富江、うずまき…希代のホラー作家「伊藤潤二」の世界の魅力を2倍にして楽しむ方法

2021年6月27日日曜日

マンガを楽しむ

t f B! P L
不思議で不気味な伊藤ワールドを楽しもう

読むのが初めての人でも伊藤ワールドが楽しめる


日本を代表するホラーマンガ家の名前を3人あげよ。私はそう問われたら、

恐怖新聞」などの代表作を持つつのだじろうさん、「漂流教室」などが有名な楳図かずおさん。

そして、これから紹介する伊藤潤二さんの名前を上げます。

この記事をごらんになっているのは伊藤さんのファン方。

また「読んだことはないけど、どんな作品なのか興味がある」という人が多いはず。

伊藤さんの作品は、つのださん、楳図さんに負けず劣らず個性的。生理的に怖くて、チャーミングで、そしておかしい。

日本のホラーマンガ界の歴史や技術、ペーソスの集大成ともいえる作風が、ファンを魅了し続けています。 この記事では「伊藤潤二ワールド」の基礎知識と魅力を紹介します。

さらに、伊藤さんの作品の集大成といえる猫エッセイを併読することで数多いホラー作品の魅力を楽しむ方法も解説します。

伊藤ワールド」ファンや「どんな感じなんだろう?」「読んでみたい」という人も、読めば多くの作品の魅力が2倍になって楽しめますよ。

伊藤潤二さんという作家について


日本のホラーマンガ界で、「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる水木しげるさんが第1世代の作家。

そう仮定すれば、つのださんと楳図さん、「エコエコアザラク」の古賀新一さんが第2世代。

妖怪ハンター」の諸星大二郎さん、「地獄の子守歌」などで知られる日野日出志さんが第3世代としたら、伊藤さんは第4世代です。

伊藤さんは1963年7月31日生まれで57歳(2021年6月時点)。岐阜県出身。

保育園に通っていた5歳の頃から、楳図さんや古賀さんのマンガにハマり、ホラーものを描いていたそうです。

歯科技工士専門学校を卒業後、歯科技工士として働きつつ、ホラー雑誌「ハロウィン」に投稿。

1986年、投稿作品「富江」が第1回楳図かずお賞の佳作に入選し、プロデビューを果たしました。

2021年7月には、米国で最も権威あるマンガ賞「第33回アイズナー賞」で2冠をゲット。

最優秀アジア作品賞、日本人では初の最優秀ライター/アーティスト賞を受賞しました。

1.主な代表作は?


