宇宙開発・事業の現状や仕事に必要な技術&知識が学べる
地球を侵略に来た異星人との人類存亡をかけた戦い。未知の星への冒険旅行 etc。多くの作品が発表され、人気となってきました。
そして令和の時代。宇宙はかつての「未知の世界(空間)」からグッと身近になっています。
宇宙ベンチャーが打ち上げるロケットでの地球の周回旅行や、国際宇宙ステーション(ISS)への旅。近い将来に「宇宙ツアー」ができそう。
2026年には人類を月に送り込み月面開発を始めるという「アルテミス計画」も推進中。宇宙は身近な「仕事場」になっていきそうです。
それだけに「宇宙で仕事がしたいなと夢見ています。宇宙飛行士以外にも、どんな仕事があるんですか?」
「宇宙空間や宇宙に関係するところで働いてみたい。宇宙空間での生活や仕事が分かるマンガって、ありませんか?」
そんな熱い声がたくさん上がっているんです。実はあるんですよ、宇宙空間や月で働く人々をリアルに描いたマンガが!
この記事では宇宙での生活や仕事がわかるオススメの「宇宙のお仕事マンガ」をチョイス。
- 「プラネテス」(著者・幸村誠さん)
- 「MOONLIGHT MILE」(著者・太田垣康男さん)
- 「宇宙兄弟」(著者・小山宙哉さん)
以上の3作品について紹介&解説します。
いずれの作品も連載時点での宇宙事業・開発の状況や技術、知識がベース。この視点から宇宙での日常や仕事などがリアルに描かれています。
この記事を読めば「宇宙での生活や仕事がわかるマンガを教えて」という方は参考になること間違いなし。
さらに3作品が読みたくなって、宇宙で働いてみたくなりますよ!
3作品をチョイスした理由は?
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月面は開発の仕事場になる |
2021年12月。大手衣料通販サイト「ZOZO」創業者で実業家の前澤友作さんが、ISSへの往復旅行に成功しました。
ISSでの12日間の滞在中、前澤さんは「宇宙なう。」とツイート。ISS内の生活空間やトイレ事情、クルーの仕事ぶりなどの投稿を連投。
宇宙旅行者視点のツイートで、宇宙がより身近になった感じ。宇宙への関心が高まり、「宇宙で仕事がしたい」と夢を抱く人が増えたようです。
そんな方に向けて、この記事で紹介する3作品をチョイスした理由は、
- 宇宙空間で働く人たちの日常生活や仕事ぶりがリアルに感じられる。
- 月面開発など、近い将来に実現される可能性が高い仕事や作業が登場する。
- 宇宙飛行士など宇宙で働く人たちに求められていることや、具体的な訓練が紹介されている。
上記の3点がとても詳しく、リアルに描かれているからです。
ここからは1作品ずつ紹介&解説していきます。
1.「プラネテス」
著者は幸村誠さん。「モーニング」に1999年から2004年まで不定期で連載されました。
単行本は全4巻(全26話)。アニメ化もされ、2003年10月から2004年4月まで全26話がNHKBSで放送されました。
マンガ版は2002年度の星雲賞コミック部門、アニメ版も2005年度の同メディア部門をW受賞しています。
近い将来に必要とされる「宇宙のお仕事」を先取りして紹介した作品です。
★あらすじ
2070年代は宇宙開発が進み、月面の資源採掘、火星には実験居住施設を設置。木星、土星の有人探査計画も進行。宇宙の商業開発も進み、宇宙ステーションや月面で人類は生活。一方でデブリが軌道上に漂い、宇宙船との衝突事故が多発。デブリを回収する会社でハチマキは船外作業員として勤務。お金をためて自家用宇宙船を買うことが夢。宇宙放射線やデブリとの衝突の危険がある中、ハチマキは船外作業のスキルを身につける。ハチマキはデブリ回収より給料が何倍も高い木星往還船の選抜試験を受験。学科試験はイマイチだが船外作業が評価され選抜試験をパス。木星へ出発する。
★現在でも切実な問題のデブリ
いまから50年後の地球軌道上にはデブリが無数にふわふわ。ハチマキは危険なものを回収する仕事で汗を流しています。
デブリは主に壊れた人工衛星、ロケットの残がい、破片など。
これって未来のハナシ、ではなくて現実の問題。実にリアルなんです。
