「岳」で学べる装備、天候、道迷い…登山で役立ち、泣ける厳選エピソード

2021年10月4日月曜日

マンガを楽しむ

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夏の西穂高岳。風景が素晴らしい

初心者に優しく、島崎三歩が教えてくれる登山の心得


山は最高に気持ちがいい! 


森林の中の美味しい空気、マイナスイオンを楽しみながら山道を踏みしめ、やがて広がるパノラマの絶景。


心も体も癒されます。


自分も登山をしてみたい」と考えている人がいらっしゃるでしょう。


一方で、登山は未経験という方は、


どんな服装や装備をすればいいの?」


危なくないのかな? 遭難するかも…


なんて悩んでいらっしゃる方も多いと思います。


そんな方におススメなのが、山の素晴しさと怖さ、山岳救助で活躍するクライマーたちの姿を描いた人気マンガ「岳(ガク)」。


主な舞台である北アルプスの背景の描写が素晴しい上に、登山が大好きな読者に優しい作風が人気です。


さらに「岳」では、


  1. 登山靴、服装など登山に必要な装備
  2. 天候が急変した場合などの対処方法
  3. 道迷い、遭難するケースと避けるための方法や心構え

などの役立つ情報がたっぷりと描き込まれています。


ストーリーを楽しめると同時に、登山の基本が学べるんです。


だから「登山をやってみたいけど、大丈夫かな?」という方には一発回答!


どんな装備が必要なの?」「遭難したらどうすればいいの…」なんて不安を吹き飛ばしてくれます。


この記事では「岳」の魅力がわかる登山の基本が学べる、そして泣けるエピソードを厳選して紹介、解説します。


お読みになれば、この作品の素晴しさがわかり、登山の参考になります。


そして、山に登ってみたくなりますよ!

どんな作品なの?


