「稗田礼二郎シリーズ」異端の考古学者・妖怪ハンターの〝その後〟の活躍が楽しめる傑作3作品

2025年12月11日木曜日

マンガを楽しむ

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妖怪ハンターの〝その後〟を楽しもう

平成初期以降の稗田礼二郎シリーズがバッチリ分かる


不可思議な話が多い日本の神話古代史はファンが多いだけに、漫画でも人気のテーマです。


そのため「神話や古代史の謎がテーマになっている作品を教えて!」なんて声がたくさんあります。


そんな方たちにススメられるのが、諸星大二郎さんの「妖怪ハンター」。主に昭和から平成初期にかけて発表された伝奇漫画です。


主人公の稗田礼二郎異端の考古学者として、神話や古代にまつわる不可解な現象や怪異に遭遇していくストーリーが今も昔も大人気!それだけに、


平成初期以降で稗田礼二郎が活躍する作品を探しています!


「『妖怪ハンターのタイトル以外に稗田が登場する作品ってあるの?


そんな声が多くあるんです。


この記事では平成初期以降で稗田礼二郎が登場する、妖怪ハンターの〝その後〟の活躍が楽しめるエピソードの収録作品として、


  1. 「稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター」
  2. 「闇の鶯」
  3. 「妖怪ハンター 稗田の生徒たち」

上記の傑作3作品を紹介&解説します。


この記事を読めば、3作品が神話や古代史の謎がテーマになっていることが分かります。


さらに稗田礼二郎の平成初期以降の活躍ぶりや、「妖怪ハンターのタイトル以外の登場作品が分かります。


そして実際に作品を手にとってページを開いてみたくなりますよ。


※この記事ではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

改めて、妖怪ハンターと稗田礼二郎について




稗田礼二郎が主役として活躍する「妖怪ハンター」の著者は、諸星(もろほし)大二郎さん。


日本を含めた世界の神話や古代史をテーマにした伝奇作品や、近未来や異世界が舞台のSFモノなど、多くの作品を発表されています。


そして「妖怪ハンター」は、諸星さんにとって初の連載作品です。


1974(昭和49)年の「週刊少年ジャンプ」37号から41号まで連載。子どもだったワタシは、この作品に衝撃を受けました。


以後は1995(平成7)年頃まで「週刊ヤングジャンプ」「ウルトラジャンプ」など青年誌でシリーズ作品が発表されました。


このあたりまでの作品は「妖怪ハンター」(集英社文庫)の「天の巻」「地の巻」「水の巻」として計3巻にまとめられています。


この3巻については当ブログの記事、


妖怪ハンター 日本史が好きになる伝奇マンガの厳選エピソード


こちらでくわしく紹介&解説しています。


そして主人公の稗田礼二郎。元K大の考古学教授。異様な現象や奇怪なモノ(仏像や古文書など)を専門に研究。


そのため、教え子の学生たちやマスコミから「妖怪ハンター」と呼ばれている、異端の考古学者なんです。


風貌はロン毛で黒スーツ姿イケメンなので初登場の1974年頃は、女子学生から「ジュリー沢田研二さん)」とモテていました。


昭和から平成初期までエグくて恐ろしい現象や事件に遭遇してきた稗田ですが、実は〝その後〟もフィールドワークを継続中。


それが「稗田礼二郎シリーズ」として描かれていて、こちらも奇ッ怪でメチャ面白いんです。


そしてこの記事のテーマは、平成初期以降の稗田礼二郎の活躍を描くエピソードを収録した作品を紹介すること。


次項から1作品ずつ紹介&解説していきます。


1.「稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター」


★修験の山中で遭遇した〝モノ〟


稗田のモノ語り はシリーズとして「魔障ヶ岳」など7エピソードが「メフィスト」2003(平成15)年5月増刊号〜2005年5月増刊号で掲載。


この7エピソードを加筆修正した単行本「稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター」が、2005年に刊行されました。