1950年代に宇宙開発が始まって以来、いまの地球の軌道上には廃棄されたロケットや人工衛星のパーツがたくさん漂っているんです。
2021年5月には中国が人工衛星を運ぶために打ち上げたロケットがインド洋に落下。
大きすぎて大気圏で焼失しなかったため。当初は落下地点がわからず、都市部に落ちたら大惨事だと国際問題になりました。
デブリが地球の軌道上に残るのは、実際にめちゃくちゃヤバイんです。
デブリは秒速8キロの高速で地球の軌道を周回しています。
小さいデブリでも加速がつけば破壊力は十分。ISSや人工衛星に衝突したら、トンデモないことになるんです。
★悲惨なデブリの衝突事故
「プラネテス」では、衝突事故を題材にしたエピソードがあります。
ユーリは妻と乗っていた高高度旅客機がデブリと衝突する事故に遭遇。ユーリは助かったが、妻は宇宙空間に投げ出され行方不明になる。事故後、ユーリはデブリ回収業の仕事につく。目的は宇宙に漂う妻の遺品を探すためだった。回収作業中、ユーリは遺品を発見。大気圏に落下する危険をおかしながら遺品を回収。遺品は妻がお守りにしていたコンパス。フタの裏には「ユーリを守って」と刻まれていた。
★宇宙のお仕事で避けられない「宇宙生活病」
長く宇宙に滞在することが人間の肉体に影響を及ぼすことも描かれています。
宇宙には常に強い放射線が存在。大気のない宇宙空間や月などではダイレクトに致死量を被曝(ひばく)する可能性があること。
無重力空間では、体を支える必要がないため筋力の低下や骨が軟化するなどの低重力障害。
現実に宇宙飛行士は、地上に戻った際には立てなくなるんです。
低重力下の月面基地で生まれ育った子どもは、身長が大人より高くなるが地球の重力では暮らせない。
ストーリーでは「宇宙生活病」として紹介しています。
作品には、これから宇宙で仕事をしたい人にはリアルに参考になるエピソードがたくさん掲載されていますよ。
2.「MOONLIGHT MILE」
著者は太田垣康男さん。2000年から「ビッグコミックスペリオール」で連載。
2007年21号まで第1部。2008年2号から第2部をスタートしました。
ただ太田垣さんが同誌で「機動戦士ガンダム サンダーボルト」の連載を始めたため、2011年10月ごろから休載。
そして、2021年12月から「pixiv」で連載を再開。10年ぶりに戻ってきたストーリーは第3部として、無料で公開されています。
作品はネームの状態で公開されていますが、太田垣さんの肉筆が楽しめて迫力があるんです。
コミックスは計23巻が刊行。2007年にはアニメ版がWOWOWで放送されました。
2026年にも米NASAなどが人類を月面に送り込む「アルテミス計画」に先駆けたストーリーが展開されています。
★あらすじ
主人公は猿渡吾郎と、米国人の〝ロストマン〟ジャック・F・ウッドブリッジ。
吾郎とロストマンはエベレストに登頂後、頂上の上空に浮かぶISSを見つける。2人は次の目標を「宇宙への進出」と決断。月では新しい資源が発見され、世界中が開発競争に突き進んでいた。4年後、吾郎は大手建築会社に就職。あらゆる重機を扱うスペシャリストになる。吾郎は会社の辞令で、次世代エネルギー開発「ネクサス計画」で働く宇宙飛行士となり、建設作業員として宇宙へ。ロストマンは米軍に入隊。卓越した戦闘機の操縦能力を買われNASAに移籍。スペースシャトルなどのパイロットになる。
★ISS内でのトレーニング
2人の活躍の舞台はISSへ。吾郎は宇宙での建設作業員、ロストマンはシャトル操縦士として再会します。
前述したように、ISSは無重力状態。低重力により体がおかしくなってきます。
クルーたちはランニングマシンを使って持久走を行う。ロストマンは2時間の激走で44・23キロを走破。吾郎は万歩計の歩数ではロストマンを上回る数値をはじき出す。
ただ地上で同じことをやっても、2人がたたき出した数字はトンデモない記録ですね。
★宇宙空間での救出作業
カーゴ船「ドネルケバブ号」はISSへの資材運搬の任務につく。成層圏での発射直前に母機がネオナチの爆弾テロに遭遇。母機からの発射は成功したが予定高度に到達できず、シドニーに落下する危機に直面する。機内には出産直前の妻を持つパイロットが救出を待っている。通常なら13時間かかる減圧を4時間で終え、吾郎とロストマンらが救出へ向かう。
