

二面僧都は朱雀門に呪法をかけるため入鹿の首を使った。理由は「大王の首」の呪力が必要だったため。

入鹿は「大王」に即位していたが、この事実は藤原不比等によって日本書紀などの正史から抹殺された。

「入鹿大王」要素のベースは「上宮聖徳法王帝説」。聖徳太子の伝記で、こちらに載っている記事なんです。

作者や成立年代は不詳。複数の人の訴えを同時に聞き分けたーなど太子の不思議な伝説が満載。正史とは違う記事も多いんです。


正史では、入鹿は推古朝で権力をふるい、聖徳太子の息子で皇位継承者の山背大兄王を葬るなど悪逆ぶりを紹介しています。


だから「もしかしたら、ライバルの皇太子を倒して自ら皇位についたのかも…」。そんな妄想がわき起こる。


好奇心をメチャ刺激してくれる「おまけ」なんです。


吉備のスサノオ」(コミックス26巻〜30巻)では、皇祖神アマテラスの弟スサノオの伝承がベース。


高天原を追放されたスサノオの伝承が定住の地・出雲では少ないのに、吉備(岡山)で多く存在するなどのナゾを紹介。


「変幻退魔夜行 カルラ舞う!」は呪術の迫力や、古代の神々や歴史のナゾを楽しめる名作なんです。


3.「陰陽師」

原作は夢枕獏さん、作画は岡野玲子さん。


1993年から2005年まで「コミックバーガー」→「コミックバーズ」→「月刊メロディ」と3雑誌にわたって掲載。


コミックスは全13巻。2006年には第37回星雲賞コミック部門を受賞。累計発行部数は600万部超(2019年時点)。


続編の「陰陽師 玉手匣」も2011年から2017年まで「MELODY」で連載。コミックスも全7巻が刊行されました。


★登場人物とあらすじ


主人公は平安時代に活躍した陰陽師、安倍晴明(あべの・せいめい)。


知らない人はいないと断言できるほど、日本人が大好きなサイキックヒーロー。


そして公卿の源博雅(みなもとの・ひろまさ)。日本古来の音楽・雅楽の達人。その音色は鬼も魅了するほど。


夢枕さんの原作とマンガ版では、2人は晴明の屋敷で酒を酌み交わし語り合う盟友として描かれています。

舞台は現代より夜の闇が深い平安京。街では闇にまぎれて悪鬼・妖怪・怨霊が出没していました。

大膳大夫・安倍益材の子、晴明は陰陽師・賀茂忠行に弟子入り。ある日、陰陽寮に出仕した忠行のお供についた。

夜が深まる中、牛車に乗る忠行と下京に向かった晴明は菅原道真の怨霊が率いる百鬼夜行を目撃。師匠に危急の事態を告げる。

晴明は能力を忠行に認められ、瓶の水をすべて移すように知識や技を伝授される。すべてを吸収した晴明は陰陽師として成長。

晴明は悪鬼を呪(しゅ、呪文)で祓い、式神(陰陽師が使役する鬼)を操る。博雅が持ち込む怪事件を次々と解決する。

晴明は呪禁師(民間の陰陽師)の秦(蘆屋)道満と遭遇。古代豪族・秦氏の政権樹立を狙う道満と対決する。

ストーリーは夢枕さんの原作をベースに進行。原作については当ブログでも紹介しています。

中高生におススメ!苦手な日本史が好きになる歴史小説4選と活用法


★陰陽師は朝廷の官僚だった


晴明神社では晴明の像(左)が参拝者をお出迎え

陰陽師は朝廷の役所・中務省に属した陰陽寮の官僚。陰陽道に基づいた易占や天体観測、地相などで暦作りや占いを行っていました。


陰陽道は古代中国の陰陽五行説が源流。世界は陰と陽、木・火・土・金・水の五行が循環して成り立つという考え方です。


飛鳥時代に日本へ到来。同時に入ってきた天文学、易学、暦学なども盛り込んだ陰陽道が成立。統計学の要素もある最先端科学でした。


退魔に関しては、役所「典薬寮」に所属し道教・仏教などを元に祈祷を医療として行う呪禁道の呪禁師や天台・真言の密教僧たちが務めました。


一方、陰陽師は物事や方位、土地や日時の吉凶を占っていました。


ただ呪禁道は廃され陰陽寮に統合。いわば古代の行政改革が行われ、陰陽道に退魔的な技術が加わりました。


奈良〜平安の世に入ると、朝廷内の政争で失脚劇や暗殺などが多発。犠牲者が怨霊になって祟るという「御霊信仰」が広まりました。


菅原道真を代表とする大怨霊におびえる人たちが注目したのが陰陽師たち。


