江口さんは昭和のギャグ漫画王だった |
昭和の流行を盛り込んだギャグは時代を超える面白さがある
ポップでオシャレ。めっちゃキュートでカワイイ女の子の絵が大人気のイラストレーター、江口寿史さん。
日本でも有数のアーティストです。さらに江口さんには、もう一つ「ギャグ漫画家」という顔がある。
主に昭和50年代前半〜昭和60年代(1970年代後半〜1980年代後半)、たくさんのギャグ作品を発表。令和でも人気が高くて、
「昭和のギャグ漫画に興味があります。江口さんのオススメの漫画を教えて!」なんて声がたくさんあるんです。
作風は大流行した音楽、映画、ファッション、漫画、アニメなどの「昭和カルチャー」を盛り込んだギャグとポップな絵柄。
「昭和50〜昭和60年代に流行したモノが知りたい」という方にもオススメです。
ただ「昭和のギャグでしょ? 令和の時代に読んでも面白いの?」なんて声もある。
「最近は漫画を描いてないけど、もう描かないの?」なんて心配する声もある。
そこでこの記事では「昭和カルチャー」が楽しめて、時代を超える面白さが詰まっているオススメ作品をチョイス。
- 「すすめ ‼︎ パイレーツ」
- 「ストップ ‼︎ ひばりくん!」
- 「寿五郎ショウ」
- 「江口寿史のなんとかなるでショ!」
- 「江口寿史の爆発ディナーショー」
上記の5作品について紹介&解説。現在の江口さんの漫画への思いも紹介します。
記事を読めば、ナットク&マンゾク。昭和カルチャーがたくさん詰まった江口ワールドの扉を開けたくなりますよ。
江口寿史さんって、どんな人⁉︎
江口さんは1956年3月29日生まれ。熊本県水俣市出身。本名は同じ。奥様は元タレントの水谷麻里さん。
子どものころは〝漫画の神様〟手塚治虫さんの代表作「鉄腕アトム」に夢中になり、ちばてつやさんにもハマって大ファンに。
中学時代に千葉県野田市へ引っ越し。高校卒業後はデザイン専門学校へ。
1977(昭和52)年に「恐るべき子どもたち」がヤングジャンプ賞に入選。「週刊少年ジャンプ」に掲載されプロデビュー。
この年には「8時半の決闘」が赤塚賞に準入選。さらに「すすめ ‼︎ パイレーツ」の連載をスタート。
そして1981年、「ストップ ‼︎ ひばりくん!」が大ヒット。人気作家としての活躍が始まりました。
★大友克洋に影響を受けて
人気漫画家として活躍する中、緻密な描き込みと立体感が人気の作家・大友克洋さんの作風に影響を受けました。
パイレーツの扉絵などをイラスト風に描くなど、イラストレーターとしても覚醒。
ひばりくんが大ヒットした一方で、有名な遅筆ぶりも発揮。ひばりくんなど連載を途中でギブアップすることもしばしば。
アイデアに詰まって「白いワニが来る…」なんて苦しむ自身の姿など、作品の内容と関係のない話でページを埋めたことがあるほど。
「1話完結のショートギャグストーリー」スタイルを確立して名短編を発表しますが、1990年代からはイラストレーターにスイッチ。
人気ミュージシャンのCDジャケットやTシャツ、ファミレスのイメージイラストなど、ポップアートが大人気となっています。
★5作品はアーティストへの進化そのもの
この記事で上記の5作品を紹介する理由は、江口さんがアーティストに進化していく過程がよく分かるから。
パイレーツなどのポップで軽妙な絵柄から、大友さんに影響を受けて取り入れたオシャレでカッコいいイラスト風タッチへ。
2つのスタイルを融合させ、昭和カルチャーを盛り込んだギャグを展開。時代を超えた面白さを持つ、江口ワールドを代表する作品だからです。
ここからは1作品ずつ紹介&解説していきます。
1.「すすめ ‼︎ パイレーツ」
★江口さん初の連載&ヒット作品
1977(昭和52)年〜1980(昭和55)年、「週刊少年ジャンプ」で連載されました。
掲載元の集英社から単行本・文庫本ともに全11巻が刊行。最近では「完全版」が小学館から全4巻、Kindle版は全8巻が発売中。