1気圧のまま宇宙服を着ると体がふくらんで身動きができない。そのため減圧する必要があり、13時間ほどかかるそうです。
急激に減圧すると体内に溶け込んでいた窒素が気泡となり、血液もふっとうして死んでしまう危険性がある。
前澤さんはISSに入室する際に時間がかかりましたが、気圧を調整するためでした。
ロストマンはシャトルを「ドネルケバブ」に接近させ、吾郎がロボットアームに乗って「ドネルケバブ」へ。吾郎は回転している「ドネルケバブ」を止めるため、シャトルの操縦マニュアル本を船体に当てて静止させる。吾郎は船体の一部を自力で解体。取り外した部分が摩擦で燃え尽き、船体が軽くなることで落下コースを変える狙い。パイロットをエアロックに移動させ2時間で減圧させる。吾郎は本格的に救出作業に入る…。
地上での現場作業で場数を踏んできた吾郎が、真価を発揮するシーンになります。続きは作品をごらんください。
★月面基地、ムーンウォーカー
吾郎は月面で基地の建設にたずさわります。地球ではあらゆる重機のスペシャリストとして活躍。その腕を見込まれ、月開発でも期待されています。
吾郎は宇宙を目指すために重機の腕を磨いた。スキルで宇宙での仕事をゲットしたんです。
建設現場では作業用ロボット「ムーンウォーカー」が登場。月面を縦横無尽に動き回ります。
現実でもNASAは2026年にも人を月面に送り込む「アルテミス計画」を推進中。
日本人宇宙飛行士も2028年、2032年にも1人ずつ月面に降り立つ見通しです。
月面では資源探査を実施。そのための基地を月面に作ることが計画されています。
日本の企業も探査、基地建設で使う作業用ロボットローバーを開発中。
「MOONLIGHT MILE」は時代に先駆けた、ホントにリアルな作品なんですね。
ただストーリーの「ムーンウォーカー」は二足歩行。実際に開発されているロボットはローバータイプ。
「機動戦士ガンダム サンダーボルト」を連載している太田垣さんには、二本足ロボットへの思い入れがあるんでしょうね。
でも「ムーンウォーカー」には開発段階でのテストでトラブルがあって…。
気になるストーリーの続きは作品をごらんください。
3.「宇宙兄弟」
著者は小山宙哉さん。もはや知らない人がいない「宇宙マンガ」です。
小山さんがISSへの出発前の前澤さんに、宇宙服姿の前澤さんの直筆イラストを送った話は有名です。
前澤さんは「宇宙兄弟」のコミックスを持って宇宙へ出発。ISS内でコミックスを読んで号泣。
ご自身のYouTube公式アカウントで、号泣した理由を語っています(後述)。
「宇宙兄弟」は「コミックモーニング」で2008年1号から連載中。
2024年10月22日時点で、コミックスは計44巻が発売されています。
2012年に実写映画とテレビアニメ、2014年には劇場版アニメが制作されました。
宇宙飛行士の訓練生の日常、ISSや月面で活動するクルーの仕事ぶりが描かれている作品です。
★あらすじ
日々人は夢をかなえ宇宙飛行士に。第一次月面長期滞在クルーメンバーとして日本人初の月面歩行者になる期待を受ける。六太は工学博士となり大手自動車設計会社に就職。弟を侮辱した上司に頭突きし退職。転職も失敗が続く。無職になった六太に宇宙航空研究開発機構(JAXA)から宇宙飛行士選抜試験の一次審査通過の通知がとどく。兄弟で宇宙飛行士になる夢をあきらめない日々人が兄の書類を送っていた。六太は弟の思いを知り、宇宙飛行士になろうと決意する。
★JAXAの試験をリアルに紹介
試験の施設は外部との連絡ができない閉鎖空間。各組5人で2週間すごす、という内容。JAXAから個別に「時計を壊す」「トイレを詰まらせる」「突然さけぶ」など指示書が出され、即実行しなければならない。六太らはたがいに疑心暗鬼におちいるが、組全員で乗り切る。
危機的、不可解な状況に遭遇したクルーたちの反応や対処法を観察する目的なんです。
ISSなど閉鎖空間ではストレスがたまり、ささいなことでさえハラが立つことがある。
そんな状況を、クルー同士で信頼を取り戻して乗り越えられるか。宇宙飛行士にとって大切なことなんです。
