人の潜在意識の不可思議さを楽しもう |
サイコサスペンスの名作で最高の人怖を楽しめる
人の心の奥底にひそむ闇。そして〝もう1人の自分〟。
どんな人の心にもひそんでいるトラウマがあって、それは決して他人事じゃない。
そのトラウマが引き起こす不可思議な現象や事件・事故。
強烈なサスペンス要素がある意味、ホラーやオカルト以上にリアルで恐ろしい。まさに人怖…。
そして心に巣食うトラウマが引き起こすトラブルに苦しむ人たちを救う、心理学者や精神科医、メンタルカウンセラー。
そんな心の医師が主人公の「サイコサスペンス漫画」は、人気のジャンルです。それだけに、
「心理学を扱った人間ドラマが面白い漫画はありませんか?」
「心理学者や精神科医、カウンセラーが主人公の作品を探しています」
「深層心理を追究するガチなサイコサスペンスで人怖な漫画を教えて!」
そんな声がたくさんあるんです。
そこで当ブログがオススメする作品が「サイコドクター」。心理学者が心のトラウマに苦しむ人を救う物語。
平成のころの作品でサイコサスペンス・ジャンルを確立した名作。令和のいま読んでもメチャ楽しめます。
この記事では「サイコドクター」から心理学やサイコサスペンス要素が魅力的で楽しめるエピソードをチョイス。
- 「高層恐怖症」(File.1)
- 「恋愛妄想」(File.4)
- 「出生の傷」(File.6)
- 「隻眼の目撃者」(File.16)
- 「黒い羊」(File.18)
上記の5エピソードについて紹介&解説します。この記事を読めばナットク&マンゾク。
作品が持つ魅力である、人の深層心理(潜在意識)の不可思議さやガチで人怖なサイコサスペンス要素が良く分かる。
そして心のトラウマを乗り越える人間の強さ=人間ドラマが魅力的すぎて、作品のページを開いてみたくなりますよ。
「サイコドクター」ってどんな作品なの?
★「サイコサスペンス」ジャンルの先駆者
「サイコドクター」の原作は亜樹直さん、作画は的場健さん。
「週刊モーニング」で1995年26号から2003年8号まで連載。単行本は全8巻が発売中。
全20エピソード。1エピソードで1話完結もあれば、数話にわたるエピソードもあって読みごたえはバツグンです。
心理学者の主人公が、心のトラウマに苦しむ人たちを豊かな心理学的知識と洞察力による治療で救っていくストーリーが大好評。
2002年10月9日から12月18日まで、日本テレビ系でテレビドラマ化。竹野内豊さんの主演で大人気となりました。
実は亜樹&的場コンビによるこの作品、未完に終わってるんです。
「疑惑、そして沈黙」(File .20)のエピソードの終了と同時に連載もピリオド。作品自体は完結しないまま、雑誌の告知もなし。
連載終了の理由も明かされていませんが、漫画・出版業界で特有の〝オトナの事情〟があったようです。
2003年42号から作画がオキモトシュウさんになり「サイコドクター 楷恭介」としてリスタート。
基本設定は前作を引き継いでいるけど、人物設定が違ったり。別作品として扱われています。
ちなみにオキモト版は2004年39号で完結。51号から亜樹&オキモトコンビで「神の雫」の連載がスタートしました。
この記事では、的場版を紹介。的場さんの陰影が効いてサイコ感が漂う絵柄がストーリーにマッチして最高です。
★心の闇を克服していく登場人物たち
主人公は楷恭介(かい・きょうすけ、上の表紙の男)。
女子大の助教授として心理学を教える一方で、東京・新宿で心理研究所(診療所)を開設。悩める患者のカウンセリングをしています。
名門大学の医学部に現役合格し、医師国家試験の目前まで順調に進んだエリートでした。
ただ大切な人の死と直面したことで、心の闇に苦しむ人を救う心理学の道へ。彼自身もトラウマと闘うんです(後述)。
ヒロインは冠野あずさ(かんの・あずさ)。商社勤務のデキるOLでしたが、心の病に苦しんでいました。
恭介の診療所を訪れ治療を受けたことで、子どものころから心の中に巣食っていたトラウマを克服(後述)。
商社を辞めて、恭介の診療所の押しかけ助手に。恭介の治療活動を助けていきます。