江口さんにとって初の連載作品。赤塚賞準入選作の野球ギャグ漫画「8時半の決闘」が原点になっています。
★作品のあらすじ
パイレーツは主に千葉出身の選手で編成。本拠地は流山の千葉球場(実在しません)。九十九里氏の浪費癖で年を追うごとに資金不足に陥り、ロクな強化ができず万年最下位。そんな球団に左腕投手・富士一平が入団。常勝チームに変えようと奮投する。でも、球界でも指折りの変態がそろったチームの先輩たちにイジられて…。
「野球漫画」といえば「スポ根」といわれた時代。「パイレーツ」は試合やプレーそっちのけでギャグが全開。
「野球ギャグ漫画」というジャンルを確立した作品でもあるんです。
★はちゃめちゃな登場人物
ストーリーに登場するキャラが、とにかく個性的で立ちまくり! 毎回のように新キャラが登場するのも特徴です。
【富士一平】主人公で入団当時は16歳。千葉県立柏高校(実際にあって江口さんの母校)を中退してパイレーツ入り。
左腕の速球投手。変な名前で笑われちゃう奇病にかかった両親や弟妹のため奮投。熱血漢だけに先輩たちのイジリに苦戦します。
【犬井犬太郎】流山産業大出身のベテラン捕手兼コーチ。プレーそっちのけのおふざけで「球界一の恥さらし」の異名あり。
【猿山さるぞう】流産大出身の投手、三塁手。犬井に匹敵するイタズラ者。目の病気や催眠術の影響で本塁打が打てる打撃力あり。
【粳寅満太郎】外野手。関東屈指のやくざ「粳寅組」の跡取り。強面。常にかけているサングラスを外すとキラキラ目。
主要人物はこんなところ。ほかにも唯一の外国人で、ネイティブアメリカンでモヒカン男のジェロニモ。
俳優・草刈正雄さんにそっくりで新撰組の沖田総司を愛する稲刈真青。
ひがみっぽい性格から「ポイ造」呼ばわりされる監督の日上金造 etc 。
さらに当時の巨人・長嶋茂雄監督、王貞治さんら名選手たち。パイレーツに翻弄されつつもギャグプレーヤーとして活躍します。
「野球漫画」ながら試合やプレーシーンは少しだけ。ストーリーの9割はギャグがしめています。
このギャグが「昭和カルチャー」そのもの。連載当時に大流行した音楽、映画、テレビ番組、漫画、ファッション etc 。
要するに江口さんが大好きで、ハマったモノやキャラを全部ブチ込んでフルスロットルでかき回したイメージ。
稲刈は常に新撰組のダンダラ羽織を着て沖田総司になりきっているけど、当時の人気ドラマ「新選組始末記」の影響。
粳寅満太郎は「ウルトラマンタロウ」。ジェロニモはモヒカンを「ウルトラセブン」のアイスラッガーのように投げて打球を落とす。
名作漫画のパロディーも大展開!犬井は「あしたのジョー」の丹下段平に、九十九里氏は力石徹に変身したり。
ホントにストーリーを読むだけで、一世風靡した昭和カルチャーが分かるんです。
★昭和カルチャーに影響を与えたことも
「パイレーツ」は昭和カルチャーに影響を与えたこともあるんです。最たる例が「ぶりっ子」。流行語になりました。
犬井が一平をイジる時に「まじめぶりっ子」「かわい子ぶりっこするな!」と一喝。これが大ウケしたんです。
フラリと店に入った満次は、メニューのはしから注文した料理を食べ進めていく。店内は騒ぎになり、千葉テレビ(実際にあります)が生中継を開始。大勢の野次馬が見守る中、満次は全品を完食。野次馬たちが感動で大騒ぎする中、満次は静かに立ち去り食い逃げする。
江口さんが自分の好きなことを詰め込んでギャグストーリーにする。当時ではホントに異例。「パイレーツ」恐るべし、です。
2.「ストップ ‼︎ ひばりくん!」
1981(昭和56)年〜1983(昭和58)年まで「週刊少年ジャンプ」で連載。江口さん最大のヒット作です。
コミックスは集英社から新書版全4巻が刊行。現在は小学館からコンプリート・エディション全3巻が発売中です。
テレビアニメ化もされて、1983(昭和58)年5月〜1984(昭和59)年1月までフジテレビ系で放送されました。
江口さんは「パイレーツ」の連載中、大友さんの作風に衝撃を受けました。