富江」シリーズ


何といっても、投稿作品がデビュー作となった「富江」。

1987年の「月刊ハロウィン」2月号に読み切りで掲載。

大好評を博して全20話が描かれ、「伊藤潤二傑作集」などの単行本に収録されています。

amazonのkindle版「伊藤潤二コレクション」では、1話ごとに購入が可能です。


また、1998年に映画化。以降、合計8作品が作られ、こちらも人気シリーズに。1999年にはテレビドラマも放送されました。

主人公は、黒く長い髪に左の目の下に泣きぼくろがある美少女、川上富江

性格は傲慢だが男たちはその魔性のような魅力のトリコになってしまう。

だが、男たちは富江を自分だけのものにするため、また彼女に挑発されることで殺意を抱き、殺害する。

だが富江は死なず、何度でも蘇る。体をバラバラにしても、その断片から再生。

魔性の美貌と傲慢な性格の富江が増殖し、再び男たちを魅了していく。あたかも、恐怖が増殖するように…。

「うずまき」



こちらは1998年から1999年まで週刊ビッグコミックスピリッツで、不定期ながら掲載されました。

単行本も全3冊が刊行され、ワイド版、新装版が出されています。また、2000年に映画化。

2022年10月には米国でアニメが放送される予定です。

その紹介映像は、YouTubeに「Uzumaki Update & Teaser」のタイトルで投稿され視聴が可能です。



ほんの一部の映像ですが、メチャ秀逸。作品の世界観が忠実に再現されています。ぜひ視聴してください。

作品のあらすじです。

物語の舞台・黒渦町では、草や空の雲が渦を巻くなどの奇怪な現象や、うずまきにまつわる惨劇が多発する。

町内に住む女子高生・五島桐絵や恋人の斎藤秀一の周りでも、肉親がねじれてうずまき状になったり、カタツムリに変身したり…。

さらには町自体がうずまきのように建物が並ぶなど変貌をとげていく。桐絵たちは、そんな不吉な町から脱出を試みるが…。

このほかにも、人に笑いながら危害を与える不気味な少年を描いた「楽しい夏休み」などの双一シリーズ

奇怪な奇形魚に人々が脅かされるパニック・ホラー「ギョ」、作家・太宰治の代表作を独自の解釈で描いた「人間失格」など秀作がたくさん。

伊藤さんの作品の特徴は、何といっても非常に丁寧で細かく描写する画風から漂う禍々しさと、そこに隠し味のように加えるコミカルさ

これが実にミスマッチして、その絵がいっそう不気味に感じてくるんです。

ここからは具体的な特徴を解説していきます。

2.禍々しさがあふれる作風とその特徴

女の子がメチャ美しい


伊藤作品のすごいところは、伊藤さんが描く女の子がメチャ美人でカワイイこと。


デビュー作の主人公・富江は、長い黒髪に妖艶な目つきで男を操りますが、これがまた、すごい美女。

うずまき」のヒロイン・桐絵は優しげな笑みをたたえた品のいい美少女。奇怪な現象に怯えて逃げる時の表情も、美しくてカワイイ。

この美少女たちが、事件が進展するにつれて不気味さが増してくる、そのギャップがすごい。

富江は殺されて体をバラバラにされるような、惨殺死体と化しますが、翌日は何もなかったような表情で通学路を歩いている。

桐絵は美しい顔はそのままに、最後は手足が伸びて秀一と絡み合い、町全体を覆い尽くすうずまきの一部と化していく。

禍々しい雰囲気の中に目立つ少女たちの美しさが、まさにミスマッチで怖いんです。

舞台は日常、生活する町の中


奇怪な現象が起きるのは、登場人物たちが普段住んでいる町。

タイムスリップや異次元へ転送されることはなく、いつも歩いている道や学校などで怪奇現象が発生します。

富江は通学路や家の近所で、男に無残に殺される。桐絵も家の近所の池や学校で、うずまきになった草やカタツムリに変貌した友人に遭遇します。

つまり、非日常的な恐怖は、読者のすぐそばに存在する恐怖は物語や絵空事ではなく、みんなの身近にあるんだ、と。

心霊スポットなんかに行く必要はなく、自分の周りにある暗闇に、よく目を凝らしてごらん、と。

伊藤さんの舞台設定は、作品を読む読者が、ページから顔を上げて思わず周りを見渡してしまうような、恐怖効果を生んでいます。

人間がこんな形になったら…

細かすぎる描写が怖い


うずまき」の第3話「傷跡」を例にあげます。

桐絵の高校のクラスメート、黒谷あざみが登場します。彼女のひたいには、小さい頃に負った傷跡がある。

町を覆う禍々しい空気の影響のためか、傷は次第にうずまきの形になり、さらにドリルで開けたようなうずまき状の穴が出現する。

その穴は右半分まで広がり、行き場のない目玉はゴロリとうずまきの奥へ消えていく。

