「独創的な世界観があって、バトル要素もあるマンガを教えてください」
「いままで読んだことがないようなストーリーで、おすすめのマンガありますか?」
マンガファンの方から、よく聞こえてくる質問です。
いろんなおもしろい作品の名前が上がる中、登場する回数が多い作品があります。
SFサバイバルファンタジー「人形の国」。
白く深い雪と氷で覆われた極寒の星。そこでは人類は人狩りをする自動機械の脅威と、人間が機械の体になる謎の伝染病と闘っている。
さらっと作品を紹介しただけでも「独創的な世界観だな」と思っちゃうほど。
原作は、アニメ化もされた人気SFマンガ「シドニアの騎士」を代表作に持つ、弐瓶勉さん。
この人の名前を聞いただけで「おもしろそう!」「読んでみたい!」と期待値が急上昇!
また「人形の国」には「シドニアの騎士」の続編的な要素が盛り込まれていて、世界観も延長線上にある感じ。
その世界観の設定が、ホントにうまくておもしろいんです。
一方で、先ほどのおすすめの声には「ハマれば、おもしろいですよ」という一文がつきます。
理由は「ストーリーの中に、世界観の説明がほとんどない」から。
なので「世界観が分かりにくい」「おもしろいと思いますか?」なんて声も多いんです。
実はこれ、「シドニアの騎士」を含めて弐瓶さんの作風。
作品のページを開いた読者は、ストーリーを追う中で世界観や状況の設定が分かってくる。
でも、多少でも作品の予備知識があった方が、もっと作品が楽しめるはず。
そこで、この記事では作品を楽しむための「人形の国の基礎知識」を解説。
- ストーリーの世界観とあらすじ
- 主人公などの登場人物
- ストーリーに出てくる基礎用語
- 「シドニアの騎士」との類似点
上記の4点について、くわしく説明します。
すでに作品を読んでいるファンの人は「なるほど、こういうことか!」と納得。
弐瓶ワールドが初めての方は、すんなり作品の世界に入れます。そして、よりいっそう作品を楽しむことができますよ!
どんな作品なの?

原作は、弐瓶勉さん。「月刊少年シリウス」で2017年4月号から2021年10月号まで連載。
青年誌での活躍が多い弐瓶さん初の、少年誌での連載作品です。
単行本は全9巻(2021年12月時点)刊行されています。
また、2016年に第47回星雲賞コミック部門を受賞した「シドニアの騎士」に続くSF作品となっています。
「シドニアの騎士」は謎の生命体・奇居子(ガウナ)に破壊された地球を離れ、生活空間が造られた巨大宇宙船「シドニア」で宇宙を流浪。
宇宙空間を旅しながら追ってくるガウナ闘う物語でした。
一方「人形の国」の舞台は、ある極寒の星。人類は自動機械と謎の伝染病の脅威にさらされている、という設定です。
世界観はメチャむずかしい。説明されても、一回では分からない。
でも、ページでストーリーを追いながら読んでいると、なんとなく分かってくる。
弐瓶ワールドのファンの多くは、こんな入り方じゃないでしょうか。
でも弐瓶作品が初めての人は、ちょっとした予備ガイドが欲しいところ。
基礎知識があれば、迷いなく作品に入れて、楽しむことができます。
1.ストーリーの世界観とあらすじ
ストーリーの舞台は、極寒の人工天体「アポシムズ」。
地表、遺跡層、地中奥の中央制御層(地底空間)で構成されています。
「アポシムズ」は深い雪と氷に覆われ、人間は酸素ボンベつきマスクと防寒服なしでは生きられない世界。
なぜ、人類がこの天体にいるのか。ストーリーでは明かされていません。
「アポシムズ」には超構造体と呼ばれる物質の殻で覆われた「地底空間」がある。はるか昔に「地底」との戦いに敗れた人類は極寒の地表に取り残された。地表では「自動機械」が徘徊し、人間を見つけるや抹殺する。一方で、人間の体が機械になってしまう原因不明の「人形病」もまん延している。主人公エスローは地底からの使者タイターニアと出会い、「正規人形」に転生。エスローは故郷を滅ぼし地表を侵略する「リベドア帝国」と戦う旅に出発する。
ちょっと難解
作品の世界観とあらすじは、ざっとこんな感じになります。
すでに作品を読んだ方は、ああ、こんな世界観だったのか」と納得できると思います。
まだページを開いていない人には、ちょっと難解。
「自動機械」「人形病」と聞いて、「なんじゃそりゃ⁉︎」って感じでしょう。
ここからは登場人物について、くわしく説明します。
お読みになればストーリーの理解度が、さらに深まりますよ。
2.主人公などの登場人物