また、恭介の大学時代からの友人で劇団を主宰している真名部。恭介の行きつけのバーの〝ママ〟力石剛太。
新宿警察署の警部で友人の八尾と、彼の部下で刑事の犀川理(後述)。
登場人物それぞれが心の闇に苦しみ、恭介とともに克服していく姿が描かれています。
ここからは人の深層心理の不可思議さやガチで人怖なサイコサスペンスを楽しめるエピソードを、1つずつ紹介していきます。
1.「高層恐怖症」(File.1)
実はワタシも高層恐怖症なんだけど… |
★ストーリーのあらすじ
あずさは菱朋商事に務めるOL。企画立案などさまざまな実績を上げ、同僚から出世間違いなしとウワサされていた。そして会社の常務取締役、伊勢幸之助と不倫関係にあった。あずさは入社したころから伊勢の引き立てを受けていた。そんな日々の中、あずさは毎晩のようにみる悪夢と高層20階にあるオフィスで発生するめまいや発汗などに悩まされていた。
あずさが務めている高層ビルのオフィス。窓が全開していて大事な書類が風に舞っている。あずさが閉めようと窓に手をかけると、ゾンビに手を捕まれ地上に真っ逆さまに落ちていく…。
★恭介の洞察力に驚く
あずさが恭介のオフィスを訪れたとき、部屋の汚さにビックリ。恭介の風体もだらしなくてウサンくさい。
だから「モグリ」だと思って逃げ出そうとする。でも、あずさが入室したときから服装や表情を観察していた恭介が指摘。
OLにしては高級な身なりをしている。昼間に来院することから仕事は外回り。いつもは大きめのバッグだが、この日はハンドバッグ。ハイヒールを履いている。だから「今日はデート。相手は中年の男性で長身。そして不倫の関係」。
悩みを聞くこと。これこそカウンセリングでのマスト。あずさの症状や悪夢の内容から、彼女の潜在意識を探るんです。
ファーストエピソードの冒頭から、心理学者の洞察力や推測力のスゴさが展開。読んでいてドキドキしてきます。
夢に出てくるゾンビは何を象徴しているのか |
★点と点をつなげて潜在意識のトラウマを暴く
ゾンビ=死人が襲ってくることは、彼女は死人に対して過去に強い抑圧を受けていたと思われる。仕事に不満がないとすると…。「身近な方を亡くした経験はありますか?」。
観察と推測から気づいた点である「身近な方を亡くした経験」。これこそ、あずさの心に巣食うトラウマのカギを握っている。
さまざまな絵を見せて、感想を語ってもらうことで潜在意識を探る自由連想法を実施。
あずさの記憶を探ることで、幼少期(4歳ごろ)の記憶が抜けていることを発見します。
さらに深い催眠状態に導くことで患者に精神年齢をさかのぼらせて、潜在意識を探る退行(逆行)催眠も実施。
あずさは子どものころに戻った際にパニックとなったことで、幼少期での強烈な体験がトラウマになっていると診断。
また年長の男性が好きになる女性はファザコンの気質があるといわれるが、あずさの〝両親〟は健在…。
一方であずさの恋人・伊勢が恭介に「関わるな」と敵意を見せる。恭介は雇われたと思われるヤクザに暴行されたり。
あずさと伊勢の関係を探偵に調べさせていた、彼女の上司が謎の死を遂げたり。2人の関係には恋愛以上の何かを感じさせる…。
ストーリーが進むにつれて、恭介が推測した点と点がつながり、あずさのトラウマと真実が明らかになっていく。
精神世界の奇怪さとサスペンス性、そして人怖要素も強くなってくるんです。
ここから先はぜひ作品を読んでいただきたいんですが、ワタシはこの第1話で作品にハマりました。
2.「恋愛妄想」(File.4)
食品会社に務める、あるOLさんの症例のストーリー。
北嶋玲子が務める食品会社の総務部では、同僚の森尾莢(さやか)が浮いた存在になっていた。「彼にもらった」と大きな花束を抱えて出社したり。昼休みにはオフィスの電話で〝彼〟と私用電話したり。でも「今日はデート」といっていた葵を、ほかの同僚たちが街で見かけたときは1人きり。莢が〝彼〟にかけた電話を玲子が確認したら天気予報ダイヤル。でも葵は本当にうれしそうに〝彼〟と話している…。
莢がウソをついているんじゃなくて、本当に恋人がいると思い込んでいるんじゃないか?