そしてうずまきは顔の大部分に拡大。その穴は人を吸い込むと、あざみの体自体も飲み込み、消滅させてしまう。

伊藤さんは、ひたいに広がるうずまきを詳細な線を集めて描き、その奥に無限の闇が広がるイメージと不気味さを表現しています。

第16話「混沌」でも同様。桐絵の弟・満男の背中にカタツムリの殻のような、うずまき状のこぶができます。

そのこぶに詳細な線を施すことで、この子はカタツムリに変貌していくんだという不気味さを漂わせています。

白目は狂気をイメージさせて怖い…

狂気に取り込まれた人に現れる白目


伊藤さんの表現方法で、最も特徴的なのが、その人が狂気に取りつかれたことを示すの描き方です。

富江は怪しげな流し目で男を魅了しますが、恐ろしい本性を現すに従って、目玉には血管が走り、瞳孔は点になり、やがて白目に変じます

狂気に陥った人の目も、この過程をたどります。

完全に正気を失った人は白目をむき出して桐絵や秀一たちを追いかけてくる。その不気味さは読者にトラウマを与えるほどのインパクトがあります。

3.伊藤ワールドの魅力を2倍にして楽しむ方法

ここまで解説した作品の特徴だけでも、伊藤ワールドは十分楽しめますが、ここで私がおススメする作品を読めば、その魅力は2倍増になるはずです。

それが「伊藤潤二の猫日記 よん&むーです。


伊藤潤二の猫日記 よん&むー


伊藤さんの作品群の中で数少ない、人が死なない「お笑い猫マンガ」。

2008年から2009年にかけて「マガジンℤ」で掲載された作品と書き下ろし作品が単行本(1巻のみ)に収録されています。

犬派の伊藤さんの家に、当時は婚約者だった奥様とともにやって来た外国種のむーと、呪い顔のよん

なかなかなついてくれない2匹と伊藤さんの激闘と、やがて心を通わせるまでの日々をつづったマンガエッセイであります。

なぜ、この作品を押すのか。伊藤さんが駆使するホラーマンガの表現技術を、ホンワカしたお笑いエッセンス主体の作品で実践したらどうなるのか

まさに実験的作品でありながら、伊藤ワールドの集大成といえるほどの面白い一冊になっているからです。

伊藤さんのホラー作品には、双一シリーズのように怖さだけじゃない。

不気味な少年の行動や表情に、隠し味のようにお笑いのリズムが加えられてユーモラスに仕上がっているモノがあります。

さらに、よん&むーは、隠し味どころじゃなく、全面的にお笑いのリズムが流れる世界を、ホラーの手法で表現している。

だから、よん伊藤さん曰く呪い顔。実にコワカワイイ顔に描かれています。

猫の呪い顔はこんなイメージ?

狂気の象徴・白目も駆使


伊藤ワールドで狂気の象徴だった白目も使われています。

作品中では、猫たちがきた当時は伊藤さんの婚約者でいまの奥様、イラストレーターの石黒亜矢子さんが登場します。

猫派の奥様(A子)は、当然ながら猫の扱いがうまく、猫がなついてくれない伊藤さん(J君)にとってはライバルの象徴。

A子の猫じゃらしを超スピードで駆使して猫たちと遊ぶ姿は、まるで魔法使いのよう。

J君の目には狂気の人と映ったのか、A子の目は白目に描かれている。

J君は夜のベッドで猫と一緒に寝ようとするが、猫はA子のベッドへ。

白目をむいて悔しがるJ君に対して、A子は点になった眼球を向けて勝ち誇る。

ホラー作品で駆使した目の表現方法で描くご夫婦の姿は、狂気と恐怖とおかしさが混然一体となっており、思わず噴き出してしまいます。

まとめ・読めば伊藤ワールドの魅力がさらに広がる

前述の代表作しか読んでいなかった頃の私は、伊藤ワールド=禍々しい怖さと面白さ、と思っていました。

つまり基礎知識だけ。でも「よん&むー」を読んでから、その見方がガラリと変わりました。

ホラーの表現方法で、こんな面白いことができるのか」と。

この記事を読んでいただいたことで、伊藤さんの作品に興味をもたれた方は、ぜひとも、この猫マンガも併せて読まれることをおススメします。

ホント、おもしろ怖いですよ。

当ブログでは、ほかにも怪奇・ホラー作品を解説しています。興味がある方は、ごらんになってみてください。






ここまで紹介した作品を「すぐに読みたい」という方は、スマホなどにダウンロードしてすぐ読める電子書籍版がオススメ。

「ebookjapan」「コミックシーモア」などのマンガストアなら無料で試し読みもできますよ。

全巻無料で試し読みできる「ebookjapan」




このブログを検索

Translate

privacy-policy

お問い合わせ

名前

メール *

メッセージ *

QooQ