まずは、ストーリーの主人公から。

★エスロー
射撃の名手。「白菱の梁」に住み、子供たちの教育係を務めている。ある日、「リベドア兵」に追われる自動機械「タイターニア」と出会う。追われるタイターニアを救うため、リベドア兵を狙撃する。タイターニアから赤い「コード」と超構造体を破壊できる7つの弾丸「AMB」を託される。「白菱の梁」はリベドアに報復され、仲間がほぼ全滅。自身も致命傷を負う。救命を申し出たタイターニアに「正規人形」に転生される。一命を取り止め、敵の正規人形と闘う。リベドアの襲撃後、タイターニアからリベドアの皇帝スオウニチコに、ともに闘ってほしいと懇願される。
エスローは廃墟と化した「白菱の梁」へ戻り、亡くなった仲間を埋葬した後、リベドアと闘うことを決意。
助力を求めてきたタイターニアとともに、闘いの旅へ出ます。
★タイターニア
地底空間の使者として地上にやってきた「自動機械」。普段はトカゲのような小さな機械だが、本来は長い髪の美少女の姿をしている。地底への侵略を狙うリベドア帝国を阻止するため、何百年も活動している。リベドアからAMBを奪い、逃走していた。さわった相手の心を読む力がある。
戦闘時は人の視覚に入って状況や情報を提供することができる。
★リベドア帝国と皇帝スオウニチコ
リベドアは人口10億人を誇る大帝国。強力な「正規人形」たちで編成された軍団を保有。軍団は近隣諸国を侵攻。その残虐さが恐れられている。皇帝スオウニチコは帝国を支配。転生者で、未来の予知能力がある。地底世界への侵攻を狙っているが、侵攻に必要だったAMBをタイターニアに奪われる。そのAMBを発射できるエスローに脅威を感じ、軍団に抹殺を命じる。
★真地底教会とカジワン
転生者となったカジワンが創設した地底世界を信仰する教団。歴代カジワンは信仰者の国「イルフ・ニク」を王として統治。リベドアの侵攻に苦しむ。現在の王はカジワン27世。転生に失敗し人形病も患い、機械で体を支えている。カジワン27世は人形病患者を正規人形に再生。人形病汚染攻撃とともにリベドアに反撃。
ストーリーでは、ほかにも魅力的なキャラクターがたくさん登場します。
ただ、ここまで説明した4人(+2国)の基礎知識があれば、作品にすんなり入ることができますよ。
3.ストーリーに出てくる基礎用語

ストーリーで出てくる用語も複雑で難解です。まずは、人間狩りをする自動機械について解説します。
★自動機械
アポシムズに生きる機械でできた野生生物。形態は巨大で四本足のモノが多い。陸上を徘徊し人を狩る。なぜ存在するのか、その理由は不明。
そして、人間を正規人形に転生できるコード。エスローも転生する際にタイターニアから託されました。
★コード
人間を正規人形にできる円筒状の機械。古代の地表に住んだ人たちが、地底世界の技術を使って作り上げた。コードを使って正規人形になることを転換、転生などと呼んでいる。
次はいろいろ出てくる「人形」について。
★正規人形
リベドア帝国では転生者とも呼ばれる。ふだんは普通の人間と変わらない姿をしているが、極寒の世界でも耐寒装備などは不要。実は肉体に胞衣(エナ)をまとった身体の構造になっている。戦闘時にはエナを鎧化。鎧を装着した形態になることができ、特殊能力を発揮する。
★エナ
正規人形がヘイグス粒子を使って生み出し、どんなものにも変化できる物質。
★ヘイグス粒子
正規人形など、すべての機械や装置の動力源となっている素粒子。
「アポシムズ」の人たちが苦しんでいる奇病「人形病」について。
★人形病
人間の体が徐々に機械へ変わって人形化する病気。コード開発の過程で生じたとされる。病状が最後まで進行すると自我を失う。患者は迫害の対象にされることが多く、隔離所に閉じ込める町もある。
「アポシムズ」を形づくる超構造体についても説明しておきます。
★超構造体とAMB
地表の人類ではつくれない古代の遺物。超硬度でAMB以外では破壊できない物質。AMBも遺物の1つ。中央制御層に侵入するため、スオウニチコはAMBを必要にしていた。
ここまでストーリーに入るための基礎用語を説明しました。
これらを押さえておけば、作品の理解度はグンと上がり、よりいっそう楽しめるはずです。
4.「シドニアの騎士」との類似点