「岳」は、2003年に「ビッグコミックオリジナル」で連載スタート。2012年まで続き、全158話が描かれました。

単行本は全18巻。最近では「完全版」全9巻が刊行されています。

2011年には小栗旬の主演で実写映画化され、こちらも人気を集めました。 

物語の舞台は穂高、槍ヶ岳など雄大な山々が連なる北アルプス。


世界の名山を登頂し、米国の山岳救助隊で活躍したプロクライマー島崎三歩が主人公。


山岳遭難防止対策協会に所属し、ボランティアの救助隊員として活躍します。


山を訪れる人たちや登山者の安全に尽力する人たちとの心温まる交流も描かれています。


高校時代の同級生で、長野県警の山岳遭難救助隊チーフの野田正人、県警救助隊員の椎名久美。


さらに、北アルプスで山荘を営む谷村文子、遭難事故で父親を失くした少年、横井ナオタ


登場人物も熱く、優しく山を愛する人ばかりです。


1.読みどころ


何といっても、主人公・三歩の〝山バカ〟ぶりが最高。


住まいは山中の棚場に設営したテント、冬場は岩壁を利用した自作の小屋。


登はん中の岩壁につり下がった状態でコーヒーを淹れて飲んだり…。


その背景である北アルプスが、雄大で、美しいんです。


救助した遭難者には「生きてくれていて、ありがとう。ホント、良かった」と問いかける。


迷惑をかけてしまったと自責の念にとらわれている人には「また、山においでよ」とほほ笑む。


間に合わなかった人には「ここまで、よく頑張った…」。


三歩が登山者たちに語りかける言葉。


山を愛し、楽しみ、傷つき、そして生還できなかった人への優しさ、リスペクトがあふれています。


ホロリとくるし、自分も麓でもいいから山に行ってみたいなあ、と憧れてしまいます。

2.泣ける!おススメエピソード

「岳」のエピソードでは、登場する登山者がなぜ山に来たのか、どんな思いを背負って来たのか。


そうした背景なども描かれています。


ヒューマンストーリーに三歩の活躍が加えられることで、感動的なエピソードがたくさん。


そんな中から、初期の厳選エピソードを紹介。読めばハートをわしづかみされます


第1巻・第6歩「遠くの声」


秋の常念岳で父親と男の子の父子が滑落のため遭難。父親は足を負傷し動けない。

遭難から5日がたち、食料や水はなく体力と気力が落ちる中、父親は遺書を書き始める。

三歩は県警から親子の捜索依頼を受け、仲間と急行。

遭難現場では、男の子が夢を見て、病気で亡くなった母親との会話を思い出していた。「困った時はお母さんを読んでね」。

男の子は声を振り絞って「オカアサーン、ゴハン!」と叫び続け、父親も遺書を破り捨てて一緒に叫ぶ。


父親は仕事で忙しく遊びに連れていけない息子のために、亡き妻と登った山にきました。


でも、帰り道を急ぐあまり登山道を見失ったんです。


男の子が「オカアサーン!」と叫んだのは、そうすれば母親が死んでいないことが分かるから。母親にそういわれたから。


三歩が父子を救出した際、「頼まれてきたよ」と声をかけます。


男の子が「誰に頼まれたの?」と聞くと、三歩は「君のお母さんに決まってんじゃん」。


依頼を受けた際、母親の情報を聞いていたんです。


晴天に映える夏の槍ヶ岳

第3巻・第3歩「オトコメシ」


北部警察署に小学生の横井ナオタが「父ちゃんが山に行って帰ってこない」と相談に来た。

これを受けた久美は、三歩に捜索を依頼。三歩も穂高岳に入る。

ナオタと建築工の父親は二人暮らし。親子は高い建設現場で、おにぎりを食べる「オトコメシ」を楽しんでいた。

父親はナオタが希望した穂高岳で「オトコメシ」をやろうと、いい場所を探す目的で登山したが滑落していた。

三歩は意識がある父親を発見。救援ヘリが近付ける位置まで搬送するが、父親の容態が急変。ナオタはヘリで急行したが…。


三歩は救命措置をとりましたが、かなわず。現場に着いたナオタが「父ちゃん、起きて」と叫び、号泣する。

その後、三歩は山を下りてナオタの様子を見にいきます。ナオタは「平気だよ、父ちゃんがきっと見てるもん」と穂高岳を指差すんです。

けなげでたくましい男の子に成長していくナオタ。この後のストーリーで重要人物になっていきます。


3.夏・秋山登山に役立つエピソード


ここからは、登山初心者の方には参考になるエピソードを紹介、解説します。


第1巻・第4歩「イナズマ」


山の天気は変わりやすい。よく、そう言われます。


特に夏山では、山という「壁」に当たった熱い空気が上に上がることで上昇気流が起こり、雲が発生するからです。


快晴だった天候が急変、雨や落雷でトンデモなく怖い状況になるケースがあります。


このエピソードでは三歩が救助中に、落雷に遭遇し、どう対処したかが描かれています。


北アルプスの穂高岳にある屏風岩で、三歩と久美は登はん訓練をしていた。


その際、上にいた男性2人組のパーティーにトラブルが発生。


1人に落石が当たり、屏風岩で宙づりになって死亡。現場の空は晴天から激変し積乱雲が発生。雨が降り、雷も落ち始めた。


パーティーのもう1人の遭難者は、岩壁の棚状になったテラスのそばにあるクラック(割れ目)に避難していた。


だが、三歩はクラックからテラスに移動させ、久美と3人で岩壁に体を寄せ待機する。


雷は岩壁を直撃。クラックに置いていたリュックは黒こげになったが、3人は何とか雷雲をやり過ごし、無事に下山する。


日本山岳会によると、山で雷鳴が発生した時点で危険区域にいるそうです。


この状況に遭遇した場合は、


  • 落雷する可能性が高いので木のそばに近づかない、
  • 近くに山小屋があれば非難する、
  • しゃがみこんで低い姿勢をとる、その際はピッケルなどは立てて持たず、地面に置く