名作「AKIRA」に代表されるリアルで、立体感のあるタッチ。この作風に影響され、イラスト手法の勉強を始めたそうです。
まずは扉絵からスタート。当時流行っていたテクノバンド「YMO」のファッションを主要キャラにまとわせたり。
「めちゃカワイイ」と評価が高かった女の子キャラを起用。ストーリー中でもコマぶち抜きで大きく描いてアピールしたり。
イラスト・アートを意識した作風をさらに進めたのが、「ひばりくん」でした。
★作品のあらすじ
好きになった女の子が実は男。なのにカワイすぎて困惑しまくる主人公。
母を亡くし1人きりになった高校生の坂本耕作。母の知人・大空いばりの家にお世話になるため熊本から上京する。でも、お世話になる家はやくざの「関東大空組」。いばりは組長だった。ビビった耕作が逃げ出そうとしたら、めちゃカワイイ女の子と遭遇。ニッコリ笑顔が好きになってしまう。家にはつぐみ、つばめ、すずめの美人姉妹。耕作は舞い上がるが最初に会った美少女が長男・ひばりと知ってビックリ。耕作はひばりと同じ高校へ。ひばりは学校で「女の子」として在籍。わざとなのか道や校内でベタベタ。耕作はドギマギ。家でも朝の寝起きにアタックされたり。耕作はひばりとの愛の妄想を膨らましつつ「彼は男なんだ」とわれにかえって…。
「ひばりくん」は、ひばり&耕作のダブル主人公でストーリーが展開されます。
【大空ひばり】男なのに超カワイイ〝美少女〟。成績はトップ&スポーツ万能。怒るとケンカ最強。学校のアイドル。
バレーボール部などから誘われるけど「しばられたくない」。でも耕作がボクシング部に入ると、後を追ってマネジャーに。
【坂本耕作】優しくて純情な九州男児。焦ると熊本弁が出る。自分を鍛えようとボクシング部に入部する。
ひばりの秘密を守ろうと必死に努力する。「あの子は男なんだ」と自分にいい聞かせながらも「女の子」として意識しちゃう。
【大空いばり】大空組組長だけど3姉妹に甘いお父さん。でも跡取り息子・ひばりの美少女っぷりに発作を起こすことも…。
【大空つぐみ】大空家の長女で美人。イラストレーターとして家で仕事しつつ、母を亡くした妹弟たちの世話をしている。
【大空つばめ】次女でひばり似の美人。ひばりに下着を取られて激怒。身体検査でひばりに変装して身代わりする優しいお姉さん。
【大空すずめ】三女で小学生。おませでカワイイ美少女。
主な登場人物はこんなところ。組若頭・サブ、強面だけど気が弱い耕作の世話役・政二らが絡んでストーリーを賑やかにします。
★ひばりくんがカワイイほどギャグが走り出す
作品の見どころは何といっても、ひばりくんのめっちゃカワイイところ。
男のひばりくんがキレイでカワイイほど、耕作がドキドキしながら頭を抱えて悩乱しまくる。
倒錯の世界にハマり込み、錯乱の一歩手前まで戸惑いまくる姿がめっちゃ面白いギャグとして展開していく。
だから江口さんは、ひばりくんをめっちゃカワイく描き込んだそうです。
「ば・れ・た⁉︎の巻」では、高校の文化祭でロックバンドの友人に頼まれてボーカルを担当。カワイくてカッコいいパンクファッションで登場して、会場は大熱狂。
「はいりません ‼︎ の巻」では呉井寺(クレイジー)会会長の息子ヤックンとお見合い。ことわるため耕作を婚約者として紹介。耕作が呉井寺会から「ひばりから手を引け」と脅されるや、ライダースーツに身を包んで、バイクで相手の家へ。呉井寺へマシンガンを乱射し「耕作に手を出したら、だまっちゃいないよ」とタンカを切ると「かーいかん!」。
また呉井寺はクレイジーキャッツの植木等さん、ヤックンはプロ野球・南海などで活躍した「ドカベン」こと香川伸行さんがモデル。
バイプレーヤーにも昭和のカルチャーを反映させているんです。
ひばりくんが街を歩く姿もたまらない。手には買ったばかりのレコードアルバムが入った「TOWER RECORD」の袋。
黄色地に赤いロゴを抜いた袋は、昭和の音楽好きたちの象徴。ひばりくんの姿は当時の流行そのものでした。
「ひばりくん」の人気は急上昇。アニメ化されてテレビにも進出しました。