現在、紙の本は絶版のようですが電子書籍版が発売中です(いい時代になりました)。


平成中期での稗田礼二郎は、年を重ねて渋さがマシマシ。相変わらずのロン毛と黒スーツ姿でフィールドワークをこなしています。


作品の舞台は山形の出羽三山や三重・和歌山の熊野に並ぶ修験の山、「御霊山」。


「御霊山」と呼ばれる地は日本中にあって、ストーリーでは所在地が明かされていません。


でも序章魔障ヶ岳」では、かつては修験者が踏み入った険しい山系で、その険しさ故に現在は行者さえ訪れない霊場と設定しています。


この山系の1つ「魔障ヶ岳」に奇妙な古代遺跡があり、その遺物を調査するために稗田が訪れるワケです。


稗田の同行者になったのは、後輩の考古学者・赤井貴信。かつて遺跡にあったとされる遺物が代々家に伝わっているという岩淵翔子


さらに「御霊山」を昔のように霊場に戻すため、調査をかねて峰入りした行者集団の1人、信田昭一

稗田ら4人は、険しすぎる山中で奇怪な〝物の怪〟の妨害を受けつつも、古代の祭祀場と思われる「胎蔵岩」に到着。

「胎蔵岩」には洞穴があり、その前に和服姿の女性が待っていた。稗田が山中への入り口「姥ヶ峠」で道を聞いた女性だった。

動揺する稗田に、女性は「(洞穴に)あなたたちが見たいものがいる」「それに良い名前をつけてほしい」と語りかける。

そして、稗田ら4人は洞穴にひそむ〝モノ〟と遭遇。ここで序章が終わっています。

★〝モノ〟に憑かれた人たちの末路


稗田らが洞穴で出会った〝モノ〟の正体は、1章「魔に会った男」以降、徐々に明かされていきます。


それも稗田の同行者たちの〝その後の末路〟を描きながら、〝モノ〟の正体を明かしていくスタイル。


これが不気味で、そして人間の悲しくて醜いサガが描かれて胸に刺さるんです。


「魔に会った男」は考古学者の赤井が主人公。赤井は幼い頃から邪馬台国の発見を夢見ていました。


「魔障ヶ岳」の後、赤井は考古学者として、奈良・三輪山周辺で邪馬台国と関係する遺物を発見しまくるんです。


注目を浴びる赤井に、マスコミは「捏造じゃないのか?」。かつて考古学会を揺るがした「神の手」騒動の再現だと疑うんです。

赤井は忠告にきた稗田を避け続け、「黒田」と名乗る助手も稗田の邪魔をする。

赤井に会えた稗田は「洞穴の〝モノ〟に名前をつけたのか?」と問いかける。

赤井は「魔」と名付けたと告白。「黒田」にたきつけられるように発掘を続けるが、次第に正気を失っていく…。

2章「神を連れた男」では、修験者の信田が主役です。

信田は修行マニアで、「魔障ヶ岳」後に「神が憑いた」として新興宗教の教祖になります。


空中に浮いたり、何もないところから「天狗の宝器」を出したり。実は〝モノ〟に「」と名付けてから〝験力〟が使えるようになったんです。


でも〝験力〟を誇り増長したことで、哀れな末路をたどることに…。


3章「苧環の男」では岩淵翔子が主役。彼女は〝モノ〟に亡くなった恋人「神上」の名前を付けるんです。


〝モノ〟は「神上」そっくりな姿で、記憶喪失の状態で翔子の前に現れます。


翔子は恋人が戻ってきたと喜ぶけど、「神上」は次第に自分が何者なのか疑問を抱いて姿を消してしまう。


そして「神上」=〝モノの子を宿した翔子は、恋人を探しまくった末に…。


3人は〝モノ〟に名前をつけたことで、哀れな末路をたどっていくんですね。


遥かな三輪山を臨む鳥居

★名前をつけなかった男


哀れな3人と違い、稗田は〝モノ〟に名前をつけませんでした。それは、彼が民俗学にも長けた考古学者だったからです。


実は「御霊山」には「お言わず様」の言い伝えがありました。


「胎蔵岩」の遺物や洞穴にひそむ〝モノ〟を他言するとタタリがある、と。


古代から伝わりタブーとされている事象には、タブーとせざるを得ない理由がある。民俗学にも長じている稗田はそれを理解している。


そして洞穴で目にした得体の知れない〝モノ〟に名前をつけたらトンデモないモノに変貌していくんじゃないのか


新約聖書に「はじめに言葉ありき」という一文があります。世界は神の言葉によって創造されたという教えです。


