バックパックを背負って一人旅。いいなあ |
行ったことのない変わった街や地元の人たちと遭遇する気分が楽しめる
せわしない日常から離れて、初めて訪れる街の雰囲気や地元の人たちとふれあうことができる気ままな旅。ホント、最高ですよね。
いろいろあって心が疲れちゃった時。自分に刺激を与えたい時 etc。
旅先の風景やご当地ならではの食べ物や人情は、心の奥底にまで染みてくる。明日へのエネルギーをもらえます。
だから旅の参考になって、ちょっと変わったディープな旅気分が楽しめる小説と紀行本は大人気。
「めったに経験できない、変わった旅が描かれている本を探しています」
「トンデモない場所に行ったり、地元の人とディープにふれ合うような旅の本が読みたい」
「結婚してから一人旅がしづらくて…。一人で知らない国をさすらっている気分になれる本を教えて」
そんな声がたくさんあるんです。
でも旅の小説や紀行本は人気のジャンル。たくさん作品があって選ぶのに困っちゃうほど。
この記事では知らない街をさすらう気分が味わえて、めったに経験できないディープな「旅の小説&紀行本」を厳選。
- 「プロレス深夜特急 プロレスラーは世界をめぐる旅芸人」(著者・TAJIRIさん)
- 「水曜どうでしょう×地球の歩き方」(著者・地球の歩き方編集室)
- 「深夜特急」(著者・沢木耕太郎さん)
上記の3作品について紹介&解説します。いずれも変わった街や地元の人たちとディープにふれ合う気分が楽しめる名作・力作ばかり。
この記事を読めばナットク&マンゾク。実際に作品のページを開きたくなります。
作品を読めば、今すぐ旅の空に飛び出したくなりますよ。
3作品をチョイスした理由
夜のバンコク。喧騒が旅情をそそる |
旅をテーマにした小説や紀行本は大人気のジャンル。選ぶのに迷うほどたくさんの作品が発表されています。
作品を読めば、主人公が経験した旅のエピソードを楽しめる。さらに自分で同じ行程を旅して、エピソードを追体験できる。
旅の小説・紀行本の魅力は、これに尽きるといえます。
現在は世界中で新型コロナウイルス禍への対策などが進み、各国では水際対策も緩和。
ガマンを強いられてきた旅行を再び楽しむことができるようになりました。
だから「普通と違うディープな旅の本」を読んで旅気分を楽しみたい、参考にしたいという人が多いんです。
これから紹介する3作品は、ディープな旅を読みたい&経験したい人にはピッタリな魅力が3つ。
- めったに立ち寄らないような街や場所で、興味深い変わった体験をしている。
- 旅先の地元の人とのふれあいがディープで濃厚。あまり知られていない旅先の事情や現在の状況も紹介されている。
- 旅のエピソードがメチャおもしろくて、旅に出て追体験してみたくなる。
上記の3つの魅力が際立っていることが、3作品をチョイスした理由です。
ここからは1作品ずつ紹介&解説していきます。
1.「プロレス深夜特急 プロレスラーは世界をめぐる旅芸人」
著者は2023年1月3日に九州プロレスへ移籍したプロレスラーのTAJIRIさん。
情報サイト「プロレス/格闘技DX」で2018年から2019年まで連載した記事を加筆・修正して編集。2021年7月に発売されました。
プロレスファンや旅好きの人たちからも「闘う深夜特急」として大人気の作品。
TAJIRIさんの文体は、米国リングで大人気になった多彩な技やムーブ(動作)とコミカルなギミック(キャラ)そのもの。
1970年後半から1980年代で人気になった、作家の椎名誠さんや嵐山光三郎さんらの「昭和ケーハク体」に近い雰囲気。
軽妙でコミカルで、とても分かりやすくておもしろいんです。
★プロレス版メジャーリーガー「TAJIRI」
TAJIRIさんは熊本出身。大学を卒業し金融会社での勤務をへてIWA・JAPANのリングでプロレスデビュー。
メキシコでルチャ・リブレを修行。大日本プロレス、ECW(米)をへて2001年、世界最大の米団体WWEに入団。
団体トップのお茶くみ役で、英語で指示されたら日本語で返答するコミカルなギミックが大人気に。
ルチャの軽快な技と毒霧や強烈なバズソーキックがフィニッシャーの実力派でもあり、クルーザー級(中量級)のトップ選手として5年間も活躍。
米国の地域によってはMLBのイチローさんや松井秀喜さんより有名な日本選手で「プロレス版メジャーリーガー」と呼ばれたほど。
帰国後はハッスル、新日本プロレス、WRESTLE−1などで活躍。フリー、全日本プロレスを経て現在は九州プロレスのリングに参戦中です。
一方で若手選手の育成にも尽力中。新日本で活躍中(2022年10月時点)のKUSHIDA選手、フランシスコ・アキラ選手。
そして女子団体STARDOM(スターダム)のエース・朱里選手を育てています。
「プロレス深夜特急」は52歳(2022年12月時点)のTAJIRIさんが、プロレス団体と人気が根付きつつあるアジア・欧州などの転戦記。
さらには現地の若いレスラーたちを指導する姿。プロレス伝道のために各国を一人さすらう旅が描かれている。メチャおもしろい!