宇宙で生活、活動するには知力、体力に加えメンタルのタフさ、協調性も必要とわかるリアルなエピソードです。
★ISSの実験棟が持つ可能性
ISSでは宇宙飛行士のほか、自然科学系の分野でのエキスパートたちが実験棟で研究中です。
せりかは子どものころ、父を難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)のため亡くした。医師になったのは、父を苦しめた難病を治したいという決意から。宇宙の無重力空間では、難病が発生するメカニズムの解明や新薬を発見する可能性がある。
だから、せりかは宇宙飛行士になり、ISSへの搭乗を熱望するんです。
前澤さんはYouTubeで、このエピソードを語りながら涙を流していました。
せりかが熱望していたISS内に立ったことで、感極まったんでしょうね。
★起こりうる月面での事故
2026年、日々人は月面に到達。日本人初の「ムーンウォーカー」になります。
仲間と乗っていた探査車が峡谷に落下。仲間は重傷を負い、酸素ボンベも壊れる。峡谷から脱出しようと仲間をかついではい上がるが、何度もすべり落ちてしまう。絶望的な状況でもあきらめず、酸欠寸前まで壊れた機械を修理する。六太は月面にリモート誘導で移動ができる酸素生成装置があるとJAXAに進言。NASA側が装置を事故現場へ移動し日々人を救う。
2025年にも月面探査に向かう宇宙飛行士たちに起こりうる、リアルなストーリーです。
★より遠くの宇宙を見つめるための月面天文台計画
六太と日々人が宇宙を目指すきっかけになったのは、天文学者のシャロン。
シャロンは天文学者として天体観測用の望遠鏡を月面に立てる計画を立案。でも難病にかかり実現が困難になっている。六太はシャロンに約束する。「俺が月に行って建てるよ、シャロン望遠鏡」
さらに「シャロン望遠鏡」、JAXAでも将来的な計画案の一つなんです。
月面は地球とは違って大気がない。視界を邪魔するものがないので広範囲にわたって観測ができる。
地震や台風などの災害の恐れもない。電波環境も安定しているので観測に向いているんです。
現実の宇宙開発でもリアルに注目と期待を集めているんですね。
ストーリーでは「シャロン望遠鏡」の建設が今後の展開のキモになります。
気になる続きは、ぜひ作品をごらんください。
まとめ・宇宙飛行士になるためのハードルが下がっている
JAXAの募集要項が緩和されました |
ここまで宇宙での生活や仕事がわかるオススメの「宇宙のお仕事マンガ」について紹介&解説してきました。
- 「プラネテス」(著者・幸村誠さん)
- 「MOONLIGHT MILE」(著者・太田垣康男さん)
- 「宇宙兄弟」(著者・小山宙哉さん)
上記の3作品は連載時点での宇宙事業・開発の状況や技術、知識がベース。宇宙での日常や仕事などがリアルに描かれ、とても分かりやすい。
「宇宙で仕事がしたいなと夢見ています。宇宙飛行士以外にも、どんな仕事があるんですか?」
「宇宙空間や宇宙に関係するところで働いてみたい。宇宙空間での生活や仕事が分かるマンガって、ありませんか?」
そう熱望する人には、ピッタリな作品です。この記事の内容を踏まえて作品を読めば、すごく参考になるはずです。
宇宙で働くことを希望する人に向けて、宇宙への門戸は広くなりつつあります。
JAXAは2021年12月に宇宙飛行士の候補者を募集を13年ぶりに再開。資格要項を緩和しています。
「自然科学系の4年制大学卒業」だった学歴要件を外し、面接や大学の一般教養レベルのテストを実施すると発表。
「理系の大卒」というシバリを外し、〝広き門〟にしたんですね。
現役の女性飛行士がいないため、女性の応募をうながすとしています。
3年以上の社会人相当の実務経験が必要。身長149・5センチ〜190・5センチという制限もあります。
でもハードルはかなり下がり、多くの人が宇宙を目指すことができる状況になっています。
「宇宙で仕事がしたい」人は、3作品がリアルな宇宙での仕事が分かって楽しめる参考書になるはずです。
当ブログでは、ほかにもSFマンガ・小説について紹介しています。ぜひ、ごらんください。
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