といった対処法を紹介しています。


でも、三歩たちが遭遇したのは、まさに緊急事態。


落雷した場合、岩壁に体をつけると感電するため、三歩は体を少し離して寄せさせます。


また、男性をクラックからテラスに身を移させたのは、岩に落ちた雷がクラックを走るから。


三歩は見事な対処法と「俺のいう通りにすれば、ぜーったい大丈夫だから」と笑顔で2人を救いました。


でも、下山後に「死ぬと思った」と。


プロクライマーがビビるほどです。


雷を避けるには、小まめに天気予報を確認。少しでも予兆があれば避難することが大切です。


山道では天候、足元に気を付けて

第2巻・第2歩「先生」


登山で雨はつきもの。そして、雨のため視界が悪くなり、登山道を見失うケースがあります。

このエピソードは、雨の穂高岳でいなくなった小学生を、引率の先生と三歩が必死に捜索する内容です。

雨が降りしきる大谷山荘に、小学3年生のグループが到着した。引率した先生が点呼をとると2人いない…。

先生は登山道を引き返し、子供たちを探し回る。だが気が動転し、崖から降りようとした際に滑落。三歩に助けられる。

三歩は、2人がグループの列の中ほどで登山道を歩いていたことなどを先生から聞く。

そして滑落の心配がないこと、休憩の際に列から離れた可能性を推察。休憩場所に辿り着く。

そこは開けた草地で、雨で視界が悪い。それでも先生は草地の奥で見つけた大きな木に向かうと、そこには2人がいた。


この先生は中学時代に山岳部に所属。顧問の先生に登山の心得を教えられていました。

その教えを「山で何かあったら」というプリントにして、子供たちに渡していました。

プリントには「服をしっかり着よう、雨に濡れない場所で、動かないでいよう」。

2人はそれを読んで実践していたんです。

遭難の原因を三歩は説明しています。


雨の日は林の中よりも、草地のような開けた場所の方が方向を見失うそうです。


2人は、休憩の時にグループを離れて小用をしていたら、道が分からなくなった、と。


雨天の際は何か目印を見つけて移動することが必要です。


でも、2人が危機に直面しても、先生の教えをしっかり守ったこと、それが大事に至らなかった最大の理由です。


ホント、偉かった! 