要するに、モノごとは名前をつけられることで存在することができる


さらに〝モノ〟はつけられた名前の通りに人間に影響を及ぼしていく


稗田はそんな判断から、名前をつけるのを避けたんです。


ストーリーでは民俗学者・折口信夫の考察を紹介しています。

古代の日本では、人智を超えた霊的な存在を「かみ(神)」「おに(鬼)」「たま(御魂)」「もの(物)」として信仰した。

ただ「かみ」「おに」「もの」の間には厳密な区別はなかった。

昔は幽霊も「もの(モノ)」と呼んでいたそうです。正体が分からないだけに〝モノ〟としか言いようがなかったんでしょうね。

でも名前をつけられた瞬間から、〝モノ〟は実体と力を獲得する。「魔」と命名されたら「魔がさす」ようなことをたきつける。


「神」と名付けられたら神の力を与える。ただ人間の欲望に直結している分、〝名付け親〟は欲望が満たされるほどに正気を失い滅んでいく。


実は稗田にも〝モノ〟が洞穴からついてきていたんです。そして〝モノ〟は稗田に「名前をつけろ」と迫ってくる。


稗田は同行者の末路を目にしているから、〝モノ〟の誘いを必死に拒絶する。そして決着をつけるため再び「魔障ヶ岳」へ向かう。


その結末もさることながら、人間の欲望が〝モノ〟を「魔」にも「神」にも変えていくストーリーは、まさに秀逸です。


2.「闇の鶯」



★「京極堂」シリーズのトリビュート作品


闇の鶯」は5つのエピソードを収録した短編集。2009年4月に刊行され、現在は電子書籍版が発売中です。


5つのエピソードは1989年から2007年にかけて、「月刊アフタヌーン」や「コミックバーガー」などに掲載されました。


稗田礼二郎が主人公として登場するのは、「書き損じのある妖怪絵巻」。


2007年に刊行された「妖怪変化 京極トリビュート」に掲載されました。


「妖怪変化 京極トリビュート」は、妖怪や怪異をテーマにした作品を数多く発表されている小説家・京極夏彦さんの特集本。


「闇の鶯」で諸星さんが記した「作品解題」によると、京極さんの小説にリンクするか、小説の登場人物が出てくる作品をオファーされたそう。


諸星さんの原作「生命の木」を実写映画化した「奇談」のパンフレットに、京極さんに寄稿してもらったことで引き受けたそうです。


そのため「書き損じのある妖怪絵巻」では、京極さんの作品に出てくる「百鬼夜行」のような妖怪たちが絵巻の中でたくさん登場。


でも、稗田が目にする妖怪たちは、広く知られている「百鬼夜行」に登場する物の怪たちとはちょっと違っている


この妖怪たちの〝ちょっと違っている〟理由がストーリーのキモで、メチャ不気味なんです。


★出自が分からない妖怪絵巻


ストーリーは稗田が、知人がオークションで入手した妖怪絵巻の鑑定を頼まれたことからスタートします。

その絵巻は由緒や出自が分からず、箱書き(題名など)もない。妖怪たちも見たこともないモノばかり。

さらには絵巻の最後には、途中まで描いたが中断して墨で塗りつぶした「書き損じ」まで載っている。

困った稗田は知り合いの鑑定家に相談。鑑定家は困惑しつつ「これとそっくりのものを以前見たことがある」と明かす。

稗田は鑑定家が「以前見たことがある」という絵巻を所蔵する竹沢家を訪ねます。

竹沢家は築200年の旧家で絵巻は古くから伝わっていた。絵巻は稗田が頼まれた絵巻とそっくりで同じような書き損じもある。

竹沢家の屋敷内を視察した稗田は、絵巻に描かれている背景が竹沢家の屋敷内と似ていることに気づく。

稗田は、絵巻はこの家で起こったことが描かれていると考察する。

家主の竹沢氏は稗田に、7代目に絵師になった息子がいて、9代目が何かを模写したという言い伝えがあると明かします。

稗田は周辺住民に聞き込みを敢行。竹沢家の7代目が残酷な庄屋で、村人や家族、使用人にもむごい仕打ちをしたと聞き出します。


さらに7代目は暴虐がすぎて8代目や家人らに座敷牢へ閉じ込められた、ということも…。調査を受けて稗田が行った考察は、

7代目の息子は、父親の所業を妖怪にたとえて描き残したのではないか?