でもひばりくんをカワイく描けば描くほど、作品の完成に時間がかかってしまう。
週刊連載に追いつけず原稿を落としたり休載したり。隔週での連載を希望しても、人気作品だけに編集部から受け入れられない。
最後は締め切りに間に合わず、江口さんが逃亡。作品は1983年に打ち切り…。
未完の作品へファンからは「再開してー!」という声が、ずっと続いていました。
そして2009年、加筆・修正された「コンプリート・エディション」が刊行。最終話にも加筆され、作品は完結しています。
ポップなイラスト手法をギャグに落とし込む。しかも週刊連載。めっちゃ大変な作業。「白いワニがやって来る」わけです(苦笑)。
「ひばりくん」の打ち切りで「連載をまかせられない」という評価が流れる中、江口さんは新たなスタイルを確立するんです。
3.「寿五郎ショウ」
1983(昭和58)年〜1984(昭和59)年に月刊誌「フレッシュジャンプ」で連載していた「江口寿史の日の丸劇場」の短編を中心に編集。
1986(昭和61)年に双葉社から「寿五郎ショウ」のタイトルで発売。
1991(平成3)年には「江口寿史の寿五郎ショウ」のタイトルでビデオ化されました。
週刊連載ではペースが追いつけなかったけど、月刊誌に舞台を移したことでプレッシャーや制約から解放。
締め切りを気にせず、自由なハートでアイデアを練って描き込んだギャグが炸裂。
イラストタッチの絵とギャグを融合させる実験的なエピソードが面白くて、江口さんが楽しみながら描いた感じがビンビンに伝わる。
江口さんが1話に全てをつぎ込む「1話完結のショートギャグストーリー」という江口スタイルが確立した作品なんです。
★1話完結だけにギャグがめっちゃ濃い!
週刊連載からドロップアウトして時間的な制約から解放。1話完結のギャグに集中した作品の内容は、めっちゃ濃い!
「パイレーツ」では、江口さんが大好きな流行りモノを1話の中にたくさんギュウギュウに詰め込んだ感じ。
それだけに長くは続かず、息切れしたイメージも感じさせていました。
でも「寿五郎ショウ」では、ハマっていた「流行」を1テーマに絞り、内容を煮詰めてより濃くした感じがします。
小笠原沖に出現した大怪獣コチラが、立ち泳ぎしながら東京に上陸。コチラは放射能をはき、自衛隊の攻撃が効かない。科学防衛隊の一の瀬博士は、放射能が効かない鉛怪獣アチラを目覚めさせコチラと戦わせる。アチラはコチラを撃退するが、起こされた怒りで暴れまくる。まさに「アチラを立てればコチラが立たず」。
山寺のお世話になっている、目が不自由な青年・芳一。ギターでの弾き語りはセミも鳴きやんで聞き入るほど。ある夏の夜。「赤間ケ関フォーク村」の青年が訪れ、芳一にコンサート集会で歌ってほしいと依頼。芳一は喜んで参加し、毎晩「フォーク村」で開催されるコンサートで熱唱。夜な夜な訪れる青年、実は幽霊。10年前に大火事で犠牲者がでた「赤間ケ関」フォークイベントの参加者だった…。
フォークへの熱い思いと復権を目指した? エピソードです。
イラストタッチの絵柄でギャグを描く、江口さんの実験的な作品はめっちゃシュール。
「下品な一家」は下品なアメリカ風家族の娘と上品な一家の息子がお見合いする話。
「ふたりのサンゴ礁」は無人島に漂着した中年男と美少女のストーリー。
フルカラーの冒頭3ページで登場する美少女の姿は、まさに江口さんのイラスト・アートの先駆けでめっちゃキレイです。
★三部作を代表するキャラも誕生
「寿五郎ショウ」は「1話完結のショートギャグ」スタイルを確立した作品。
後述する「江口寿史のなんとかなるでショ!」「江口寿史の爆発ディナーショー」と合わせ「ショー三部作」と評されています。
それだけに続編2作品にも登場するユニークなキャラクターも生まれているんです。
「寿五郎ショウ」の漫画家・寿五郎は江口さんの分身キャラ。リスペクトする手塚さんを模してベレー帽を被っています。