TAJIRIさんが訪れた各国・街にあるプロレス団体の道場や会場の風景や様子が登場。そんなとこ、普通の旅じゃ行けません。
深夜の街を徘徊して飛び込む定食屋とか、ものすごくディープな体験が展開します。
ちなみにタイトルは、作家・沢木耕太郎さんの著書「深夜特急」(後述)から。でも「沢木耕太郎さんに許可をとるのを忘れてた」(笑)。
TAJIRIさんは沢木さんに影響を受け「深夜特急」に飛び乗ったバックパッカーでもあるんです。
「プロレスラーは、プロレスがなければ死んでしまう生き物である」
練習、試合、そしてリングがある街への旅。すべてがレスラーの仕事。
街へ向かいつつ試合のこと、自分自身の人生を考える。それがTAJIRIさんの旅です。
いろんな国で出会った「プロレスがなければ死んでしまう」人たちの生きざまに遭遇する旅でもある。作品での旅程は、
【ヨーロッパ】イタリア→マルタ共和国→ポルトガル→オランダ
【米国】サンフランシスコ→サンノゼ→シアトル→テネシー
【アジア】フィリピン→シンガポール→マレーシア→香港
ヨーロッパ、アジアは世界的なプロレス団体はないけど人気が高い。たくさんの団体が産声を上げている状態です。
米国はWWEという巨人が君臨する一方で、さまざまなインディ団体が奮闘。プロレス熱がフットウしている状況。
「母国でもプロレスをメジャーにしたい」「本格的に学びたい」。そんな声や要望が高い中、白羽の矢が立つのがTAJIRIさん。
かつて活躍したWWEはリングの映像を世界に配信中。視聴した各国の人たちが見よう見まねでプロレスを始める。
そしてTAJIRIさんの勇姿を見た各国の関係者から、オファーが絶えないんです。
作品は2017年から2019年にかけてのエピソード。TAJIRIさんが各地の団体からオファーを受けて参戦したり。
若手レスラー向けセミナーの依頼を受けて、プロレスの基礎や練習法、理論、哲学を指導したり。まさにプロレス伝道の旅なんです。
★練習用リングに漂うリアルな日常・生活感
マルタの石造りの街並み |
TAJIRIさんは新日本プロレスの人気レスラー・矢野通さんのYouTube公式チャンネルで対談。
この作品について矢野さんは「酒とプロレスの話ばかり」。TAJIRIさんは大爆笑しています。
矢野さんが評された通り、TAJIRIさんが酒場で酔いしれた酒やサカナ、一緒に汗を流したレスラーたちのエピソードがたくさん。
一方、観光スポットはほとんど登場しません。なのに、練習用リングや酒場の描写に旅先の日常や生活感があふれているんです。
街は強い風と潮のにおいが漂う。どこを見ても石造りで砂色の建物。「海賊の要塞」というイメージ。海からの風で砂ぼこりが吹く道場には、体が細く緊張の面持ちをした若者たち。それぞれが仕事を終えた後にやってくる。若者たちはプロレスで稼いだ金で親に家や車を買ってあげるのが夢。リングのそばに「足立区竹ノ塚の雑貨屋で240円で買ってきたような」足ふきマット。神聖なリングを汚さないためだ。道場に水道はなくトイレも公園のモノを使用。若者が父からもらったオンボロ車に乗せてもらって公園のトイレで用たし。
セミナー後、クツ底は真っ白。若者たちの顔も汗と砂ぼこり。でも「ほこり」はプロレスに関わっている「誇り」。
プロレスを愛する「誇り」なんだ、と。マルタの街と世界のリングを目指す若者たちの息づかいを感じられる素晴らしいエピソードです。
★生みの親の喜び
フィリピンは熱気にあふれていた |
フィリピン・マニラでのエピソードは、読んでいるこちらもジンときました。
TAJIRIさんは2014年、旗揚げしたWNCでフィリピンに遠征。当時の現地にはプロレス団体はゼロでした。