三歩によると、救助ヘリが何度も捜索しても見つからないのに、ヘリに遭難者の母親が同乗すると、一発で発見することがよくある。


先生だから見つかった、先生の子供たちだからなんだと不思議なエピソードで締めています。


第3巻・第2歩「警告」


山岳救助隊員として助ける立場の久美。このエピソードでは、自分が遭難者となり、救援がくるまでどう対処したかが描かれています。


緊急出動でヘリに乗り、遭難現場へ向かった久美。

遭難者は滑ったことによる打撲とねんざの軽傷ですんだ。久美は「救助隊はタクシーじゃない!」と注意し1人で下山する。

だが、途中で雨が降り、雨宿りできる場所を探しているうちに滑落。左手を折り、体も強く打って動けなくなった。

周囲は暗くなり、不安が増す中、久美は折れた左手を、ペットボトルを添木代わりにして包帯で固定。

以前、三歩に教えてもらった、ヘッドライトの点灯による遭難信号を送り、その場から動かず救助を待った。


別の現場で救助していた三歩が点灯の信号に気付いて通報。久美は無事に救助されます。

三歩が教えた遭難信号。10秒ごとに1回点灯、これを1分間(計6回)行った後、1分間消灯、このセット繰り返す

また、笛でも同様に行えば遭難信号になります。登山の装備としてライト、笛はぜひ携帯したい道具です。

久美は昼間の遭難者を厳しく注意しました。でも、遭難者も突然の転倒で怖かったのだろうと三歩に諭されます。


久美は滑落後、三歩の言葉を思い出し、遭難者の立場から心境や心理を学びました。


前穂高岳、奥穂高岳の眺め

第6巻・第0歩「日本一の山」


谷村山荘の女主人・文子が、富士山に登った際に知り合った女性の話が描かれています。


文子にとって、登山は亡くなったご主人とのなれそめで、一年に一度、故人への思いを胸に富士に登っている。

6合目の山道で、文子は女性登山客と親しくなる。彼女もご主人を亡くし、自分を励ますため富士登山に挑戦した。

でも、登山は初めてで、息切れがひどくなる。

文子はほかの登山者から酸素ボンベを借りて彼女に吸わせて頂上を目指すが、そのボンベも途中で尽きる。

三歩が表れてボンベを手渡し「遠くで見た時、ずっときれいになるんだよ、頂上まで登った山は」と励ます。


富士山は5合目までバスで行くことが可能。ツアーがあるほどメジャーな観光地です。

でも、約3780メートルの標高を誇る日本一の山。

5合目あたりでも空気が薄く、登山に慣れていない人や、急いで登った人が高山病にかかる危険性があるんです。

自分はもちろん、同行者や周囲の人が息切れが止まらなくなったり、頭痛を訴えたりするなどの事態に備え、酸素ボンベは携帯するべき。

携帯用なら700~800円と安価で購入でき、コンパクトでバックパックに収容できるので、おススメです。


4.三歩のモデルとなった人がいる


主人公・三歩には、モデルになった人がいます。

穂高岳山荘のスタッフを務めながら救助活動にも尽力された、故・宮田八郎さん。

高校卒業後からレスキュー人生を送った人です。

遭難者には「自己責任論」がつきもので、救助する必要はないという声があります。

宮田さんは、遭難は自己責任を超えた事態で、遭難した人に自己責任もへったくれもない、という考えだったそうです。

三歩の「よく頑張った!」「生きていてくれて、ありがとう」というセリフには、宮田さんの信念が反映されています。

宮田さんの活躍の記録は「穂高小屋番 レスキュー日記」(山と渓谷社)にまとめられています。

また、長野県ではホームページで『島崎三歩の「山岳通信」』というサイトを設置。

県内の山岳地域で発生した遭難事例を1週間ごとに発信。安全な登山のための情報を提供中です。


まとめ・安全、安心の登山への参考書


「岳」は遭難者の救出がメインテーマ。

読み進むにつれて、登山ではどんな服装が良くて、装備はどんなものが必要なのか、分かってきます。

遭難に関しても、どんな状況で発生しやすいのか、本当に参考になります。


有識者からの厳しい指摘もある


一方、有識者の方からは多くの厳しい指摘があります。


例えば、搬送時間を短くするため遭難者の遺体を崖から落とす場面があります。


これは医師による死亡確認を受けないとやってはいけないこと。


山道に咲く花をつむシーンには、自然保護の観点からやってはいけないことだ、と。


これらの指摘は正論です。作品の演出上、こうした描写が行われたのだと思われます。


でも、登山を安全、安心に楽しむため、危険から回避へ導く意味でも、「岳」は本当に素晴しい作品です。


登山で大切なことが知りたい」という方は、ぜひ「岳」を手にとってください。


不安や疑問を吹き飛ばしてくれて、山に登りたくなりますよ!


当ブログでは、石塚真一さんの人気作品BLUE GIANT」についても紹介しています。ぜひ、お読みください。


「BLUE GIANT」主人公・宮本大の演奏シーンにハマるジャズ名プレーヤーベスト3


また、読めば登山気分になれる「山岳小説」も紹介しています。


山の風景描写が絶妙で「登った気分」とヒューマンストーリーが楽しめる山岳小説オススメ3選


「岳がすぐ読みたい!」という人には、スマホなどにダウンロードすれば即読みできる電子書籍版がオススメ。


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