「怪獣王国」の科学防衛隊で活躍した一の瀬博士は続編でも博士役で登場。そして霧島隊長は口ヒゲのダンディ男。
「ハァドボイルド」の主人公で私立探偵の毒島(ぶすじま)牙男と同一人物。
手塚さんが「ランプ」「ヒゲおやじ」ら有名キャラにいろんな役を演じさせた「スター・システム」そのもの。
江口さんは「寿五郎ショウ」で確立したスタイルを、続編でさらに進化させていきます。
4.「江口寿史のなんとかなるでショ!」
1986(昭和61)年〜1988(昭和63)年まで、「月刊ASUKA」で連載されたタイトル作の短編を中心に編集。
1989(昭和64/平成元)年に単行本が発売されています。
1990(平成2)年には実写&アニメによるビデオと、メイキングをまとめた単行本「なんとかなったワケ!」も発売されました。
「寿五郎ショウ」に続く「1話完結のショートギャグ」が詰まった短編集。
江口さんの実験的な手法は、さらに加速。新キャラも登場してポップでシュールな江口ワールドが全開しています。
★各エピソードの扉絵に昭和の香りが漂う
各エピソードの扉絵がめっちゃユニーク。おそらく江口さんのお気に入りだったと思われる〝昭和の顔〟が描かれているんです。
【芸能人】あべ静江さん、天地真理さん、麻丘めぐみさん、リンリン&ランランさん etc 。
【漫画&アニメ】鉄腕アトム、イヤミ、へび女、鉄人28号、8マン、鮎原こずえ etc。
【ドラマ】友里アンヌ(ウルトラ警備隊)、赤影(変身忍者)、車先生(柔道一直線)、ジロー(人造人間キカイダー)etc 。
ワタシのようなオッサン世代には、懐かしすぎる顔があるわ、あるわ。
扉から昭和の香りを漂わせて、江口ワールドに引きずりこむ手法でしょうね。ワタシはまんまとハマりました(笑)。
ちなみに、扉絵の顔とエピソードの内容は全く関係なし。そこも泣かせます。
「なんとかなるでショ!」から登場した新キャラも、めっちゃ強烈です。
まずは「地獄少年・うしみつくん」(表紙の写真)。
夕飯を食べるため、うしみつくんがラーメン店へ。ネギラーメンを注文。カウンター席で美味しそうにラーメンをすすっていると、隣のオッチャンがタバコをプカプカ。「ゴホゴホ」とせき払いしても煙が直撃。うしみつくんの顔には怒りが充満。午前2時、はちまきで頭にろうそくを立て、白装束のうしみつくんが呪いのわら人形を五寸クギでカーン、カーン。
そして、うしみつくんのキャラ。恐怖漫画家・ムロタニ・ツネ象さんの「地獄くん」、つげ義春さんの「ねじ式」。
さらにホラー作家・日野日出志さんの影響で誕生したそうです。藤子不二雄 A さんの「魔太郎がくる ‼︎ 」の雰囲気もあります。
うしみつくんのエピソードは3話シリーズ。いずれも不気味で笑っちゃいます。
双子のオカマ兄弟。いずれも筋肉質で短髪&口ヒゲ。「喫茶トーマス」の経営者。2人でシンクロしながら「わたしたちわオカマです」「口臭がくさいです」なんて懺悔をし続ける。
★シリアス&ホラーもシュールで最高
上記の2シリーズ以外にも、ポップでシュールな世界が展開しています。
毎朝、通学のために乗っている東京メトロの地下鉄・東西線で、いつも同じ窓際に立っている美しい美少女。主人公はひとめぼれしたけど、実は彼女はこの世のものじゃなくて…。
ヒロインの早乙女愛は、ジャミラの格好をしたオッサンが夢の中でつぶやく、死ぬほど笑えるギャグに苦しみ続けて…。
5.「江口寿史の爆発ディナーショー」
★江口ワールドの集大成
「weekly 漫画アクション」で1988(昭和63)年〜1989(昭和64、平成元)年まで連載。
他誌で発表した短編を加えて編集・構成。1991(平成3)年に単行本が発売されました。
「寿五郎ショウ」「なんとかなるでショ!」に続く「ショー三部作」の完結編。
「1話完結のショートギャグ」とイラスト手法がベストマッチ。ワタシ的に江口ワールドの集大成だと思っている作品です。
昭和の怪獣モノ、SF、漫画パロディ、さらにはエロ etc。江口さん従来のギャグタッチに加え、イラストタッチでのギャグが最高!