★依頼を断る
莢の心の中だけにいる恋人。玲子は恭介に、そう説明します。そして莢を妄想の中から救い出してと恭介に訴えます。
自分の心の動揺を抑え、隠すように「あなたの依頼は受けられない」。夢は夢のまま壊さずにいたほうが、人は幸せなのかもしれない。自分が治療したら彼女の幸せな夢を壊さなくてはならない。
幻の恋人といっても、莢は1年あまり一緒に過ごしてきた。彼女の中では現実よりも楽しい思い出として存在する。彼女の心を正常に戻すことはできるかもしれない。それは恋人を失うとともに楽しかった思い出も灰燼に帰す作業だ。絶望が大きすぎた場合、極端な手段を選んでしまう人だっているんだ。
でもその直後、来店した恭介の大学時代からの友人・真名部が衝撃の事実を伝えるんです。
妄想の恋愛から救うすべはあるのか |
★恭介が負った心の傷
恭介は医学部の優秀な学生だった。ある日、演劇部の真名部の先輩・聖春日子と知り合う。体が弱かった春日子は休学しがちだったが、一目ぼれした恭介は彼女を迎えにいって通学するなど猛アプローチ。そんな中、春日子から有名俳優と婚約していると告げられる。だが春日子と俳優は無関係だった。恭介は春日子の母親に事情を尋ねた。母親は春日子が〝恋人〟と電話で楽しそうに話しているのを不審に思った。親子電話で会話を聴くと、春日子は1人で話していた…。
恭介は心理学カウンセリングの練習だからと春日子に協力を仰ぎながら、カウンセリングを実行。春日子は次第に現実世界へ戻ってくる。でもある日、恭介にキスして「ありがとう」と告げて立ち去る。その直後、春日子は恭介の目前で校舎の屋上から飛び降りてしまった…。
だから恭介は医師の道を諦め、心理学者&カウンセラーになったんです。
莢を治療したら春日子と同じ結末になってしまうんじゃないか。でもあずさは、今の先生なら治療できると熱望する。
恭介はかっとうする中でヒントを見つけ、莢の治療にチャレンジ。莢を救うと同時に恭介も自身のトラウマを乗り越えるために奮闘。
その治療法と結末がメチャ劇的なんです!
この続きはぜひ作品をご覧ください。マジで感動しますよ!