また、9代目も描き残した絵巻を模写して子孫に伝えようとしたのでは?

そして謎の「書き損じ」についても、稗田は塗りつぶした後に牢獄の格子が見えることに気づきます。

7代目の息子は最後に父親の肖像を描こうとして中断。9代目も同様に描こうとしたが、やはり中断した。


その理由は、7代目が恐ろしかったからじゃないのか?


悪行を重ねた7代目は、絵巻で描かれたような不気味な妖怪に成り果てたのかもしれません。


そして稗田は恐ろしいことに気づきます。

8代目が父親を閉じ込め、さらに9代目が肖像画を描こうとしていた。7代目は閉じ込められて何年たっていたんだ⁉︎

妖怪に変化した7代目は、座敷牢の中で生きながらえていたのか。まさか、今でも…。

その答えに、竹沢家の跡取り息子で、幼い頃から絵巻が気になっていた喜裕が直面するんです…。


絵巻には見たことがない妖怪ばかり描かれていた

★稗田の教え子たちが活躍


「闇の鶯」にはもう1つ、稗田が関係するエピソードが収録されています。


それは時には少女となりて」は、「月刊アフタヌーン」2004年9月号に掲載されたエピソード。


稗田は姿を見せないけど、主人公たちにアドバイスを送る形で登場しています。

海辺の町に住む高校生の大島潮は、自宅に近い海辺を歩いていた際に不思議な少女と出会う。

少女は浜辺にある「蒙古の防塁」と呼ばれる石積みの裏にいて、大島は手を貸して彼女に石積みを越えさせる。

少女は真っ裸。あわてて上着を貸した大島に「ちょっとだけ家にいさせて」と頼み込む。

少女がいついてから大島の部屋にフナムシが出たり、浜辺の砂が散らばったり、部屋中に海水がたまるなど奇妙な現象が続いた。

この現象に気づいたのが、大島の彼女・小島渚

渚は不可思議な現象を、以前から親しくしている稗田に報告。稗田から送られた手紙のアドバイスで怪異を解決していくんです。


実は大島と渚のカップル、「妖怪ハンター」シリーズの準レギュラー的なキャラなんです。


水辺で起きた怪異を集めた「妖怪ハンター 水の巻」に収録されているエピソード「うつぼ舟の女」で、稗田とともに物の怪と遭遇します。


さらに「海より来るもの」「鏡島」「六福神」「帰還」では、稗田のアドバイスを受けて怪異を解決したり。


時には2人で物の怪と対決しているんです。


諸星さんは「大島君と渚ちゃんシリーズ」と分類。稗田は深山や山村のエピソードが多いため、海辺の話を描きたかったそう。


だから海辺に住む大島と渚が、2人で怪異に遭遇するスタイルになったそうです。


大島が怪異に魅入られたり、霊感体質の渚が物の怪に憑かれたりしてトンデモないことになったり。


でも稗田のアドバイスや自分たちの経験を生かして、物の怪に立ち向かっていく。


「妖怪ハンター」のスピンオフであり、まさに「稗田の生徒たち」なんです。


そして次項で紹介する「妖怪ハンター 稗田の生徒たち」も、同じスタイルで描かれたエピソードが展開しているんです。


3.「妖怪ハンター 稗田の生徒たち」



★稗田の教え子たちが大活躍


妖怪ハンター 稗田の生徒たち」は、2009年から2013年にかけて「ウルトラジャンプ」で連載。


同誌に掲載された3エピソードを収録した紙の文庫版が2021年に刊行され、現在も発売中です。


タイトルの通り、3エピソードの主役は「稗田の生徒たち」。「天の巻」「水の巻」で登場した少年少女たちが活躍します。


まずは「美加と境界の神」。「ウルトラジャンプ」2009年8月号に掲載され、天木薫&美加の兄妹が主人公として登場します。


天木兄妹は「天の巻」の「花咲爺論序説」をはじめ「天孫降臨」シリーズや「黄泉からの声」に登場。


2人は飛行機事故で死亡したけど、墜落現場で発現した〝生命の種子〟によって再生。美加は超能力が身について稗田を助けるんです。