密教僧じゃ頼りない。陰陽師を呼べ!」。民間の術師たちも引っ張りだこ。代表格が晴明の宿敵・蘆屋(秦)道満(あしや・どうまん)です。


正規の陰陽師・晴明は公卿たちの間で大人気。なにしろ能力がズバ抜けていたから。


急病で苦しむ一条天皇に禊(みそ)ぎを奉仕すると病気は全快。干ばつが続き雨乞いの儀式を行ったら恵みの雨が降る。


トンデモない能力が世間に広まり、晴明はサイキックヒーローになったんです。


★岡野さんの絶妙なペンが平安の世を再現


ここまで説明した歴史的な背景をベースに、ストーリーが展開する「陰陽師」。


夢枕さんの原作を読めば、ストーリーに加えて時代や陰陽師に関する知識も楽しめます。


マンガ版では岡野さんの絶妙な描写が原作の世界観を再現。独自の取材成果も盛り込み、平安時代の様子や風俗が絵で楽しめるんです。


単行本第1巻の第1話「安倍晴明 忠行に随(したが)ひて道を習ふこと」。いきなり岡野ワールドに引き込まれます。


前述のあらすじで紹介した、忠行のお供で出仕した夜のエピソード。ここで描かれる平安の人たちの風俗が丁寧でわかりやすいんです。


岡野さんの絵柄は細微なタッチ。朝廷に出仕する公卿や女性たちが身につける朝服(公務用の服)の再現度がメチャ高い。


建物の描写も丁寧で、スケール感がバツグン。平安京の街に立っているようです。

牛車に乗る際には入口前に踏み箱を置き、お供の晴明が忠行の脱いだ履物を抱える。そのまま牛車とともに歩く。

そんな細かい描写が平安の風俗や生活感を教えてくれるんです。

繊細なタッチで表現された晴明の表情や姿は実にクール。原作で描かれた冷静沈着な陰陽師のイメージにピッタリ合う。


クールに晴明印を結び、呪を唱えて退魔する姿はカッコいい!


★独自の岡野ワールドも展開


晴明印といわれる五芒星

ストーリーの前半は夢枕さんの原作をベースに展開されますが、岡野さんオリジナルのキャラも登場。

晴明の奥さん、真葛(まくず)。魔物が見える「見鬼」と呼ばれる人。怨霊にも立ち向かい、聡明。晴明を支え子どもを宿す。

物語に恋愛要素を盛り込む役割ですね。「英雄、色を好む」といわれますが一説では、晴明は女性好き。恋人が4人いたそうです。

ストーリーの後半では夢枕さんの原作にない、オリジナルの岡野ワールドが展開されます。


詳細は書きませんが、夢枕さんいわく「原作を超えた作品」。


原作者に高く評価せしめた岡野版「陰陽師」をぜひ、お読みください。


まとめ・知的好奇心をくすぐる3作品にハマろう


ここまで悪神や魔物たちとのバトルがスゴくて、古代史や神話、密教や古来の神道、陰陽道の歴史などもくわしい退魔マンガ」を紹介してきました。


  1. 「孔雀王」(著者・荻野真さん)
  2. 「変幻退魔夜行 カルラ舞う!」(著者・永久保貴一さん)
  3. 「陰陽師」(原作・夢枕莫さん、作画・岡野玲子さん)

上記の3作品はいずれも名作ばかり。下記の3つの魅力が際立っている。


  1. 主人公ら登場する退魔師たちの設定が丁寧で巧み。密教や古来の神道、陰陽道の特徴もくわしく解説されていてわかりやすい。
  2. 登場する古代の神々や悪神が、古代史や神話・伝説に基づいて丁寧に描かれている。
  3. 著者の考察や独自に取材した情報も説明されていて勉強になる。

魔物と退魔師たちのバトルや、古代史や神話、密教や古来の神道、陰陽師の歴史・特徴を楽しむことができるんです。だから、


密教や古来の神道などがベースで、バトル要素もある作品ってありますか?


古代史や伝説に興味があって、神話の神々や悪神をモチーフにしたマンガを探しています


仏教などの退魔師や陰陽師が活躍するオススメ作品を教えて!


なんて悩ましい声を上げている方は、ぜひ3作品のページを開いてください。


知的好奇心がくすぐられて、3作品の各シリーズにハマっていきますよ


当ブログでは、ほかにも歴史を楽しみながら勉強できる「怖いマンガ・小説」を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。


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