3.「出生の傷」(File.6)
★ストーリーのあらすじ
恭介のカウンセリングには、多くの仲間たちが協力しています。新宿署の八尾警部もその1人。
恭介に頼まれ、依頼者やその関係者らの周辺の情報などを調べたり。逆に八尾が心理学的な面の助言を求めたり。
新宿駅西口のコインロッカーからバラバラ死体が発見される事件が発生。八尾と新米刑事・犀川は現場へ急行する。腐乱臭が漂う現場で犀川は恐ろしく、懐かしいという異様な感じを覚えた。そして仕事中に、自分がハダカのまま狭い空間に閉じ込められた感覚を覚える。さらに取調室で灯りを消し暗闇になるとパニックを起こし「ここから出してくれ!」
恭介はカウンセリングで犀川の症状を「閉所恐怖症」と診断。子どものころの体験が原因になることが多いと指摘。犀川は自分が養子であることを告げる。自分は遠い親戚の息子で、1歳のころに両親が事故で亡くなり引き取られた、と。
母親は、犀川の本当の親がだれだったのかも分からず乳児院から引き取ったと真実を告白する。そして犀川の閉所恐怖症は赤ん坊だったころの記憶がまだ残っていると告げる。さらに犀川は「コインロッカーベイビー」だったと告白し、息子を救って欲しいと懇願する。
★赤ちゃんの記憶と精神世界の不思議さ
八尾の調べで、26年前に新宿駅のコインロッカーで赤ちゃんが保護され遺留品に「理」と書かれていたことが判明します。
当時は学生運動が盛んな時期で、警察は過激派学生を中心に捜査したけど「理」の両親にはたどり着けませんでした。
恭介は犀川にコインロッカーベイビーだったと告げる。そして閉所恐怖症の原因が「誕生の記憶」にあると推測した。犀川は赤ちゃんのころにコインロッカーに閉じ込められ、深いトラウマを負ってしまった。だから治療のために犀川のトラウマの正体を見極める必要があると説明した。
ある実業家は出世して大金を稼いでも自分に自信が持てないと悩み、心理学者のもとを訪れる。退行催眠で出生のころの記憶を引き出し、実業家は早産で生き残れるか分からない状態で誕生した。その際、医師が「この子を助けたところで、ろくな者にならん。適当に処置しておけ」と語ったことを覚えていた。赤ちゃんはショックを受け、長じて成功しても自分に自信が持てなかった。
ワタシは子どもが妻のおなかの中にいるころ、よく「お父さんだよ」と呼びかけていました。
誕生直後、泣き止まない子どもに「よくがんばったね」と呼びかけると、まだ目が見えないはずなのにこちらを見て泣き止んだんです。
おなかの中で聴いたワタシの声を覚えていて判別できたんだ。そう喜びつつ、人間のスゴさと不思議さに驚きました。
狭いコインロッカーの中に閉じ込められたら… |
★退行催眠で発覚した衝撃の事実
恭介は犀川にリバーシングという催眠療法を施す。犀川は母親の胎内にいるころにさかのぼる。犀川は「やめて。足を引っ張らないで」と苦しむ。犀川が逆子の状態で難産だったことが分かった。さらに「死なないで、ママ、僕を置いて行かないで」。犀川の母親は難産のため瀕死の状態だったと推測された。「出して! パパ閉じ込めないで! ここから出して!」。コインロッカー内の記憶が戻り、父親が閉じ込めたことが判明。
恭介とあずさは雑誌を犀川に見せ、父親と似た顔立ちの男を探させた。犀川は「この人の鼻、口元。すごく似てる。懐かしい感じがする」。犀川が指し示したのは文部大臣(現在は文部科学大臣)の大曽根茂だった。
恭介は文部省の友人を介して大曽根と接触して心理テストを実施。左腕に火傷の跡も確認し「犀川の父」である確信を深めていきます。
さらに大曽根の〝心の闇〟を見い出し、大物政治家の不正や犯罪にまでたどり着く。
バラバラ死体事件までリンクするその過程が、サスペンスに満ちていてメチャ面白い! ここから先はぜひ作品をお読みください。
4.「隻眼の目撃者」(File.16)
★ストーリーのあらすじ
恭介が依頼を受けた女性の治療を行うことがきっかけで、自分のトラウマの原因である聖春日子の死の真相にたどり着く。