「美加と境界の神」の舞台は、山深い地方にある四方口村。美加は村の境界に立つといわれる謎の大藁人形を調べにきました。


その山中で青年の城戸健人と出会います。健人は、嫁ぎ先の四方口村で亡くなった姉を探しにきていました。


健人の姉は半月前に死去。健人は姉の葬儀に参加していました。でも姉から「どこか寂しいところにいる」などのメールが着信。


姉の夫がウソをついてるんじゃないかと疑い、四方口村まできたワケです。

四方口村には不思議な風習があり、葬儀では棺を村外に続く坂に滑り落として放置。村人は遺骨のない墓にお参りする。

その坂の下に向かって、大藁人形が立っている。

藁人形は、いわゆる道祖神みたいなモノ。道祖神は村の境界や道の分岐点に置かれ、村に悪鬼が侵入するのを防いでいる

でも藁人形が顔を向けているのは村への道ではなく、村外に続く坂の下。だから坂の下に何かがある何かがいるという雰囲気が漂います。

「姉は坂の下にいるんじゃないか」と思った健人は美加の制止を振り切って坂下へ。

美加も助けようと坂を下るが、そこには朽ちた棺桶や物の怪が…。

健人は偶然に姉を見つけ坂を上ったが、美加は無数の白い霊体に阻まれ…。

美加に遅れて四方口村に着いた稗田は、健人や村人たちの話を聞いて、この坂があの世とこの世の境黄泉比良坂だと考察します。

村人は故人を坂から落とすことで、あの世に送る。一方、悪鬼や迷った故人が坂から上ってくるのを藁人形が制止する。


そんな不思議なメカニズムが、坂で働いていると考察するんです。


あの世との境に1人残された美加はどうなるのか⁉︎ その先は作品をお読みください。


★夢を売り買いする不思議な村


もう1つのエピソード「夢見村にて ー薫の民俗学レポートー」は、「ウルトラジャンプ」2012年11月号〜2013年3月号で連載。


ストーリーの主役は、兄のです。


薫は大学で民俗学を専攻し、フィールドワークで山深いところにある「夢見村」を訪れました。


夢見村では不思議な習慣や伝説があって、薫は村人たちが見た夢を売り買いしていると聞き、調査にきたワケです。

薫は村の近くにある露天風呂で知り合った、少女の家に泊まることになる。

少女から夢を見たら、内容を人に言ったり売ったりしちゃだめと釘をさされる。

ストーリーでは、夢はまだ起こっていない現実で、古代の人にとっては交換したり売り買いできるものだったと説明しています。

奈良時代の学者・吉備真備が他人の夢を盗んで出世した話(宇治拾遺物語)や、民話の夢を買う話などの実例を紹介しています。


そして薫もうたた寝などから目覚めたとたんに、村人から「夢を売らないか」と迫られる。


村では夢をめぐって殺人が起きたり、薫も村人に「夢をよこせ!」と襲われ、謎の夢盗り男に追いかけられるなど生命の危機に陥ります。


そんな薫の危機を救うのが妹の美加。師匠の稗田とともに夢見村に向かいます。


その間に薫がピンチに陥ったのを不思議な力で察知し、兄を窮地から救うんです。


一方の薫はピンチの中で、村の風習である夢の売り買いの起源秘密に迫っていく。


その謎解きに漂う緊迫感が、たまらなく面白いんです。


もし知人が人魚になってしまったら⁉︎

★人魚になった同級生


最後のエピソード「悪魚の海」は、「ウルトラジャンプ」2010年12月号〜2011年3月号に掲載。


舞台は海辺の町。稗田は出てきませんが、前述した〝教え子〟の大島君と渚ちゃんのカップルが主役です。


ある夜、渚が浜沿いの道を走っていると、海から少女が上がってきて倒れるんです。


渚は少女が中学時代の同級生だった後藤カオリだと気づき、彼女を介抱します。

カオリは中学卒業後、住んでいる村で海女になり、さらに〝ホンアマ〟になるために厳しい修行の日々を送っている。

カオリはあまりの厳しさに村から逃げ出したが、体に異変が起こり「海に入りたい」と渚に頼む。