エスローたちが住んでいる人工天体「アポシムズ」。この天体に存在する正規人形や機械などの動力源である「ヘイグス粒子」。
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さらに「ヘイグス粒子」から生み出され、正規人形たちが身にまとう「エナ」。
この3つの要素。実は「シドニアの騎士」でも登場し重要な要素になっているんです。
★アポシムズ
「シドニアの騎士」では、「ガウナ」に襲撃された人類は播種(はしゅ)船と呼ばれる小惑星サイズの巨大宇宙船で地球を脱出しました。
播種船は生き残った人類をのせた「ノアの方舟」、移民船。船内では空気、食料、生活物資が自給自足できるシステムを搭載。播種船は複数あり「シドニア」はそのうちの1つ。各船は互いに連絡をとりながら宇宙を流浪していた。「シドニア」と最も近い位置で宇宙空間を航行していたのが「アポシムズ」。ある日をさかいに連絡が途絶え消息不明になった。
消息不明となった「アポシムズ」は「ガウナ」を振り切り、追跡の手が及ばない空域を発見。
人工天体「アポシムズ」として、人類にとっての〝第2の地球〟となった。「地底空間」は「アポシムズ」の内部でシステムが残った空間。
両作品を読んでいると、そんな想像が働いてしまいます。
★ヘイグス粒子とエナ
「シドニアの騎士」での「ヘイグス粒子」は、宇宙空間に無尽蔵に存在する粒子と設定されています。
やはり播種船や対ガウナ用の人型戦闘機「衛人(もりと)」の動力エネルギーとして使用されていました。
一方の「エナ」はガウナの本体をおおっている物質です。ガウナはヘイグス粒子を使ってエナを作り出しているんです。
ガウナはエナを使って、衛人型のガウナや捕食したパイロット・星白閑(ほしじろ・しずか)とそっくりな「紅天蛾(ベニスズメ)」を創造。シドニア側でも戦闘後にエナを回収し分析。ガウナを倒せる唯一の物質「カビ」を人工的に製造することに成功。
推測ですが「アポシムズ」はシドニアから離れた後、はるか彼方の宇宙空間で人工天体として存続。
そして、エナの性質を研究。人工天体でも正規人形などに転用している。そう想像してしまいます。
「人形の国」は「シドニアの騎士」の続編的な要素を楽しめるんです。
まとめ・読めばハマる弐瓶ワールド
ザックリ過ぎる感もありますが、ここまで作品を楽しむための基礎知識を説明してきました。
でもページを開けば、むずかしい前置きは不要。ストーリーにどんどん引き込まれます。
作品中には物語の世界観を理解するための知識が紹介されていて、気が付けば頭に入っているんです。
ほとんどのSF作品はそういう作り方ですが、「人形の国」もストーリーの進め方が巧み。
さらに基礎知識があれば、鬼に金棒です。
白い世界の表現が抜群
また、極寒の状況を描くためと思われますが、ベタは少なく、影は薄いスクリーントーンで表現されています。
その効果は抜群。白くて寒々とした風景が広がる世界に、もう何十年もいるようにドップリはまり込んでしまいます。
そして、敵と闘うための「正規人形」への変身。攻撃を食らって体がバラバラになりながらも復活するシーン。
ワクワクさせてくれる要素があふれています。これが弐瓶ワールドです。
ここまで説明してきた基礎知識を踏まえて、ぜひ作品をお読みください。
「独創的な世界観とバトル要素」を期待している方は、絶対に作品にハマります。
「世界観が分かりにくい」という人は、理解度がグンと上がって作品が楽しめますよ。
当ブログでは、ほかにもSFマンガについて紹介しています。よろしければ、ごらんください。
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