1992(平成4)年の第38回文藝春秋漫画賞を受賞しています。
★オシャレなイラストタッチで描くエロ
コミックスの冒頭で登場する「恥・ず・か・し・い」はホント、秀逸!
2人はベッドで「ペロペロなめて恥ずかしい」なんて言葉を交わし合い、ひたすら愛し合う行為におぼれていく。
ダンディ中年のプレーに「気持ちよくって恥ずかしい」なんて恥じらう顔がキレイ! エロい!
それでいて、2人の「〇〇で恥ずかしい」というやりとりに大爆笑!
ギャグストーリーにイラスト手法を盛り込むのはむずかしいとされていますが、このエピソードは見事にギャグが成立。
江口さんのギャグの完成形の1つといえるんです。
江口ワールドの集大成は面白すぎる |
★漫画パロディがスゴすぎる
コミックスにはたくさんの漫画パロディが収録されています。中でも「わたせの国のねじ式」は最高傑作!
つげさんの「ねじ式」の主人公「ぼく」が、イラストレーター&漫画家・わたせせいぞうさんの世界に迷い込むんです。
わたせさんといえば「ハートカクテル」。キレイなカラーでアメリカンポップな作風が、昭和の若者たちの憧れでした。
便意をもよおした「ぼく」が「トイレはどこだ…」とわたせワールドの中を彷徨。でもポップな世界にトイレは…。
日本では「スマナンダ」の一言ですべてを水に流してもらおうとする新興宗教が、急速に信者を増やしていた。謎の新興宗教のルーツは、ちばさん作品の人気キャラ・丹下段平の「あの一言だった」。
★三部作のレギュラーキャラも健在
「寿五郎ショウ」「なんとかなるでショ!」で登場した人気キャラも健在です。
一の瀬博士は「地球防衛隊」の科学者として登場。霧島隊長もタイツ式の制服でキメて大活躍。
さらに霧島隊長はダンディ男・毒島と二役を熱演。毒島はダンディに、クールにコンドームを求めて薬局をさまよい歩きます。
おかまのトーマス兄弟も熱演。兄のクリスは大好きな「プッチンプリン」のお風呂の中でエクスタシーに達する姿を披露(キモっ)。
ということで。僕の中の昭和もこれで本当に終わりです。さようなら昭和。ありがとう昭和。
この言葉通り「ディナーショー」は、昭和カルチャーがたっぷり詰まった江口ワールドの集大成なんです。
まとめ・江口さんは再び漫画を描くのか ⁉︎
令和でも江口ワールドを楽しみたい |
ここまで「昭和カルチャー」が楽しめて、オシャレでポップなのにメチャ面白い江口さんのオススメ作品を紹介&解説しました。
- 「すすめ ‼︎ パイレーツ」
- 「ストップ ‼︎ ひばりくん!」
- 「寿五郎ショウ」
- 「江口寿史のなんとかなるでショ!」
- 「江口寿史の爆発ディナーショー」
上記の5作品は昭和カルチャーがたっぷり詰まっていて、時代を超える面白さが詰まったギャグ作品です。だから、
「昭和のギャグ漫画に興味があります。江口さんのオススメの漫画を教えて!」
「昭和50〜昭和60年代に流行したモノが知りたい」
「昭和のギャグでしょ? 令和の時代に読んでも面白いの?」
なんて方にはオススメの作品なんです。ぜひご覧ください。
そして最後に「最近は漫画を描いてないけど、もう描かないの?」という方に、最近の江口さんの漫画への思いを紹介します。
2022年10月29日〜2023年1月15日まで、江口さんの「イラストレーション展 彼女」が開催されました。
会場となった千葉県立美術館で、江口さんは週刊少年ジャンプ時代からの大先輩作家・本宮ひろ志さんと対談。
本宮さん「江口さん、死ぬまでに、もう一回漫画描いてみてよ」江口さん「本心では漫画を描きたいんで」
そんな「本心」を抱いている江口さんが、漫画に復帰する日。ワタシは上記の5作品を読みながら待ちたいと思っています。
当ブログでは、他にも面白い漫画を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
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