5年後の2019年。プロレスが盛り上がっていると知ってフィリピンへ。現地では3団体が生まれ、人気も上昇中。
TAJIRIさんへあいさつにくるレスラー、関係者は口をそろえて「5年前の試合をみてプロレスを始めました」。
レスラー冥利に尽きる言葉。TAJIRIさんは〝生みの親〟としての責任と任務を遂行します。
マニラの強い日差しが降り注ぐ屋外の練習用リング。汗だくになって若いレスラーにプロレス理論・哲学を伝授。
夜は酒場でサンミゲール・ビールを飲みながら、後輩レスラーに自分のプロレス観を伝える。
多民族国家らしく、あいさつしてくるレスラーは中国系やインド系と多彩。米国から修行にきている白人もいた。暑いというより熱いジョホールバルのリングでは、不自然な長さの休憩が入る。現地レスラーは「イスラムのお祈りの時間だ」と床にひれ伏し祈りを捧げ始めた。野外からも祈りの大合唱が聞こえてくる。会場を飛び出すと、闇夜に大音量のコーランが流れていた。呆然と立ちすくみ身震いしてしまった。宗教という人間の営みが、これほどまで心を「おののかせる」ものだとは…。
この作品で紹介した旅の後、世界は新型コロナの感染が拡大。プロレスなどスポーツイベントは大きな影響を受けています。
苦境の中でもTAJIRIさんはプロレスのこと、人気が根づき始めた旅先のリングへの思いも記していて心に刺さります。
また2022年9月に発売された続編「戦争とプロレス」も秀逸。コロナ禍に負けずリングで戦い続けるレスラーたちの姿と旅を描いています。
ぜひ「プロレス深夜特急」に合わせてお読みください。
2.「水曜どうでしょう×地球の歩き方」
水曜どうでしょう×地球の歩き方 2巻セット 原付の旅「日本列島制覇」編「ベトナム縦断」編
著者は「地球の歩き方編集室」。海外旅行者に大人気の紀行本「地球の歩き方」の出版元です。
「地球の歩き方」は世界各地を紹介するシリーズが100タイトル以上あります。
海外旅行の必須アイテムと、旅のカリスマ番組「水曜どうでしょう」がコラボしたのが、ここで紹介する紀行本です。
番組で放送されて大人気となった旅を「編集室」が厳選して特集。旅の足跡が克明に再現され、出演者らのインタビューも掲載。
2022年12月14日には、人気企画「原付の旅」4シリーズをまとめたコラボ本2冊(上の写真)が発売されました。
★伝説のローカル深夜番組
「水曜どうでしょう」は北海道テレビ(HTB)が制作。1996年10月から2002年9月まで深夜帯で放送されました。
深夜にもかかわらず大人気となり、現在も不定期で新作が放送されています。
レギュラー出演者は俳優・タレントで映画監督も務める鈴井貴之さん、俳優として大人気の大泉洋さん。
制作側の藤村忠寿さんと嬉野雅道さんの両ディレクター。基本的に、この4人による日本や世界各地への旅が放送されました。
大泉さんが「どうでしょう軍団(班)」と称した4人の旅はユニークで過酷。
「サイコロの旅」は出発・東京、ゴール・札幌。6つの候補地を決め、サイコロキャラメルの箱を振って出た数字の場所へ。
移動手段は深夜バス、飛行機、列車など。連夜の深夜バス移動で身も心も消耗し、時間切れで札幌へ戻れないことも。
ほかにもオーストラリア大陸、北米をレンタカーで横断。札幌から鹿児島まで甘いものの早食いで対決する「対決列島」。
企画を知らない大泉さんのリアクションと旅先での出たとこ勝負が大ウケ。全国区になった人気は現在も続いています。
数多い人気企画から厳選されコラボ本となった旅が、「ヨーロッパ完全制覇の旅」。
いずれも「どうでしょう軍団」がめぐった地を徹底取材。アクシデントやエピソードの発生地の現況も紹介しています。
コラボ本を手に現地へ行けばエピソードやアクシデントが追体験できる内容になっています。