カオリは海に入ると回復したが、海の中を回遊する物の怪のような巨大魚を目撃すると魅入られるようについていった。

渚は警察に通報しますが、後日にカオリが実家へ戻ったという連絡が入ります。

でも渚はカオリが心配になって、カオリが住む余利村に様子を見にいくことに。

たどり着いた余利集落は、外部から隔離されたような土地にある漁村。村民はヨソモノに冷たい。

カオリの両親は彼女が海女小屋にいると明かすが、「海女小屋に近づくな」と忠告してくる。

浜辺から海女小屋を見ているうちに、渚が何かに憑かれたように意識を失う。

大島は、霊感のある渚が「何かに呼ばれた」と察知し、そのカギを握る海女小屋へ向かいます。

大島は深夜の海を泳いで海女小屋に入る。小屋の中の床は格子状になっていて下は海。格子の下から足を引っ張られ海の中へ。

海中にはたくさんの人魚が泳いでいて大島に襲いかかるが、カオリに助けられる。

「歩けない」というカオリを背負って、大島は小屋を脱出。落ち着いてカオリを見ると、足が魚の尾びれのようになっていて…。

カオリによると、余利の海女はホンアマになると体が変化して深いところまで潜れるようになる。

要するに人魚になる。村人たちは深海の高級魚をとらせるために修行で海女を人魚に変化させて、小屋に閉じ込めているワケです。


そんな哀れな人魚たちが閉じ込められている海女小屋に、物の怪のような巨大魚が近寄ってくる。


村人たちは「悪魚」と呼んでいるけど、悪魚が近づくたびに人魚たちは海中をバシャバシャと激しく泳ぎ回るんです。


いったい、悪魚とは何なのか⁉︎ そしてカオリと、意識を失った渚はどうなってしまうのか?


何とも不可思議なストーリーの続きは、ぜひ作品でお読みください。


まとめ・さらに〝その後〟の稗田の活躍を期待したい


〝その後〟の妖怪ハンターも不可思議なストーリーばかり

ここまで、稗田礼二郎が登場する妖怪ハンターの〝その後〟の活躍が楽しめる作品について紹介してきました。


そして、平成初期以降の稗田が登場するエピソードが収録されている作品として、


  1. 「稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター」
  2. 「闇の鶯」
  3. 「妖怪ハンター 稗田の生徒たち」

上記の3作品について紹介&解説しました。


諸星大二郎さんの「妖怪ハンター」は、主に昭和から平成初期にかけて発表された伝奇漫画です。


主人公の稗田礼二郎が異端の考古学者として、神話や古代にまつわる不可解な現象に遭遇していくストーリーが大人気。


今の若い世代にも熱いファンがいるほどです。だから、


神話や古代史の謎がテーマになっている作品を教えて!


平成初期以降で稗田礼二郎が活躍する作品を探しています!


「『妖怪ハンターのタイトル以外に稗田が登場する作品ってあるの?


なんて方はこの記事を読んで、3作品が神話や古代史の謎がテーマになっていることが理解できたと思います。


さらに稗田の平成初期以降の活躍ぶりや、「妖怪ハンターのタイトル以外の登場作品も分かったと思います。


実はこの記事で紹介した3作品以降でも、稗田が登場する作品があるんです。


例えば、2022年に発売された「夢のあもくん」。稗田はバイプレーヤーとして〝特別出演〟しています。


ただ、稗田が主役のエピソードはほとんど発表されていないんです。


現在も諸星さんは、お化けの総合誌「怪と幽」などに作品を発表されています。


だから、ぜひとも稗田のさらにその後のエピソードを読みたい!


心の奥底から期待しています。お願いします、諸星先生!


当ブログでは、ほかにも面白い諸星さんの作品を紹介しています。ぜひご覧ください。


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