恭介の研究所に初老の男が訪ねてきた。彼は恭介の大学時代の恩師・神津だった。神津は今の恭介の境遇を心配し「大学へ戻ってこい」と誘う。恭介は「あそこ(大学)で勉強すれば苦しんでいる人をもっと救うことができるかもしれない」と悩む。
研修医・目加田惣平と来所した美大生・森沢麗央(れお)は幼いころに右目が見えなくなり、今は左目も失明寸前だった。目加田は麗央の右目が見えない原因は心因性のものと疑い、恭介へ相談にきた。右目や脳を検査しても異常はない。右目が見えなくなったのは麗央が7歳のころで、彼女にはそのころの記憶がない。
視力を失う心因としても、見たくないという気持ちが強すぎた場合に起こりうること。
この2点を足がかりに、恭介は麗央の治療を行うことになったんです。
★潜在意識がウソをつく
7歳に戻った麗央は、叔父とその娘とハイキングをしていた。途中で山中で航空機の墜落事故を目撃した。燃える機体、遭難者たち。「望遠鏡を見ていた時、スカート姿の女の人が…」。麗央は涙を流して震えた。
山歩きなら双眼鏡じゃないか。望遠鏡は視野が狭く、景色を見るには取り回しが悪い。彼女の右目には忌まわしい記憶が封じられている。「ウソをついているなら、犯人は彼女自身の潜在意識だ」。恭介は実際に麗央の叔父を訪ね、事故を目撃したのは叔父だけで麗央はいなかったことが判明した。
これは「過誤記憶」といわれるもので、恭介によると、あまりにも辛い体験で潜在意識が記憶をすり替えたと説明しています。
さらに彼女の潜在意識には二重の鍵がかかっていると確信するんです。
ある夜、麗央は子どものころに大人の男性とのぞいていた望遠鏡でスカートの女性が転落する姿を目撃した夢を見た。
恭介は夢に着目。絵による自由連想法を行う。ドレス姿の女性の絵をひっくり返して見せると、麗央はパニックを起こした。
恭介は、二重の鍵で封印された本当の記憶が「スカートをはいて墜落する女性の姿」と「死」だと、たどり着いたんです。
彼女が望遠鏡で見てしまったものとは? |
★春日子の死の真相へ
治療が進むにつれて、麗央は断片的な記憶を取り戻していきます。
例えば、丸い輪の中で若いころの長髪の恭介が大人の男性と談笑している姿を見ていたこと。
麗央が恭介の診療所を訪ねた理由は、潜在意識に恭介の記憶が残っていて、道で会った彼に引きつけられたから。
麗央の現在の父親は義父で、本当の父親は麗央が7歳のころに離婚した。麗央は実の父親から買ってもらった望遠鏡で星を見るのが大好きだった。
丸い輪の中にいる恭介は、まさに大学時代の自分自身だった。丸い輪が望遠鏡のレンズだとすると、墜落するスカート姿の女性は春日子じゃないのか?ならば、なぜ麗央は望遠鏡で自分の大学をのぞいていたのか? 何か見たいものがあったのか?
さらに右目の治療に成功した上に、麗央の記憶が完全に復活。トラウマの正体も判明します。
これらの詳細はぜひ作品で確認していただきたいですが、ヒントをいくつか。
- 麗央が望遠鏡でのぞいていたのは、彼女が大好きな本当の父親だった。
- 望遠鏡でのぞいていた恭介の横には、大人の男性がいた。
- 大人の男性は恭介より先に、心を病んでいた春日子のカウンセリングをしていた。だが2人にはトラブルがあった…。
麗央は記憶が戻り、新しい第一歩を踏み出す。一方で恭介は記憶を取り戻した麗央を通じて春日子の死の真相を知ります。
恭介にとって、それはあまりにも重すぎる事実。でも、その事実を乗り越えるために支えてくれる大切な人もできる。
このエピソードは心の闇と闘い、乗り越える人間の強さを教えてくれる、最高のサイコサスペンスであり人間ドラマなんです。
5.「黒い羊」(File.18)
★ストーリーのあらすじ