★ヨーロッパ完全制覇の旅
●●未読●水曜どうでしょう×地球の歩き方●永久愛蔵版●<上巻●下巻>● 303
「ヨーロッパ完全制覇の旅」は3度敢行。そのうち2度はパリから出発。レンタカーでヨーロッパ各国をめぐりました。
【21カ国完全制覇】
- 1990年10月に初放送(全9話)。欧州を10日間にわたって疾走。疲労しながら激走したが、13カ国で時間切れ。
- 疲労の蓄積から大泉さんがホームシックに。フランスで夕食を優先したため宿が取れず、完徹でスペインへ強行移動を余儀なくされた。
【ヨーロッパリベンジ】
- 1999年10月に初放送(全8話)。北欧4カ国を9日間で走破。
- 到着初日に宿が取れず、ドイツの道端で野営。藤村さんの「ここをキャンプ地とする!」の名言が誕生(笑)。
- フィヨルドの美しくも単調な風景で大泉さんと藤村さんが〝壊れた〟。
- 2007年1月に初放送(全9話)。アイルランドを除く残りのバチカン市国、サンマリノ、ポルトガルを回り20カ国制覇。
- 出発地ローマで藤村さんがジョギング中にネンザ。ナビ役の鈴井さんが重圧から体調を崩しホテルで嘔吐。
- 大泉さんがエビ料理を独り占めしたら、エビアレルギーで目がはれまくった。
最近では2020年10月、「21年目のヨーロッパ21カ国完全制覇〜完結編〜」が初放送(全7話)。21カ国目アイルランドを旅しています。
また、アフリカを疾走した「初めてのアフリカ」(2013年10月に初放送。全13話)のコラボ本も発売されています。
アフリカの大地で遭遇した野生動物やエピソードを再現。写真や裏話、登場した舞台の現況も紹介されてます。
★スーパーカブの魅力と実力を再認識
ベトナムでは原付が市民の足です |
2022年8月、HTBが人気企画「原付の旅」4シリーズをまとめたコラボ本2冊の出版を発表。2022年12月14日に発売されました。
コラボ本は、2002年9月にレギュラー放送が終了してから20年を記念して出版。
「原付の旅」は日本列島編3シリーズとベトナム編があります。
ホンダのスーパーカブ(ベトナムではドリーム)に乗った鈴井さん&大泉さんを、ディレクター陣が車で追いかけて撮影。
大泉さんが平均時速30〜40キロでボヤキながら疾走する姿などが大人気です。
コラボ本は「ベトナム縦断」編と「日本列島制覇」編の2冊にまとめています。ベトナム編の内容は、
【原付ベトナム縦断1800キロ】
- 2002年7月に初放送され全9話。レギュラー放送の最終企画。
- ハノイからホーチミンを目指す旅程は1800キロ。鈴井さん&大泉さんはいきなり大都会ハノイのカブ渋滞に大苦戦。
- 鈴井さんが途中でトランシーバーを落とし音信不通になるアクシデント。
- 猛烈な暑さとスコールに苦闘。大泉さんのオシリに果物ランブータンのようなブツブツができて苦痛とも激闘。
一方「日本列島制覇」編は3つの旅をまとめたモノ。企画の内容は、
【72時間!原付東日本縦断ラリー】
- 1999年7月に初放送。全5話。東京から札幌まで72時間で走破。大泉さんが荷台にだるまなどを載せて疾走。
- 新潟で信号待ち中、大泉さんの操作ミスでカブがウイリー。「安全第一」看板に激突する「だるま屋ウイリー事件」が発生。
【原付西日本制覇】
- 2000年5月に初放送。全6話。大泉さんを「観光ロケ」とダマして連れ出した京都・金閣寺から鹿児島・指宿まで走破。
- 鳥取砂丘では砂を集めて荷台に載せて激走。自然公園法に触れる行為として番組サイドが謝罪する事態に。
- 大泉さんの疲労と腰痛が激しくなったため、藤村さんが赤ヘルをかぶり代走。
【原付日本列島制覇】