恭介のもとに主婦の森上沙織(さおり)が訪れた。沙織は高校生の長男・遼(りょう)の暴力に困っていると明かす。さらに「息子が父親(夫)の命を狙っているかもしれない」とも訴えた。ある日、夫の書斎から息子が出てきて、中に入るとガスが充満。息子は夫が葉巻をくわえて部屋に入るのを知っていた。夫の自転車のタイヤが切り裂かれていた。夫は「あの切り口は遼のサバイバルナイフかもしれない」と漏らした。
遼はカウンセラーの訪問に反発し、リビングで皿や家具などを恭介に投げつけた。恭介は遼を力づくで押さえつけたが、そんな騒ぎの中で遼と二卵性双生児で妹・円(まどか)が入ってくる。円は一見穏やかに見える。だが飼っている肉食魚にエサの小魚を与える姿に、恭介は残虐性を感じる。
★親のトラウマが与える影響
沙織の夫は家業の「森上運輸」を大企業に育てたやり手。だが沙織は旧華族の出身で「(夫は)ただの運送屋」とそっけない。
遼には「お絵描きテスト」として「おまえの心に浮かぶ母親と子どもの絵を書いてみろ」と命じる。父親の部屋では家族の写真がいっぱいの棚を見て「子煩悩ないい父親」と診断。遼の部屋は散らかっているが「子ども部屋さ」。円の部屋にはペットのはくせいと子どもを抱きしめる母のタペストリー。沙織の部屋には、実家の家族や学生時代の写真ばかりが並んでいる。遼が書き上げた絵は人の体が棒のようになった「棒画」。恭介は「かわいいもんさ」と笑う。
遼の絵は母親が大きく描かれ歯がムキだし。子どもが威圧感を受けていると示す。沙織の部屋の写真は、夫の写真が一枚もなかった。新婚時代など沙織はうっくつしていたことが分かる。
恭介は退行催眠で2人を1歳のころに戻す。すると円が「ママがはさみでパパのシャツをジョキジョキ」。「家に戻りたい」「パパが嫌い。殺したいって」。横にいる遼も泣き出して「まま、泣かないで」。
ある勤勉な父と2人の息子がいた。兄は勤勉実直、弟は怠け者。それでも父は平等に財産を分け与えた。兄は勤勉に暮らしたが、弟は家を出て金を使い果たし舞い戻ってきた。父は弟のために帰還を祝う。兄はなぜ放蕩者の弟のために祝宴を開くのかと怒る。父は「行方不明の弟が見つかれば祝宴を開くのは当然だ」。
光は道徳的で社会に適応する「勤勉な兄」=「白い羊」。一方で父には自由に放蕩したい影の面「怠け者の弟」=「黒い羊」がある。
だから自分の心の奥底の願望を体現する弟をかわいがる。
また教師など道徳的な家庭に非行児童が少なくないのも「黒い羊」が影響しているという米国人学者の分析も紹介しています。
さらに恭介は森上家の「黒い羊」をはっきりさせるために、ある手を打つ。そして「黒い羊」は意外にも…。
一般家庭で起こったサイコサスペンスがたまらないエピソード。ぜひ作品でご覧ください。ドキドキしますよ!
まとめ・トラウマを乗り越える人間の強さを楽しもう
絵には描いた人の潜在意識が表れている |
ここまで「サイコドクター」の特徴である心理学やサイコサスペンス要素などについて紹介してきました。
さらに、この作品が持つ魅力が分かって楽しめるエピソードをチョイス。
- 「高層恐怖症」(File.1)
- 「恋愛妄想」(File.4)
- 「出生の傷」(File.6)
- 「隻眼の目撃者」(File.16)
- 「黒い羊」(File.18)
上記の5エピソードについて紹介&解説しました。
この記事を読んで、作品が持つ魅力である人の潜在意識の不可思議さやガチで人怖なサイコサスペンス要素が良く分かったと思います。
そして心のトラウマを乗り越える人間の強さ=人間ドラマがメチャ魅力的。だから、
「心理学を扱った人間ドラマが面白い漫画はありませんか?」
「心理学者や精神科医、カウンセラーが主人公の作品を探しています」
「深層心理を追究するガチなサイコサスペンスで人怖な漫画を教えて!」
なんて悩む方にはピッタリの作品です。
平成時代の作品ですがサイコサスペンス・ジャンルを確立した名作。令和のいま読んでもメチャ楽しめます。
この記事を踏まえて作品を読めば、絶対にナットク&マンゾクできますよ。
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