- 2011年3月に初放送され全12話。東京〜高知間を激走。大泉さんが出演した「龍馬伝」にちなみ桂浜の坂本龍馬像がゴール。
- 鈴井さんのカブに出前機を搭載。重くて走行が不安定になり箱根越えで大苦戦。
- 出前機の搭載をかけて、鈴井さんと藤村さんが甘いもの対決で死闘を展開。
コラボ本は4度の旅の足跡を克明に再現。「どうでしょう軍団」4人のインタビューも掲載されています。
自転車やバイクで変わった旅がしたい方。コラボ本は旅程や現地の状況などが参考になるので、ぜひお読みください。
3.「深夜特急」
前述したTAJIRIさんや、ワタシのようなオジサンたちが何度も読み返している「旅のバイブル」といえる作品です。
著者はノンフィクションライター、作家の沢木耕太郎さん。
産経新聞で途中まで連載された後、1986年に新潮社から単行本「第1便」「第2便」、1992年に最終巻「第3便」が発売。
文庫版は計6巻に分冊され、現在も発売中です。
1980年代〜1990年代に日本のバックパッカーをたくさん生み出した、旅小説の代名詞といえる作品。
1987年に第5回日本冒険小説協会大賞のノンフィクション・評論大賞部門を受賞。
1993年には単行本「第3便」が第2回JTB紀行文学賞を受賞しています。
1996年にはテレビドラマ化。「劇的紀行 深夜特急」のタイトルでテレビ朝日系で1998年まで放送。
大沢たかおさんが沢木さんを演じたドラマは、原作に合わせたアジア・ユーラシア・ヨーロッパの3部作が人気となりました。
★登場人物とあらすじ
主人公は「私」。若き日の沢木さんご自身です。
会社勤めを辞めてルポライターになった沢木さんはある日、海外への一人旅を思い立ちます。
自宅の机の引き出しにあったお金をかき集めて航空券を買い、日本を脱出するようにアジアへ向かいました。
作品のタイトル「深夜特急」は、1978年の米映画「ミッドナイト・エクスプレス」が由来。
旅に出ることを思い立った私は「かつてシルクロードがあったのなら、現代ならバスぐらい通っているだろう」。乗合バスによるインド・デリーからイギリス・ロンドンまでの旅を決めた。友人たちと旅を達成できるか賭けになり、私はロンドン中央郵便局から「ワレ成功セリ」と電報を打つとうそぶいた。かき集めた1900ドルでトラベラーズチェックや航空券を用意して、大した計画を決めずに旅に出た。
陸路をつたって地球の大きさを知る手がかりを得たかった。乗合バスは酔狂としかいえない。
★ユーラシア大陸を横断
活気があふれるデリーの市場 |
「深夜特急」は沢木さんが数回にわたってユーラシア大陸を旅した記録でもあります。
旅程は大まかに分けて3地域。アジア・インド&中東などシルクロード地域&ヨーロッパ。
【アジア】香港→マカオ→バンコク(タイ)→ペナン→シンガポール。
【シルクロード地域】カルカッタ(インド)→ブッダガヤ→カトマンズ(ネパール)→ベナレス(インド)→デリー→
ペシャワール(パキスタン)→カブール(アフガニスタン)→テヘラン(イラン)→アンカラ(トルコ)→イスタンブール。
【ヨーロッパ】アテネ(ギリシャ)→ローマ(イタリア)→マルセーユ(フランス)→マドリード(スペイン)→
リスボン(ポルトガル)→サグレス→パリ(フランス)→ロンドン(イギリス)。
メチャ長くて、広くて、遠い旅。ワタシ的な読みどころはアジアからシルクロードの旅。
日本円で30円くらいのドミトリー(相部屋の旅人宿)。地元の人でギュウギュウ詰め、田舎道をガタゴト進む乗合バス。
ホコリっぽくてムシッとした湿気と暑さが体にまとわりつく、雑然とした街並み。
アジア・シルクロードの雰囲気が伝わって、脳内のイメージが動き回る。
ハードな旅路にある沢木さんの心情がダイレクトに感じられるからです。
★旅先で遭遇したトラブルにリアルさを感じる
乗合バスでガタゴト突き進む。ぜいたくな時間 |
旅小説や紀行文の魅力は、旅先の風景描写。「深夜特急」でも沢木さんが目にした風景が巧みなペンで描かれています。
またワタシが作品を読んでウン10年が経過しても、ずっと克明に覚えているのは沢木さんが体験したトラブル&アクシデント。
ベナレスの安宿に泊まった朝、体がだるかった。強烈な暑さで扇風機をかけっぱなしで寝たのがよくなかった。移動を決意したがバスがない。仕方なく乗った列車は3等車で立ちっぱなし。宿にたどり着き常備薬を飲んだが回復しない。乗合バスで清潔なドミトリーがあるカジュラホへ。頭痛で脂汗を流しつつ到着。ドミトリーに頼み込み女性用の部屋に宿泊。熱が下がり石造寺院などを散策。翌日、バスで移動したが再び発熱。苦しみながら列車を乗り継ぎデリーに到着。YMCAでガックリと寝ていると、ボーイが「インドの病気はインドの薬じゃなきゃ治らない」と丸薬を持ってきてくれた。
ワタシも経験がありますが、異国での病気はメチャ不安になるもの。沢木さんは部屋に荷物を運んだボーイに助けられる。
万国共通の人情が心にメチャ染みる、インパクトがあるエピソードです。
★深夜特急に飛び乗れ!
沢木さんの旅は読んでいてディープで、濃すぎるくらい濃い。
スタート地・香港ではアジア的な熱気にあふれた、お祭りのような日々に染まって長期滞在。
マカオでは、カジノでサイコロのバクチ「大小」でスッテンテンになりかけて…。
パキスタンでは、映画館から途中で退出したら爆弾テロの犯人と間違えられてボコボコに。
シルクロードを西へ向かう乗合バスは、道の真ん中を爆走。避けようとしない対向車とチキンレースを展開して…。
日本政府がもっか渡航を禁じているアフガニスタンでは、ヒッピー宿の手伝いや客引きをしたり。
イスタンブールをへてギリシャから入ったヨーロッパは、旅の終着地。
それまでの旅があまりにも濃かったので、沢木さんは別れを惜しむように各地を回るんです。
そしてロンドン。友人たちに旅の成功を告げると宣言したゴールの中央郵便局。
ここでちょっとしたオチがある。この作品を締めくくるのにふさわしいラストエピソードがカッコいい!
ぜひ作品をお読みになってほしいんですが、この旅はあまりにもディープ。濃くて、熱い。
作品を読んだ人たちに、それぞれの深夜特急に飛び乗るきっかけと影響を与えているんです。
まとめ・読めばバッグを手に旅の空へ飛び出したくなる
ベトナムの市場巡りは楽しい |
- 「プロレス深夜特急 プロレスラーは世界をめぐる旅芸人」(著者・TAJIRIさん)
- 「水曜どうでしょう×地球の歩き方」(著者・地球の歩き方編集室)
- 「深夜特急」(著者・沢木耕太郎さん)
上記の3作品は、いずれも変わった街や地元の人たちとディープにふれ合う気分が楽しめる名作・力作ばかり。
「めったに経験できない、変わった旅が描かれている本を探しています」
「トンデモない場所に行ったり、地元の人とディープにふれ合うような旅の本が読みたい」
「結婚してから一人旅がしづらくて…。一人で知らない国をさすらっている気分になれる本を教えて」
そう悩んでいる方にはピッタリな作品です。この記事を踏まえて作品を読めば、ナットク&マンゾク。
すぐにバッグを抱えて旅の空へ飛び出したくなりますよ。
当ブログでは、ほかにも旅の気分が楽しめるマンガを紹介しています。ぜひご覧ください。
谷風長道、コブラ、星野鉄郎…星の海をさすらう気分が楽しめる「宇宙の旅マンガ」名作3選
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